今月の糖尿病ニュース

2019年1月の糖尿病ニュース

1型糖尿病補助療法とSGLT2阻害剤

おおはしクリニックあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
新年早々(正確には昨年末)驚いたのはスーグラが2018年12月に1型糖尿病患者にも適応拡大されたことです。昨年秋、講演会で反対意見を聞いていただけにまだ時間がかかりそうと予想していたからですが、そこで早速SGLT2阻害剤の1型糖尿病への効果と、懸念される副作用として糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)(1)について調べてみました。

ダパグリフロジン(フォシーガ)5~10mg24週間(DEPICT-1試験 平均42才BMI28 A1c8.5 % 2017年);HbA1c-0.42~0.45%、体重-2.96~3.72%、インスリン単位数-8.8~13.2%、血糖変動(10mg・CGM上目標範囲内時間)43.2→52.3%、DKA1→2%、重症低血糖増加せず(2)。 ソタグリフロジン(日本未発売SGLT1/2阻害剤 Tandem1~3試験);血圧減少、DKA増加、インスリン持続皮下注入より頻回注射 でDKA少ない傾向(2)。 なおイプラグリフロジン(スーグラ)50mg24週間日本人への投与成績は添付文書によるとHbA1cプラセボとの差-0.36%、DKAの頻度不明となっています(ケトン体増加は201人中21人=14%、ケトーシスは201人中6人)。

また(2)ではDKA対策として以下を推奨しています;
HbA1c>9%、DKA既往歴のある人は避ける
インスリンポンプ治療者はリスクが高い
SGLT阻害剤は必要最少量を使用する
最初は食前追加インスリン10~20の減量を行い、日内変動をみて基礎インスリンも調節する
インスリン:カーボ比を再評価する
ケトン体測定の指導とDKA教育をする

おおはしクリニック2018年9月、米国ではまだSGLT阻害剤は1型糖尿病には適応外でしたがDKA対策としてSTICHプロトコールが提案されました(3)。
第一段階;DKAの前段階ケトーシスを避けるためアルコール過飲、低炭水化物食を避ける。マラソンなど激しい運動、手術前には医療チームに相談しケトン体チェックを行う。手術、絶食、 炭水化物を控えるとき、長時間の運動などインスリン量を減らすときは24時間前からSGLT阻害剤中止する。病気や脱水時もSGLT阻害剤を中止してケトン体を測る。医療者側はインスリンの減量、とくに基礎インスリンの減量を慎重に行う。一般的にSGLT1阻害作用をもつものは食前追加インスリン、選択的SGLT2阻害作用薬(フォシーガ、ジャディアンスなど)は基礎インスリン減量の比率が高くなる。次に以下のようなケトーシス症状を見逃さない。即ち腹痛、嘔気嘔吐、口渇、多飲、疲労倦怠感、食欲低下、衰弱、呼吸促迫、息切れである。SGLT阻害剤の影響もあり尿中ケトン体測定(診断基準++以上)より血中ケトン体測定(同βヒドロキシ酪酸>3mmol/L )が正確である。同様に重炭酸濃度(同<15.0mmol/L)も不正確になることがある。静脈血pHは<7.3が診断基準である。しかし最も重要なのはSGLT阻害剤内服下ではインスリン非依存性に糖が排泄される為、血糖値150mg/dl未満(通常診断基準>200)でもDKAが起こることである。(因みにアボット社フリースタイルリブレにはβヒドロキシ酪酸濃度測定機能がありますが専用試験紙が必要です。)

おおはしクリニック第二段階;STICHプロトコール(携帯カード仕様もあり裏に上記注意書き)
STop the SGLT inhibitor(SGLT阻害剤中止)
以下は同時に1~2時間ごとに繰り返す 
Inject bolus insulin(下記炭水化物摂取時必要な通常インスリンの1.5倍量を打つ)
Consume 30g carbohydrates(最低30~60gの炭水化物摂取)
Hydrate(200~500mlの水摂取)



第三段階;ケトン体のチェックは3~4時間毎に行う
第四段階;ケトーシスが改善しない、またはDKA症状が続くときは救急外来受診

最後になぜSGLT2阻害剤が先駆けて1型糖尿病補助療法に認められたか、他剤のデータを調べてみました(2)(4)。確かにHbA1c改善効果、低血糖リスク減少、体重減少全てを有意に満たす薬剤はメトホルミン、GLP-1アナログ、DPP4阻害剤の中にはないようでした。しかしメトホルミンはREMOVAL試験で頚動脈最大内膜厚減少が認められるなど、依然インスリン抵抗性・心血管合併症減少を焦点に研究が行われているようです(4)(5)。
1型糖尿病へのSGLT2阻害剤補助療法も当然心血管系、腎への効果が期待されての適応と想像されますが今後のアウトカム研究結果が待たれます。

参考文献
  1. Peters ALら:糖尿病性ケトアシドーシス:SGLT2阻害剤治療で予測される合併症.Diabetes Care 38: 1687-1693, September 2015
  2. McCrimmon RJら:SGLT阻害剤による1型糖尿病補助療法.Diabetologia 61: 2126-2133, 2018
  3. Garg SKら:SGLT阻害剤による補助療法を受けている1型糖尿病患者の糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)リスクを軽減する方策:STICH プロトコール. Diabetes Technol Ther 20: 571-575, 2018
  4. Livingstone Rら: 1型糖尿病メトホルミン治療の新しい考え方. Diabetologia 60: 1594-1600, 2017
  5. Bjornstad Pら: メトホルミンは1型糖尿病若年者のインスリン感受性と血管健康度を改善する 無作為対照試験. Circulation 138: 2895-2907, 2018
2019年1月

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