今月の糖尿病ニュース

2023年4月の糖尿病ニュース

1型糖尿病の上肢病変

おおはしクリニック 糖尿病クリニックでは下肢のみならず肩と手の痛み・運動障害(上肢病変UEI)に悩む人が大変多いと感じます。内科医は直接治療に関わることは少なく鎮痛剤処方程度ですが、初歩的な鑑別診断(糖尿病性神経障害、脳血管障害、頚椎症ではないかとよく質問されます)、整形外科で行われる関節内または局所ステロイド注射後の血糖管理に関わる機会はしばしばあり、その割に情報が少ない為Diabetes Care オンライン版文献(1)を読んでみました。
デンマークの国家規模横断対照研究で2245名の1型糖尿病と841名の対照で比較が行われました。凍結肩(難治性の五十肩)のオッズ比は3.5、手根管症候群は同3.5、デュプイトラン拘縮は同4.3、ばね指(腱鞘炎)は同5.0でした。1型糖尿病では複数の障害を合併しやすいこともわかりました。糖尿病罹病期間はすべてと、年齢はデュプイトラン拘縮と、HbA1cはデュプイトラン拘縮とばね指と、BMIは手根管症候群と、女性はデュプイトラン拘縮以外(対男性オッズ比ばね指2.46、手根管症候群2.32)と有意な相関がありました。また大血管障害既往歴のある人は約3倍、細小血管障害既往歴のある人は1.8倍いずれかの障害を持つと診断されていますが足切断の有無とは無関係でした。

おおはしクリニック この研究では2型糖尿病が対照群に含まれていますが、UEIとの関連は認められなかったそうです(データ非表示のため詳細不明)。しかし総説をいくつか調べると糖尿病全体で凍結肩罹患率は10~35%、筋骨格症状を訴える割合は非糖尿病の約2倍(2)、糖尿病では非糖尿病と比べ手の障害は明らかに有病率が高い(3)、凍結肩は1型よりも2型に有意に多い(2)など2型でもUEI合併は多いようです。
糖尿病がUEIのリスクファクターだとしたらHbA1c、罹病期間、肥満、運動不足、インスリン抵抗性、脂質異常、酸素供給状態などその要因も調べられていますが確定するまでには至っていません(2)。
関節内または局所ステロイド注射後の血糖上昇については平均で125から320以上になるものの概ね1~5日で回復するので安全かつ痛みの軽減等を考えれば十分価値があり問題なしと(4)としていますが、血糖測定のタイミングは不明のものが多く注射前の血糖コントロール不良者のデータが少ない為、筆者の案として(注射前?食前?)血糖250以上は注意した方がよいとしています。なお腱鞘炎治療においてHbA1が8%以上の場合、ステロイド注入の成績が有意に劣るとも書かれています(3)。

おおはしクリニック

参考文献
  1. Wagner Sら:1型糖尿病の上肢障害:全国対照研究からの結果. Diabetes Care 46(6): 1-5, (0nline) March31, 2023
  2. Struyf Fら:糖尿病患者における肩障害の原因:文献レビュー. Int. J. Environ. Res. Public Health 2022, 19, 6228
  3. 亀山 真:糖尿病患者の手病変. DITN371号:P8, 2009年12月5日発行
  4. Waterbrook ALら:糖尿病患者における筋骨格局所ステロイド注射後の血糖レベル:臨床レビュー. Sports Health 9(4): 372-374, Jul-Aug, 2017
2023年4月


>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ