今月の糖尿病ニュース

2024年10月の糖尿病ニュース

スティグマとチーム医療

おおはしクリニック 9月に日本糖尿病教育・看護学会学術集会が京都で開催され音喜多看護師長が参加しました。プログラムを見せてもらうとDxと並んで メンタルヘルス(こころの健康状態)に関する話題が豊富でした。そのひとつミニレクチャー「2型糖尿病とスティグマ」を(オンデ マンド)拝聴しました。(スティグマはしばしば負の烙印と訳されますが、講演で紹介された原典では属性・特性・障害などが通常の人 々とは区別され容認しがたい存在として特徴づけられることと定義されています。)糖尿病治療目標のひとつ、スティグマ・社会的不利益 ・差別の除去は今後重要なテーマになるかもしれません。演者加藤明日香先生が共著者であり推薦の国際合意声明(1)を読んでみようかと 思います。「糖尿病をもつ人(PWD)、PWDをケアする人、取り巻く環境や社会、それらの人たちのこころと行動に焦点をあて学ぶ」日本糖 尿病医療学学会の講演も来年岡山(JDS68)で参加してみたいです。

糖尿(「ダイアベティス」が新たな病名)、療養指導(「治療支援」が適切)血糖コントロール(「血糖マネジメント」)などの医療用語がステ ィグマに繋がると断片的な知識はありましたが今回の講演により科学的に全体像をつかむきっかけになりました。
最初、ラベリング理論による逸脱者がネガティブなステレオタイプに従った行動を社会は期待、ラベルを貼られて逸脱者は社会の期待する ようにふるまうとはどういう意味かと難解でしたがが、セルフスティグマとは何か知り理解できました。社会的スティグマ(経験、認識) から個人の内面(考えや感情)に転換されたセルフスティグマ(スティグマの内在化:自分が自分をどうみるか)(2)になるのが特に問題 のようです。具体的に正社員は無理、結婚は無理、糖尿病のない人と付き合うのは無理と考える人の例が挙げられました。「世間はこう考 えている」ではなく「自分はそうである」と思い始めるのが問題ということです。自己管理、精神状態にも悪影響が出るそうです。
おおはしクリニック PWDは医師に言えないことがあり看護師の役割を演者は強調されていました。この領域で医師は看護師、栄養士他コメディカルスタッフと つくるチームの一員です。DAWN2研究によるとPWDの19%が差別(スティグマのエンドポイント)を受け、差別の発生源は33%が医療関係 者から22%が家族からと言われています。
医療者は差別の一種であるマイクロアグレッション、即ち意図しない否定的な言動や態度を厳に慎むよう注意喚起されました。

JDS67抄録を今読み返してみると最適な治療法の提案は医学的知識により可能だが、PWDがどう受け止めるのかを理解し、またPWDに提案の内 容を理解して実践してもらう能力を身につけ、それを向上させるのは医療学の修練が必要である、医療学的介入法の効果の検証と普及(医師の 名人芸に留まらない医療学の体系化)は大変困難であり日本糖尿病医療学学会に課せられた使命であると書かれていました。
おおはしクリニック スティグマの段階(最近は予期anticipatedスティグマという段階も提唱されているそうです(1))を見分けることが重要で段階に応じたスキルを 支援する方法が盛んに研究されているそうです。


参考文献
  1. Speight J, Kato Aら: 糖尿病スティグマと差別に終止符を:エビデンスとリコメンデーションに対する国際合意声明. Lancet Diabetes Endocrinol 12: 61-82, 2024
  2. 石井 均: 2型糖尿病のスティグマ-心理社会的視点から. 糖尿病 66(4): 237-239, 2023
2024年10月


>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ