今月の糖尿病ニュース

2021年7月の糖尿病ニュース

若年発症糖尿病 果糖 ADA2021より

おおはしクリニックわが国においても若年発症2型糖尿病(Y2D)は珍しくなく合併症リスクが高く予後不良とされます。先日の日本糖尿病学会(JDS2021)でもY2D(40才以下発症)が蛋白尿の独立危険因子という発表がありました(斎藤悠ら、MedicalTribuneウェブサイトより)。肥満との関連(内潟安子ら2004KAKEN)、治療中断対策の重要性も報告されています(菊池信行らJDS2004)。糖尿病ネットワークの糖尿病セミナーシリーズNo33「小児2型糖尿病(2014年版)」にはインスリン抵抗性が強いことが、小児慢性特定疾病情報センターウェブサイト(2014年10月最終更新)には診断時70~80%に肥満合併、18才未満で多剤併用への移行する例も稀ではなく30%でインスリン治療開始となることから「2型は1型に比べ軽症と思われがちだが長期的には決してそうではない」と記載されています。
上記現況を背景に2019年10月承認された四谷メディカルキューブ・順天堂大学の共同研究のプロトコールがウェブ上に公開されていました。
対象は診断時40才以下の軽中等度肥満(BMI27.5~34.9?)2型糖尿病で目的は内科治療と外科治療を比較して日本独自の診療ガイドライン作成のエビデンスをつくることとしています。

6月25~29日にアメリカ糖尿病学会学術会議(ADA)がWeb開催されました。
Outstanding scientific achievement lectureはKristen J Nadeau先生の Unique Cardiometabolic Mechanisms and Consequences of Youth-Onset Type1 and Type2 Diabetesでした。

おおはしクリニック今年3月以降二次性徴(男女差も含め)、糖負荷試験パターン、グルカゴンとの関係、インスリンクリアランスなどの面から高リスク者同定に関する論文が立て続けに発表されているようです。今後はGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害剤介入も予定されているようです。外科手術の有効性は2019年すでに発表されていますが現在は最適な術式とメカニズムについて研究が進められています。RISE研究前である2010年前後の研究履歴も紹介されクランプ法による筋肝脂肪組織別インスリン抵抗性評価、若年肥満1型糖尿病のインスリン抵抗性(2型と違ってメタボリック症候群の特徴がない)、インスリン抵抗性に対するロシグリタゾン(ピオグリタゾン類似薬)無効などの話でした。(以上7月前半記載)

おおはしクリニック本日は7月23日(祝日)です。アメリカ糖尿病学会(バーチャル)に参加登録したものの今年はまだライブはおろかアーカイブもほとんど受講できていません。幸い9月まで期限があるのでウェブサイト開いてみました。まず2日目(6月26日)ハイライトから時間制限食(1日8~10時間の間に食事時間を制限)の研究の現況です。よいデータも出ているそうですがリコメンデーションに至るには研究の積み重ねが必要とのことです。本日詳細は省きますが心駆出率低下のない心不全(HFpEF)に関して臨床研究DELIVER、EMPEROR-Preservedも交えてお話があり勉強になりました。セマグルタイド高用量は肥満治療に有望視されるものの2型糖尿病では有効率がおちること、個人差が大きいことも述べられていました。
次にあらかじめマークしていた演題も聴いて見たところ大層インパクトがありました。果糖のシンポジウムです。果糖の取りすぎは脂肪肝になることはよく知られていますが、少量はよい、果物はよいがジュースの形はよくない、理由がよくわかりました。腸です。腸で処理しきれない果糖が肝臓に行き悪さ(脂肪合成)をすると基礎実験データから説明されました。腸のKHKという酵素は腸に一気に果糖が流れ込むとだめでオレンジジュースとみかんの違いについてスライドがありました。また腸内果糖による高脂肪食類似のバリア機能破壊作用データも提示されました。これらの論文は意外にも2020年とつい最近発表されたようです。ところで果糖はなぜ(脂肪肝以外)代謝疾患をおこすのか?最後の演者はChREBPから説明されました。未発表データが次々に出てきて早口なので十分理解できませんでしたが肝糖新生に関する酵素G6P調節に関与すること、個人差はChREBPの遺伝子多型から生じることが最後に述べられました。

2021年7月

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