今月の糖尿病ニュース

2019年10月の糖尿病ニュース

糖尿病合併高血圧の早期治療

この糖尿病ニュースも10周年を迎え今回第121回目になりました。 今後も院長またはスタッフが糖尿病に関する文献、学会情報を中心に最も印象に残ったニュースを日々の臨床に結びつけて考えていく場所にしたいと考えています。

おおはしクリニック今月は糖尿病関連セミナーに2回出席し偶然にも共にUKPDSデータなどから、心血管疾患予防には早期から血糖コントロールをしっかりすること(年齢・心血管リスクの上昇するにつれ心腎保護など薬剤の特性を生かした治療も重要)が大切だと強調されました。

しかし心血管疾患予防には血糖のみならず血圧コントロールが重要なことは言うまでもありません。そこで関連文献(1)を読み高血圧治療ガイドライン2019、最近公表された糖尿病診療ガイドライン2019と対比してみました。

対象は全国在郷軍人局病院に2003~2007年の間2度以上外来血圧140/90以上確認され2003~2007年に薬剤開始された43986名(男性97%)です。平均年令62才、BMI31.8で 追跡期間は9.3年と他の研究より長いのが特徴です。治療前血圧は130台32%、140以上68%でした。既往歴は心血管疾患22.3%癌20.5%、精神疾患15.3%でした。
薬剤治療を開始する直前の血圧レベルが主検討目的でありユニークな点です。ちなみにガイドラインによって異なりACC/AHAでは130以上、ADAでは140以上です。
第二の目的は薬剤開始後2年目血圧の検討です。指摘血圧レベルはどこか100~119、120~129、130~139、140~159の4群比較が行われました。 100未満または160以上は過去の臨床試験に習い特殊な集団と考えられるため除外されました。
アウトカムは最初の動脈硬化性心血管疾患(脳梗塞・心筋梗塞)発症です。一度発症すると通常治療強化されるためです。

結果です。
開始時血圧が140以上あると130台に比較して心血管疾患発症率(アウトカム)相対危険度は1.10倍でした。心血管疾患死亡率は1.25倍、総死亡率は1.15倍でした。
同じ開始血圧群では達成血圧は高いほどアウトカムは高くなる傾向で、特に達成血圧140~159では開始時血圧の如何にかかわらず開始時血圧130台、達成血圧120台(Ref=レファレンス)に比し有意に高くなりました。
心血管疾患死亡率、総死亡率では理由は不明ですが達成血圧120台よりも100~119で高くなる傾向でした。
心血管疾患死亡率は開始時血圧140以上かつ達成血圧140~159でRefに比し有意に高くなりました。
以上より130台で治療開始するのが有利であることがわかりました。 
考察として在郷軍人局病院に限った成績であること、観察研究なので因果関係は不明であること、血圧測定が病院におけるルーチン法のみであること、初回治療者のみが対象なこと、脳卒中イベントが少なく降圧メリットを示しにくかったことなどが挙げられています。

おおはしクリニック
高血圧治療ガイドライン2019、糖尿病診療ガイドライン2019によると糖尿病があれば脳心血管病高リスク群に該当し、血圧140/90以上あれば生活習慣修正と同時に降圧薬を開始、130台/80台の場合は1ヶ月間生活習慣修正の効果をみても130/80以上ならば降圧薬を開始するとしています。目標血圧値は130/80未満ですが、75才以上の高齢者、動脈硬化の進行例(頸動脈、脳主幹動脈、冠動脈、末梢動脈)、尿蛋白陰性CKD患者は140/90未満としています(2)。

血圧も血糖同様治療の遅れが無いよう努めるべきこと、非高齢者および動脈硬化の明らかでない人には積極的に降圧治療を進めることが重要と思われました。

参考文献
  1. Raghavan Sら: 糖尿病合併兵役経験者における早期血圧コントロールと心血管疾患罹患率の関係. Diabetes Care 42: 1995-2003, October 2019
  2. 西尾善彦: Q&A 高血圧ガイドライン2019と2014年版の違いは? DITN第485号, 2019年10月5日発行
2019年10月

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