今月の糖尿病ニュース

2025年5月の糖尿病ニュース

糖尿病と貧血

おおはしクリニック 糖尿病は高血糖、炎症、酸化ストレスにより鉄代謝障害、赤血球寿命短縮を起こす可能性があり腎不全、胃腸疾患の合併によりエリスロポエチ ン不足、鉄・ビタミンB12吸収障害をもたらすこともあり貧血を引き起こします(1)。また(糖尿病との関連は別として)消化管出血も常に念頭 に置くべきでしょう。薬剤性の貧血も報告されています。しかしそれぞれの関与割合はよくわかっていません(1)。
今回米国国民健康栄養調(NHANES)と英国バイオバンク研究(UKB)の参加者それぞれ9,026人と389,616人を調査対象として多変量ロジスティ ック回帰を使用して、貧血と糖尿病の横断的関連が調査されました(1)。UKBの追跡調査では、多変量Cox比例ハザード回帰により、糖尿病に関 して貧血のハザード比(HR)および95%CIを求めました。さらに、炎症、腎機能障害、および薬物使用の影響も調べました。

おおはしクリニック 結果、米国と英国の40〜69歳の白人において糖尿病を持つ人では正常血糖者に比し貧血は2〜4倍高値でした。UKBでの追跡期間中央値13.6年間 で、42,354人が貧血を発症しました。糖尿病の調整HRは、鉄欠乏性貧血で3.05(95%CI 2.90-3.21)、慢性疾患の貧血で3.02(95%CI 2.51- 3.63)、ビタミンB12欠乏性貧血で4.88(95%CI 4.23-5.63)でした。炎症、腎機能障害、および薬物使用による調整後、関連性は部分的に減少 するも依然として強く有意でした。以上より糖尿病は主な貧血と関連していました。メカニズムを特定するには、さらなる研究が必要としています。
他、前糖尿病に鉄欠乏性貧血が多く原因として炎症性サイトカインが鉄吸収・利用を減少させること、非アルコール性脂肪肝障害は鉄欠乏性貧血・慢性疾 患に伴う貧血のハイリスクでヘプシジン調節障害、栄養吸収障害、消化管出血が原因として考えうること、ビタミンB12 測定値が正常でも不十分な活性コバラミンによる貧血があることが書かれています(1)。
今週木曜日(29日)から第68回日本糖尿病学会年次学術集会が開催されますが来月参加報告予定です。

おおはしクリニック

参考文献
  1. Wang Dら:糖尿病と貧血の関係:NHANES とUK Biobankからのエビデンス. Diabetes Care 48: 816-826, May 2025
2025年5月


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