今月の糖尿病ニュース

2020年5月の糖尿病ニュース

SGLT2阻害剤とGLP-1受容体作動薬の併用

おおはしクリニック新型コロナウイルス感染症のため5月22日~24日開催予定だった日本糖尿病学会年次学術集会が10月に延期されました。昨年の仙台など楽しかった学会を思い出すと残念ですが、今後主流になるかもしれない?WEBカンファレンスに参加して情報交換していこうと思います。

内因性糖産生(EGP)といえば空腹を長時間続けても低血糖にならないよう主に肝がブドウ糖を作る仕組みとして無くてはならないものですが、糖尿病では高血糖状態でも作動してしまうことが問題でSGLT2阻害剤治療においてはさらにEGPが増加することはパラドックス(1)でありそれを解決すれば血糖降下作用が強化されるという仮説のもと3編の論文が出ました。
まずSGLT2阻害剤投与下では空腹時血中グルカゴンが増加すること、血中インスリンが減少することがわかっていてEGP亢進の原因とするならば、グルカゴンを減少させ、インスリンを増加させるGLP-1受容体作動薬を併用すればEGPが減るか調べられました(1)。
16週間連日①リラグルチド1.2mgまたは②カナグリフロジン100mgまたは③両者併用投与を行い前後で、HbA1c、空腹時血糖・インスリン・グルカゴン、体重、および空腹時(基礎)EGP測定が行われました。
HbA1cは①-1.44②-0.89③-1.67%、体重①-1.9②-3.5③-6.0kg、グルカゴン・インスリン比は③は②に比し増加は抑えられていたもののEGPは①-8②+9③+15%と③でEGPはむしろ増加しました。EGPの変化と空腹時血糖は相関が認められました。まとめるとGLP-1受容体作動薬を併用してもSGLT2阻害剤によるEGP増加は抑制されずHbA1c改善効果に相加効果が見られない一因と考えられました。

おおはしクリニックSGLT2阻害剤とGLP-1受容体作動薬の併用大規模試験は他にも行われています。 DURATION8試験(①エキセナチド2mg週一回 ②ダパグリフロジン10mg日1回 ③併用28週)A1c①-1.58 ②-1.37 ③-1.95% 体重①-1.5 ②-2.2 ③-3.4kg 血圧 ①-1.3 ②-1.8 ③-4.2mmHg
  AWARD10 試験(SGLT2阻害剤に①デュラグルチド1.5mgまたは②0.75mg週一回上乗せ 24週) A1c①-1.34(プラセボとの差-0.79) ②-1.21(プラセボとの差-0.66)% 
SUSTAIN9 試験(SGLT2阻害剤にセマグルチド1.0mg週一回上乗せ 30週)  プラセボとの差-1.42%
また同じインクレチン関連薬DPP4阻害剤①サクサグリプチンと②ダパグリフロジンの併用試験(Mathieu Cら 2016年)もあり、①+②-1.44 ②-1.2%でした

いずれもSGLT2阻害剤とGLP-1受容体作動薬併用療法は各々単独療法より効果は高いものの(1)同様HbA1c改善に相加効果があるとは言えないかもしれません。

次にSGLT2阻害剤(ダパグリフロジン)によるEGP増加は血中インスリンおよびグルカゴン濃度の役割が重要とする説をグルコースクランプ法、ソマトスタチン注入による膵(pancreatic)クランプ法により検証が行われました。ダパグリフロジン内服後グルコースを空腹時血糖に固定(糖注入によりクランプ)するとグルカゴンの増加、インスリンの減少は消失したことよりダパグリフロジンの膵島への直接作用は既報と同様否定的である事が示唆されました。
しかし最も重要な知見はその状況下においてもEGP増加が続いたことです。
EGPの増加は血糖、インスリン、グルカゴン値とは無関係ということになります。
GLP-1受容体作動薬によりEGP増加が抑制されなかった(1)の結果とも合致します。
膵クランプ法でインスリン・グルカゴンを一定にしても同様にEGP増加は認められましたが、ソマトスタチンの影響による肝腎血流低下がEGPと尿糖排泄量の実験結果に影響を与えた可能性を指摘しています。
(3)では腎移植術を受け腎除神経を行っている2型糖尿病6名、非糖尿病8名に対してダパグリフロジン内服下EGP測定が行われました。腎除神経の影響は受けずEGPは依然増加し、尿糖排泄量と比例しました。もしEGP増加が抑えられたなら神経を介した腎肝連関が機序として浮かび上がったのですが今回は症例数の限界もあり裏付けることは出来ませんでした。
今後の展開が楽しみです。

おおはしクリニック

参考文献
  1. Ali AM, DeFronzo R, Abdul-Ghani Mら:2型糖尿病患者においてカナグリフロジンとリラグリチド併用療法は体重減量に相加効果を発揮するがHbA1cにはしない. Diabetes Care published online, March 27 2020
  2. Alatrach M, DeFronzo R, Abdul-Ghani Mら ら:SGLT2阻害剤による内因性糖産生増加は血中インスリンおよびグルカゴン濃度の役割が重要とする説を否定する証拠. Diabetes 69: 681-688, April 2020
  3. Solis-Herrera C, Del Prato S, DeFronzo Rら:SGLT2阻害剤による内因性糖産生増加は腎除神経術により変化せず尿糖排出増加に強く比例する. Diabetes Care 43: 1065-1069, May 2020
2020年5月

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