今月の糖尿病ニュース

2019年2月の糖尿病ニュース

高齢者糖尿病・認知症と社会活動

おおはしクリニック2月16日第7回寝屋川糖尿病ケアフォーラムが大阪中之島で開かれ国立長寿医療研究センター もの忘れセンター長、櫻井 孝先生の講演を聴く機会がありました。高齢者の血糖コントロール目標設定のためのカテゴリー分類は2016年日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会により作られ認知機能やADLなどによって3つに分類されますが、認知・生活機能質問票DASC-8(日本老年医学会ホームページに公開)によってもカテゴリー分類は可能で、カテゴリーIIへの介入(運動療法など)が重要であると強調されました。

カテゴリーIIは軽度認知障害(MCI)~軽度の認知症、手段的ADL低下がありDASC-8得点11~16点の群です。
カテゴリーIIは広義のフレイル(=ストレスにより要介護や死亡をきたしやすい状態。荒木 厚先生講演抄録より)でもありますが、これらの人を主な対象とした短期集中通所型サービスの実証事業をわが寝屋川市が近年行っていることを同フォーラムで市福祉部高齢介護室室長が紹介されました。ケアマネージメントとリハビリが連動し社会参加へのつなぎとして文字通り「卒業」を目指す事業で、気になる医療経済面での効果も調査中とのことでした。
「もとの生活を取り戻しましょう」を合言葉に20%が「卒業」できたそうです。

おおはしクリニックそんな中今月号のDiabetesCare誌に3000名以上、9年経過したスウェーデンの前向き(コホート)研究SNAC-Kの解析結果が掲載されました(1)。
健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)によると認知症の予防は第一に運動、第二に食事、第三に社会的な活動が重要で、すでに国立長寿医療研究センターから10000名以上、9年以上追跡した研究より社会的つながり(配偶者、同居家族、友人、地域のグループ活動、就労)が多いほど最大46%認知症発症リスクが減少するという論文(Saito Tら; J Epidemiol Community Health 2018; 72:7-12)も出ていますが、糖尿病自体の認知症発症リスク(久山町研究のアルツハイマー型認知症2.1倍など)をどれだけ精神的、社会的、身体的娯楽活動や社会的繋がりにより打ち消せるか検討されました。
糖尿病があっても読書、カードゲーム、楽器演奏、音楽鑑賞、インターネットまたはコンピューターゲーム、絵画、造形の中から2個以上、スポーツ観戦、映画・演劇・コンサート、博物館・美術館、レストラン・酒場、ビンゴ(?)、ダンス、教会、旅行、ボランティア、勉強サークル・講習会の中から1個以上、ウォーキング、ジョギング、自転車、ジム、ゴルフ、園芸、ハイキング、きのこ採り、狩り、釣り、日曜大工、自動車修理を週一回以上を行い、かつ配偶者・家族・友人・隣人との接触をもち物質的・精神的な援助を受けられる人は認知症リスクは有意に低下し(HR1.93/5.56=34%)、活動レベルの落ちる非糖尿病者に近い(HR1.93/1.63=112%)リスクまで下がることがわかりました。しかし同等の活動レベルをもつ非糖尿病者と比較すると1.93倍でした。

おおはしクリニック糖尿病でない人は社会的繋がりがなくても認知症のリスクは1.6倍程度であるのに対し糖尿病の人では2.9倍にも上がる理由は何か?今回の研究では糖尿病の診断は1回のHbA1cで判定されHbA1cの高低は評価していないと思われ、例えばHbA1c高値の人は社会的活動が低くなり認知症が進んだ可能性などないか?(私のデータ読み落とし、または既報の知識不足かもしれません) いずれにしても4糖尿病の高齢者に対して社会活動を促す必要性を強く感じました。



参考文献
  1. Marseglia Aら:精神的、社会的、身体的娯楽活動に参加することと豊富な社会的繋がりを持つことはスウェーデンの高齢者コホートによると糖尿病関連認知症発症を減らす.Diabetes Care 42: 232-239, February 2019
2019年2月

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