今月の糖尿病ニュース

2019年6月の糖尿病ニュース

第79回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会参加報告

おおはしクリニック今年のアメリカ糖尿病学会は6月7日よりサンフランシスコで開催されました。
今年から学会デイリーニュース(新聞)が廃止されたので替わりに始まったADA TVをホテルの部屋で見ました(プロバスケNBAファイナルも見ましたが)。 DeFronzo先生が2回登場され気持ちが引き締まりました。
臨床医としては基礎医学系、とくにPhDの発表内容は敷居が高いですが最終日聴いたFGF21については是非総説から勉強してみたいと思いました。

しかし今回は何と言っても大規模臨床研究の発表が楽しみでした。
その筆頭はCAROLINA試験でDPP4阻害剤(トラゼンタ)は低血糖の少なさから安全性が確認されましたが私はSU剤の面から注目していました。SU剤と心血管有害事象は1960年代のUDGP試験から論争が続いたが、今回50 年の呪いは解けたと独立コメンテーターとしてMC Riddle先生は発言されたと思います。トラゼンタは先の試験で心血管有害事象を増やさないことがわかっていてそのトラゼンタと差がなかったからという理由です。
意外にもHbA1c低下効果の持続性に両者有意差なく、開始1年以内のシャープな効きと経済性から今後もSU剤は存在価値があるとも言われました。

おおはしクリニック
TODAY・RISE研究は若者(12~19才)の2型糖尿病研究で、IGT(境界型)または初期糖尿病患者のインスリン抵抗性とβ細胞の急速な(年20~35%! Diabetes オンライン版6月9日付)機能低下について、経時的に複数回の高血糖クランプ法等を用いて正確に病態生理解明に挑んだ研究で、昨年より注目していましたが今年は対照となる成人の服薬介入(インスリングラルギンまたはメトホルミン)結果が発表され若者データと比較が行われました。既報とやや異なり成人においても1年間のインスリン(1回打ち。既報はポンプまたは強化療法)療法では、服薬中達成できたβ細胞機能改善も服薬中止3ヶ月後にはその効果は消失しました(メトホルミン介入も同様)。若者では予想通り成人より不良な経過をたどることが確認されました。関連の口演・ポスターセッションもきっちり開かれ人種差、性発達の影響、脂肪肝/肝のインスリンクリアランスの関与などが議論されました。メタボロミクスのクラスター分析の発表もありBCAAやカルニチン関連の単語があがっていました。アメリカ糖尿病学会は2016年9月に若者(Youth-Onset)2型糖尿病のコンセンサスリポートをDiabetes Care誌に掲載しているので読んでみると社会的経済的問題、絶対患者数の少なさ、研究対象患者募集の難しさなどこの方面の研究困難さがよく書かれていました。
日本人にどこまで関係するかわかりませんが、20才代発症の患者さんで早期にインスリン治療を余議される患者さんにはしばしば出合うため、人ごとでもないような気がします。

おおはしクリニックREWIND試験は週1回GLP-1デュラグルチドの大規模臨床試験です。被験者に心血管疾患罹患既往者が少ないため5年以上かけて行われました。被検者平均A1c7.3%でした。日本人データはなく(韓国・台湾はエントリー)用量が日本で使われる2倍の1.5mgのため日本では大きく公開はされない予定ですが、他のGLP-1受容体作動薬同様安全性に問題はないようでした。 脳卒中、アジア、網膜症、A1c改善効果持続性などのデータが注目されましたが参考程度に考えるべきなのでしょうか。

2019年6月

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