2025年6月の糖尿病ニュース
糖尿病とロコモティブシンドローム
5月29日~31日、岡山にて第68回日本糖尿病学会年次学術集会が開催されました。
オンデマンドがない為基礎的なプログラムは諦め、臨床的話題を中心に追いかけました。最近日本から登場したイメグリミンのシンポジウム、
会長特別企画は大変勉強になり会場も熱気に包まれていました。MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は日本肝臓学会との共催、肝臓と糖
尿病・代謝研究会とあわせ演題が多数ありました。薬剤治療が注目されているようで基礎のみでなく臨床家にも身近になった気がします。個人的
には肝線維化の評価方法に興味がありましたがエラストグラフィーの活用、消化器内科との連携についてはまだ演題が少なく感じました。また消
化器内科との連携といえば膵疾患について日頃相談機会が多いので膵臓学会との共同企画などあればと外野席からの願いです。(昨年67回集会では
シンポジウムにおいて糖尿病学会と消化器関連学会共同による糖尿病と膵疾患の大規模データが発表されたようですが見逃し残念)
網膜症による失明、透析導入が減少傾向のなか糖尿病診療で感じていたのは整形外科領域の悩みをもつ人が多いことです。今回初の日本整形外
科学会との合同シンポジウム「メタボ×ロコモの制圧」が開かれ目玉の一つとしてマークしていました。
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは,「運動器の障害によって移動機能が低下した状態」のことで,2007 年に日本整形外科学会から世界に
先駆けて発表された言葉と概念だそうです。 抄録によると骨粗鬆症,変形性膝関節症,変形性腰椎症は高齢者有病率が極めて高く40歳以上の有病
者数は推計それぞれ1070 万人、2530万人、3790万人、併存率は80歳以上男性の約 10%,女性の約40%で3つが併存します。疾患が筋力の低下
やバランス能力の低下などの運動機能低下を通し連鎖・複合して移動能力を低下させる為総合的に考える必要からロコモが提唱されました。ロコモ
の判定はロコモ度テスト(立ち上がりテストと2ステップテストという二つの運動機能検査とロコモ25という25項目の自記式の質問票)で行いロコ
モなし、ロコモ度1,2,3と判定します(立ち上がりテストは講演中実技がりましたが意外に難しいです)。ロコモ度1はロコモの始まり、 ロコモ
度2は移動機能低下が進行したもの、ロコモ度3は移動機能低下が進行し社会生活に支障をきたしたものです。片足立ち、スクアットがロコモーショ
ントレーニング(ロコトレ)として勧められています。
シンポジウムのタイトル、即ち「ロコモを構成する運動器疾患とメタボリックシンドローム(メタボ)を構成する疾患との間に関係がある」と
なると、高齢の?やせ型の人には(ロコモにつながるサルコペニア防止のため)食事摂取量不足タンパク質不足に注意を促す一方、若い人?は体
重を減らすよう説明する必要があり、ロコモ予防の食事や体重管理は一様ではないことが理解されました。運動療法も重要で個別対応が必要でし
ょう。
内科サイドからは主としてサルコペニア肥満を例にメタボとロコモを結びつける分子メカニズムの解説がありました。
関連文献を探したところ千葉大学の4月24日付広報から論文(1)紹介がありました。
2021年度に健診を受けた35,059人のデータを解析、ロコモは全体の約15%、メタボは約7.5%に該当、メタボ該当者ではロコモのリスクが1.87倍
に上昇、特に50代では2倍以上でメタボ該当者のうち、男性の32.0%、 女性の53.2%がロコモも併発していたそうです。メタボとロコモの同時健診
も提案されていました。
最後に、気になるロコモと糖尿病との直接関係についてです。
経験的に関係あるとは思っていましたがあまりガイドラインなどには記載がなく、もやもやしていたところシンポジウムで「糖尿病と脊椎疾患」という演題
を見つけ興味深く拝聴しました。手術時の感触まで教わりました。
なお今年の「糖尿病学の進歩」抄録にも「糖尿病診療ガイド2024では,運動療法の重要性を強調しながらも,整形外科的評価の具体的な方法 や,糖尿病特
有の運動器症状への対応については十分な言及がない。特に,高血糖状態が運動器に及ぼす影響については、これまで十分な検討がなされていなかった。」と
あり同じ思いの糖尿病内科医も多いのではと思います。講演抄録の後半は2023年論文(2)になっているようなので抜粋させていただきます。
「脊柱靱帯骨化症の患者では,糖尿病 の有病率が非骨化症患者よりも高いことから靱帯の 異所性骨化に糖尿病が関わる可能性が指摘されてき た.しか
し,患者の遺伝子多型データを基にしたメンデルランダム化解析では,糖尿病と脊柱靱帯骨化症の間に直接的な因果関係は確認できなかった.一方,肥満
を介した慢性炎症や代謝異常が靱帯の異所性骨化を促進することは遺伝統計学的にも,疫学的にも示されている.このため,糖尿病は間接的に靱帯骨化症
に 関与する可能性が高く,糖尿病治療による代謝障害の改善が,脊柱靱帯骨化症の進行予防に有効な可能性がある」.
来月はアメリカ糖尿病学会Web参加報告予定です。
参考文献
- Goto Cら:運動能力低下を伴ったロコモティブシンドロームとメタボリック症候群の有病率と共存:35059人の日本人成人を対象とした横断的研究. Scientific Reports 15: 13547, 2025
- Koike Yら:脊椎後縦靭帯の骨化に関する遺伝的洞察. eLife.2023 Jul 18;12:e86514
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