今月の糖尿病ニュース

2021年11月の糖尿病ニュース

脂肪肝(NAFLDとNASH)

おおはしクリニックSGLT2阻害剤と脂肪肝の関係を調べる機会があったのでいくつか文献を読んでみました。 非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLDの合併率は増加が続き全世界一般人口で25%、2型糖尿病では60%を越え、そのうち進行性で肝硬変や肝癌の発症母地にもなる非アルコール性脂肪肝炎NASHは一般人口で1.5~6.5%、2型糖尿病では37%といわれています(1)。糖尿病は肥満同様脂肪肝リスクファクターであり過半数の人が対象になるため効率的な診療が求められますが、NAFLD/NASH診療ガイドライン2020(2)では肝繊維化評価を軸にわかりやすく書かれていました。
肝繊維化が進行すると肝硬変、肝癌など重篤な肝疾患を引き起こすのみならず、脳・心血管疾患のリスクファクターになることが強調されていました。

日常糖尿病診療においてNAFLD拾い上げはGOT・GPT(正常値記載なし?)、腹部エコー(GOT・GPTは高度線維化があっても正常のことがある(1))で行い、次のステップが肝繊維化評価です。
肝繊維化指標は、
FIB4 index;年齢、GOT、GPT、血小板(単位注意:20万なら20と入力)値を日本肝臓学会ホームページ内(医療従事者対象)計算サイトに入力。(年齢×GOT)/(血小板×√GPT)
1.3以上で線維化可能性
NAFLD fibrosis score(NFS);年齢、BMI、GOT、GPT、血小板(単位注意:20万なら200と入力)、アルブミン(同4.0なら40と入力)、糖尿病またはIFG(境界型糖尿病)有無をhttp://nafldscore.com/上のonline calculatorに入力。-1.455以上で線維化
血小板数;20万未満で線維化可能性
線維化マーカー;ヒアルロン酸、IV型コラーゲン7S、M2BPGi、オートタキシンなど。なお(1)では2次検査として薦められています。

おおはしクリニック肝線維化が疑われれば消化器科コンサルトの上、肝生検またはエラストグラフィーを考慮または推奨という流れですが、血小板数20万以下またはFIB4indexが2.67以上の場合は線維化高リスク=脳・心血管疾患リスクと考え頸動脈エコー、運動負荷心電図などが推奨されています。(肝生検は病院消化器科の領域として、エラストグラフィーは超音波でできるとのことどんな機械かWeb検索してみましたがやはり消化器科向けと出ていました。)
NAFLD/NASH発症・病態進展に影響を及ぼす因子としてPNPLA3が代表的な感受性遺伝子でことが明らかになっています。酸化ストレス亢進、インスリン抵抗性増加、アディポサイトカイン分泌異常、腸管からのエンドトキシン流入などが同時進行的に起こることも想定されていますが機序は複雑(3)(4)でここでは省略します。しかし肝選択的インスリン抵抗性(糖産生抑制作用のみインスリン抵抗性となり脂肪合成作用は抵抗性なしとする仮説)を検証した論文(5)は興味深く、肝ミトコンドリア品質コントロールとNASH患者臨床データとの関係を示した論文(6)は要旨のみならず全文読んでみたいものです。
腸内細菌叢(2)、サルコペニア(2)、術後(膵頭十二指腸切除術、胃全摘術(7))と脂肪肝の関係も今後の研究が待たれます。

おおはしクリニック最初に戻って有効な薬、食事運動についてまとめてみます。
薬で肝組織像を改善するのはピオグリタゾンとGLP-1アナログです。SGLT2阻害剤は有望(2)ですがまだ十分なデータがなく肝組織像を改善するか結論は出ていません(1)。メトホルミンについては肝組織改善効果は今のところ否定的としています(1)(2)。カロリー制限、運動は肝機能、肝脂肪化を改善するが肝組織像を改善するかの検討はまだ十分ではありません(2)。糖質と脂質どちらが脂肪肝に悪いか?よくあるテーマですが飽和脂肪がより有害とする論文が最近出ています(8)。

参考文献
  1. Kanwal Fら: NASH エピデミック(通常予測を超えて発症)に備える:.行動の呼びかけ. Diabetes Care 44: 2162-2172, September 2021
  2. 日本消化器病学会・日本肝臓病学会編集: NAFLD/NASH診療ガイドライン2020
  3. 太田嗣人: 肥満・インスリン抵抗性がもたらす肝の炎症. 日内会誌109:19-26, 2020
  4. Sakurai Yら: MAFLDにおけるインスリン抵抗性の役割. Int. J. Mol. Sci. 22: 4156, 2021
  5. Ter Horst KWら: 肝インスリン抵抗性はヒトNAFLDにおいて経路選択性ではない. Diabetes Care 44: 489-498, February 2021
  6. Cunningham RPら: NAFLDとNASH肝細胞特異的eNOSの重大な役割Diabetes 70: 2476-2491, November 2021
  7. Nakamura Nら: 胃癌胃全摘後栄養状態と肝脂肪化の関係:後ろ向き研究. BMC Surg 21: 325, 2021
  8. Parry SAら: 肝内脂肪と食後血糖はFree Sugars(糖類)より飽和脂肪を多く含む食品摂取後に増加する. Diabetes Care 43: 1134-1141, May 2020
2021年11月

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