2026年2月の糖尿病ニュース
食事療法の個別化
糖尿病を持つ人、糖尿病のリスクがある人の食事療法の基本は日本糖尿病学会ホームページ「健康食スタートブック」にまとめてあり、個々のライフスタイルや食習慣が多様になった為適切な食事は一人一人異なり、年々変化するので定期的に見直すことが推奨されています。
米国糖尿病学会編糖尿病ケア基準(Standards of Care in Diabetes 以下SCD)2026年版をみても同様で「現在のエビデンスでは、糖尿病予防のための理想的な炭水化物、タンパク質、脂質比率は存在せず現在の食習慣、嗜好、代謝目標の個別評価に基づいて行うべきである。地中海食、植物性食品中心食、DASH食(食事で高血圧対策)、低炭水化物食などいずれも候補となり得る」
「人は栄養素ではなく食べ物を食べている。栄養の推奨は実際に食べるものに適用されるべきで例えば、炭水化物には豆類、全粒穀物、果物が含まれ、精製穀物と同じカテゴリーに属すが、健康への影響はかなり異なる」などなどです。
SCDではMeal Replacements(食事代替食品)についても触れています。 食事代替食品とは、固定量のマクロ栄養素や微量栄養素を含むパッケージ食品(バー、シェイク、スープなど)です。栄養素の質や血糖管理を改善し、その結果、摂取量やエネルギー摂取量を減らすことができます。部分的および全食代替の両方を対象としたメタアナリシスでは従来の食事プランと比較して、より大きな体重減少とA1Cおよび空腹時血糖値の改善が示されました。さらに食事代替はLook Ahead、DiRECT、PREVIEWなど重要な臨床試験で使用されており6か月以内減量戦略となり得ることが示されました(国によって認可基準が異なるそうです)。
8時間制限食など断続的断食も同様で、2週間から52週間の断続的断食は腹囲、除脂肪体重に有意な減少をもたらすと検証されています(断食にあわせた薬調節、非断食期の健康食パターン維持が必要とコメントあり)。
いずれの方法も長期予後は不明ですが、低炭水化物食プランについては長期的な持続可能性に課題があり定期的再評価、個別化の重要性が指摘されています。
個別化といえば精密栄養学Precision Nutritionが話題でWeb検索すると予想以上にヒットしました。医薬基盤・健康・栄養研究所他15機関による「Precision Nutritionの実践プラットフォームの構築と社会実装」には、米国国立衛生研究所(NIH)がPrecision Nutritionを2020年からの10年間の戦略にすること、腸内細菌叢と代謝物メタボローム解析・宿主ゲノム情報のリンク、ライフスタイルに沿った経時的データ、機械学習や深層学習などの人工知能による情報解析、データベースNIBIOHN JMD、解析プラットフォームであるMANTAなどが書かれていました。Diabetes Care 2026 年1月号「Prediction of Weight Loss and Regain Based on Multiomic and Phenotypic Features: Results From a Calorie-Restricted Feeding Trial(マルチオミクスと表現的特徴に基づく体重減少と再増加の予測:カロリー制限食試験から)」にもマルチオミクス(遺伝子、代謝物、腸内細菌など)を活用した研究が報告されました。マルチオミクスデータの解析には高度な計算技術が必要でAIが駆使されます。また行動変容療法の重要性も以下のように考察されています。
「精密栄養学ではアウトカム(血糖・体重)を設定し(アウトカム指向)し、網羅的に収集・集積したビッグデータから人工知能などによりアウトカムを達成するルールに導き出すことで(データ駆動型)、各個人の体質やライフスタイル、ライフステージに合わせたオーダーメイド型の栄養指導を行うことを目的としている。データ駆動型・アウトカム指向型で提示される新しいルールは、人間の目では規則性が見出せない場合がある。そのため、情報の受け手がその提案を受け入れ、行動変容につなげるための方法が精密栄養・個別化栄養の社会実装に向けての大きな課題になっている。本課題を打開するためには、食事内容の評価だけではなく、心理学的観点からのデータまで包括した解析を行い、各個人に適した栄養摂取行動変容システムの構築が必要になると思われる。また、新しく提示されたデータに対する科学的な裏付けとなるメカニズムの解明も、人々が提案を納得するためには重要になるだろう。」
食事指導のエビデンスにおける行動科学の欠如は2023年「糖尿病学の進歩」でも指摘されていました。治療計画選択における共有意思決定、合意された糖尿病ケア計画および行動目標の共同モニタリング、ビヘイビアヘルス(behavioral health)の評価(SCN; S89)を全スタッフと共に心がけたいと思います。
| >>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから |




