今月の糖尿病ニュース

2021年12月の糖尿病ニュース

経験から学ぶ

おおはしクリニック今月は看護師長音喜多が担当します。9月に第26回日本糖尿病教育・看護学会学術集会がWEB開催され参加したので、講演内容をもとに1年を振り返ってみました。

学会テーマ「すべての経験に意味がある、伝え、伝わる成長の和」は2018年時点で決められていたそうで、教育講演「経験から如何に学ぶか?」ではコルブの経験学習が紹介されました。具体的経験をし、振り返り、教訓を引き出し次の状況に応用するというモデルです。壁にぶつかっても吸収し、妥協せず、人のせいにせず、自責ストイックにならず、信念、ビジョン、挑戦する力を持ち、無私の精神で、このままじゃ終わらないと向上心を持つ。人に対して煮つまった時は背中を押してあげる、やりがいを感じ楽しくなるよう承認する、ぶれない、時には100%叱る。正論でやや窮屈ですが、朝に前日の事を5分でもリフレクションしてここがまずかったとプロセスを共観し、成功体験もどうして可能になったか振り返り、行動計画を探すきっかけにしようと反省とともに気持ちを新たにしました。これらすべてが自分自身、スタッフ、患者さんの成長を後押しすると思います。

著書(1)も読みましたが学習スタイルは9つのタイプがあり他者のスタイルを知る事が仕事のみならず人生にも役立つというのは面白かったです。学生時代の成績良否は頭脳の良し悪しでなく学習タイプによって決まるそうです。自分のタイプ、好きな他人のタイプ、嫌いなタイプは9つのうちどれかを見極め固執することなく柔軟に取り入れていくことが経験学習には必要なことかと私は理解しました。

おおはしクリニック会長(新良啓子先生)講演「経験にありがとう」では二足の草履の履きながら糖尿病看護をはじめた経緯を話されました。きっかけは偶然でも「できないというのは、地球の反対側の奥の奥まで、隅から隅まで探しても見つからなかった時だけ使う」、「できないかもしれないではなく、できるかもしれないから探そう」と経験をポジティブに考えること、
コロナパンデミックについても行動制限と緊張の中、一般業務と両立するため生活編みなおしを確立していくことが良い経験だとし、これこそ糖尿病看護に通じる道であるとも言われました。最後にコロナの経験から患者さんが学び、ともに考えた事例をいくつか紹介します。
45歳時に糖尿病と頸動脈狭窄も同時に見つかり、現在混合製剤インスリン2回打ちの80歳男性:コロナの前は朝、昼散歩を1.5~2万歩、また孫のソフトボールの練習、試合観戦などしていたが自粛生活で家でのストレッチ程度の運動で血糖コントロールは悪化し、リブレで食後高血糖に「何か考えなあかん」と。7秒スクワット、膝抱え運動、足挙上ストレッチなど自分なりに考え、高血糖是正に運動を強化、また散歩も再開しました。
最近は昼食後血糖スパイクにドレッシングがかかわっていると解析し、「色々試しているねん」と気づきの概念から行動変容に繋がりました。「まだまだこれから」と意気揚々と血糖コントロールに闘志を燃やす姿に感動しています。
おおはしクリニック働き盛りの40歳男性:コロナ以前は終業後22時過ぎに行きつけの店で夕食を食べていましたが、お店が休業になりコンビニ食ですが21時頃食べるようになりA1cが下がりました。気持ちが前向きになったところへもう一つ、ざるそばとおにぎりなどダブル炭水化物のパターンを避けサンドイッチかサラダで野菜をとるよう提案したところ意識して摂取されるようになりA1cはさらに下がりました。食事時間と野菜は大事なのだなと経験から学ばれました。夕食後3時間空けてから入眠する為体重も減りベルトが楽になりました。来年の目標はA1c6.5%、体重2kg減だとおっしゃっています。 他にテレワークで空いた時間に散歩する習慣ができたという人もおられました。
コロナ禍では経済的な問題も多いと感じます。クリニックで出来ることは限られていますが医師は通院間隔、検査間隔や処方内容を工面し、看護師は管理栄養士と共に安あがりで簡単な美味しい好みにあう時短料理などを患者さんと話し合っています。

参考文献
  1. デイヴィッド・コルブ(著)ケイ・ピーターソン(著)中野眞由美(訳): 最強の経験学習. 辰巳出版 2018
2021年12月

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