今月の糖尿病ニュース

2025年12月の糖尿病ニュース

AID(持続血糖モニター連動自動インスリン注入)療法への道/多様性の時代を拓く糖尿病看護

おおはしクリニック 持続皮下インスリン療法(CSII)はインスリンポンプ療法ともいわれ1型糖尿病を主に普及している治療法です。AID(Automated Insulin Delivery)療法は持続血糖モニター(CGM)と連動し、自動でインスリン注入を増減するCSIIです(medtronic-dm.jp)。日本でAID療法はアドバンスハイブリッドクローズドループ(AHCL)テクノロジー搭載システムが導入された2023年11月から開始されました(dm-net.co.jp)が、そこに至る前の経過を調べると2014年承認2015年発売のSAP(Sensor Augmented Pump)療法(CGMを利用してインスリンポンプを用いる方法)が最初のCGM連動CSIIです(medtronic.com)。低血糖予防効果のより優れた機種(低グルコース一時停止=PLGM機能)に進化し2022年にはハイブリッドクローズドループ(HCL)テクノロジー搭載SAPが開始されました。HCLには基礎インスリンを自動調整する機能があります。AHCLでは基礎インスリンだけでなく高血糖補正のための追加インスリンも自動で注入できるようになりました。
一方使用者がリアルタイムに血糖を確認できるパーソナルCGMがスタートしたのはSAP開始と同時で、それ以前は医療機関を対象としたプロフェッショナルCGMのみでした(medtronic.com)。その後2017年にリブレが登場して普及面で大きな変化が起きたのは周知の事実でしょう。

おおはしクリニック 今回SAPでないCSII療法中の人からAID療法について質問を受けたため、今年の日本糖尿病学会年次学術集会の抄録を調べてみました。
SAP開始による変化は、第15回日本先進糖尿病治療研究会(2015年11月)抄録からですが①70mg/dl未満低血糖時間が160→76分/日に減少した以外他CGM指標、HbA1c(7.8→7.7%)に有意差なし②基礎インスリンの調整に有用などの報告が見つかりました。
単純に考えてSAPでないCSIIでもリブレ併用により(PLGM機能はないが)このレベル近くまで到達するものと思われます(データ未確認)。
HCL開始による変化は開始前HbA1c7.1±0.8%の人たちでTIR70.6±12.2→77.2±7.7と有意に増加、TBR5.7±5.7→4.0±4.1(3か月)→3.5±3.0(12か月)と有意に低下、という報告がありました。
HCLからAHCLへの変更報告は多数ありました。平均HbA1cは7.4~7.7%から6.6~7.2%、TIRは64~74%から71~82%、TBRは1.8~3.3から2.2~3.3という変化で有意差はHbA1cのすべての報告、TIRの一部にあり、TBRにはありませんでした。TITR(血糖70~140mg/dlに入る割合)の報告もあり施設平均49.5→56.7%、48.2→52.5%といずれも有意に増加という結果でした。SAPでないCSII+リブレからAHCLに変更した69才症例報告がありTIR56→78%、TBR9→1%という結果で高血糖過剰補正が減ったと考察されていました。
以上より個人差は大きいもののAHCLを導入する際参考にしたいと思います。

おおはしクリニック 看護師長音喜多です。
先月の学会報告第2弾です。会長講演 「多様性の時代を拓く糖尿病看護~グローバル化する日本社会への対応を見据えて~」を聴講し、糖尿病がある生活を営む人々の多様な経験や価値観を尊重しながら、エンパワーメント即ち自ら選択し決定し行動できる力を引き出す事を支援すること、について自分の経験を振り返りました。多様性は国籍、文化、宗教、価値観の多様化(治療優先VS仕事優先、家族観の違い)社会背景の多様化(経済落差、医療アクセスの差)などを含みます。守れるか守れないではなくどう折り合いをつけるかが大事で「心理的状態」「身体的状態」「社会的状態」3つの側面から把握する必要があります。例えば治療変更時には受け入れ、心の状態に配慮したケアが必要で「何を伝えるか」「どう伝えるか」「どう伝わったか」を考えたケースを紹介します。

Aさんは糖尿病がありHbA1c高値、視力障害があります。息子さんが同居でAさんを助けています。息子さんも糖尿病がありますがまだ血糖マネージメントは十分ではありません。夫は既に他界し自分だけこんな状態で長生きして、生きていてもこんな状態だからと悲観的な日々を過ごしています。「インスリン打ってまで長生きしたくない。息子の糖尿病は心配だが万が一体調崩してもなったらなった時、今のままでいい」と常々言っておられました。
ところが地域包括支援センター相談を受け入れられたことがターニングポイントになりました。それまで介護保険の利用はプライバシーの不安などで拒んでおられましたが、車イスのレンタル、手すりの設置で生活の利便性が向上し訪問看護も利用されるようになりインスリン治療も拒否一辺倒では無くなったそうです。思いを理解し、何をしてほしいか?何をしてほしくないか?語ってもらうことが大事で、医療者はHbA1cのみでなく、何を望んでおられるかよく考える必要があります。患者さんの価値観を尊重しながら今後も支援していきたいと思いました。


おおはしクリニック

2025年12月


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