今月の糖尿病ニュース

2025年7月の糖尿病ニュース

AI、デジタル医療:85回ADA学術会議より

おおはしクリニック  6月に開催された米国糖尿病学会(ADA)、今年はオンデマンドからの情報収集でCGM(持続血糖モニター)等利用プラットフォーム、 AID(自動インスリン注入)療法などAI、デジタル医療関連の話題が多く診療にどう還元するか考えてみました。
当クリニックではリブレ2、DexcomG7によるCGMデータをクラウド経由で情報共有、シンクヘルス、リブレリンク、eSMBGとスマートインスリ ンペンによる注射確認・タイミング指導をしています。糖尿病以外では高血圧(CureApp)診療にアプリを始めました。

 JDSでは身近な話題として生活習慣病の療養計画書作成機能(ファイルメーカー、Kakaris、メディセーフデータシェア)報告が ありました。療養計画書により一人あたりの診療時間が1分半近く長くなる問題点はあるものの一定の効果があったという演題もあ りました。
したがって時間短縮機能が加われば有用か?確かに目に見える化等効果により人によっては大変有効かもしれませんが、私見として(もとに なるデータ収集用)デジタル機器、アプリには向き不向きがあるような気がします。また糖尿病領域では精神的、社会的問題、合併症・並存 疾患の悩みなどを抱える人も多く(将来はわかりませんが)今のところAIが対応し切れるのか漠然と不安があります。順調に行っている人に は(書類は)不要、無駄かもしれず労力・医療費の削減につながるかトータルの評価はどうなるのでしょうか。
一方糖尿病に比べて食事・運動療法など(薬剤より)ライフスタイルインターベンションの比重が高く、おそらく合併症・並存疾患も少なく 年齢も若いと考えられる境界型糖尿病または前糖尿病(prediabetes)ではどうか?AIを基本とした糖尿病予防プログラムが、伝統的なエ ビデンスのある人コーチングを基本としたプログラム(有名なDPP)に非劣勢だったという成績(1年間、一群183~185名、ランダム化前向き試験)がADA Late-breaking ポスターで発表されました。糖尿病の前段階の人に対してモチベーションを上げる事、脱落を防ぐことはエネルギーが大変かかると感じていたので、長期の成績がどうなるか楽しみです。
その他ADAでは多数関連演題がありましたが参考にした主なものは以下です。(参考までに私のノートも)。
#シンポジウム;Show me the Data! Using CGM data to drive behavior change (CGMを使って行動変容を促す);The Good, the Bad, and Ugly of Apps and Digital Programs that use CGM data(CGMを使った良い、悪い、ひどい危険な?アプリとデ ジタルプログラム)→検証されてないものもあり(FDA不認可のものも多い)まだ脇役で主役はメディカルスタッフではないか?目標の設定が 不適切なものがある、等
#行動医学・心理学専門部会討議;健康的な行動とメンタルヘルスを助けるAIのABC;アプリのメッセージは個別対応より一般論が多い アプ リの成績データは人的ケアとではなく非使用者との比較が多い、メンタルヘルス領域のChatbotは危険を伴う、LLM(大規模言語モデル)はス ティグマ・妄想的思考を引き起こし得るためテラピストの代用とすべきでない→Chatbotは便利だが、内容がまだ表面的で(人と相談しなくな るような)弊害の可能性、セキュリティーの問題等
#パネルディスカッション;AIと糖尿病テクノロジーの臨床応用;chat GPTによるシックデー指示やシナモンを食べるときの推奨事項、デジ タルツイン技術を使ったAID(インスリン自動投与制御システム)の性能向上等
#糖尿病テクノロジー専門部会討議;糖尿病テクノロジーDistress(心理的苦悩);アラーム・アラートは便利な一方、音に対するストレス、 過剰反応や機器使用そのものに対する不快感・不信感による中断から高血糖・低血糖の悪化が起こりうる→医療従事者はテクノロジーの精神的 影響に注意すべき


おおはしクリニック


 講演中引用された総説(1)も参考になりました。
例えば上記生活習慣病療養計画書作成機能はDSS(意思決定支援システムと呼ぶそうです。
糖尿病・インスリンとグルコースの自己管理ツールはとくに若く、デジタルリテラシーがある、願望の強い妊娠糖尿病に有効、糖尿病のサブ タイプ化がDSSの有効性を高める、将来遺伝情報をもとに薬の治療反応予測、DSSの玉石混交、生活の質への効果・長期効果・経済分析の必 要性、国によってはアクセス不平等問題、糖尿病分野は放射線学、心臓病学、腫瘍学分野に比しAI/機械学習技術を使用するFDA承認済み医 療機器が少ない、などが書かれています。代表的な上図を引用させてもらいました。

おおはしクリニック  最後に音喜多看護師長から日本糖尿病学会(JDS岡山2025年)時話題やコメディカルスタッフの立場から意見を聞きました;
看護師として当面の取り組みは学会企業展示でみたDEXCOM G7のアプリとシンクヘルスアプリの連携です。グルコース値の変動、運動、食 事など1画面で経時的に把握出来るようになり、将来的に?(すでに?)AIによる分析、メッセージ作成も可能とのこと、是非導入してみた いです。ほかにも訪問看護師さんとの情報連携が今後デジタル化されれば業務効率・迅速化に繋がると思いました。アラーム/アラートDist ressの話を聞き現場と対比しました。
確かに音が鳴りすぎて反感を抱く人、慣れて放置している人(また鳴ってるな)、職場では音が迷惑で使えないという人は多いです。逆にまだ アラートを十分高・低血糖対策に活用できてない人もいると感じます。 対策をまとめてみました。

  • 1.必要以外アラートをオフにする
     サイレントオール(6時間オフ)利用
     夜間自分の気づけない時間帯は低グルコースアラートのみONにしておく
     上限値・下限値を広げる
     例:高血糖アラート180㎎/㎗を250㎎/㎗に設定
       低血糖アラート70㎎/㎗を60㎎/㎗に設定
  • 2.通知音をバイブレーションに替え、全てバイブレーションに変更可能
  • 3.センサーがきちんと装着 されていないと「信号失われました」のアラート発生
  • 4.Bluetoothの接続不良通知が多い場合
      スマホをセンサーに近づける(6m以内 DexcomG7では10m以内)
      アプリの「バッテリー最適化」を無効にする(androidの場合)
  • 5.DexcomG7では緊急低値リスクアラート、急上昇および急降下アラートに加え遅延高値アラート
     (例えば初回2時間と設定しておくと高値アラートレベル以上の高血糖になっても2時間以上続いて初めて鳴る)
     があり利用
参考文献
  1. Mackenzie SCら:クローズドループを超えた糖尿病とAI:展望、有望性、課題のレビュー. Diabetologia 67: 223-235, February 2024
2025年7月


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