2018年7月の糖尿病ニュース
持続血糖モニター(CGM)トレンド矢印の見方
今月21日猛暑のなか第13回北河内糖尿病療養指導セミナーが枚方市関西医科大学付属病院にて開かれました。当クリニックも音喜多看護師長が「FGM(リブレ)著効例の背景について」演題発表しました。
当クリニックFGM経験者91名においても既報同様インスリン強化療法中かつ血糖チェック(スキャン)回数の多い人には効果が高いことがわかりましたが、その際血糖変化(トレンド)対応は重要なポイントです。
そこで先月少し触れたEndocrine Society(米国内分泌学会)によるCGM血糖トレンド関連文献(1)を読んでみました。
あくまでDexcom G5 CGM(以下G5) システム使用時限定ですが、既存のDirecNet、Scheiner、Pettus/EdelmanによるrtCGM(他機種含)使用法との整合性が検証されており簡便性にすぐれているので、リブレ使用時にも十分参照できる内容です。
① 最初の注意として以下の点が挙げられています。
矢印対応はいわば上級編であり、食事や運動に対する体の反応を習得してから取り組むべきである。。
個々の症例で修正調整が必要である。
アセトアミノフェン内服中は高く表示される。
② つぎに矢印の説明です。
G5の矢印は以下7通りです。
↑↑=2UP:血糖上昇速度>3mg/dl/分、↑=1UP:同2~3 mg/dl/分、 ↗=AngleUP:同1~2 mg/dl/分、 →=横ばい:±1mg/dl/分以内、 ↘=AngleDOWN:血糖下降速度1~2mg/dl/分、 ↓=1DOWN: 同2~3mg/dl/分、 ↓↓=2DOWN :同<3mg/dl/分
因みにリブレの矢印は以下5通りです。
2UP、2DOWNなし、1UP:血糖上昇速度>2mg/dl/分、1DOWN<血糖下降速度2mg/dl/分、その他G5と同じ。
③ 食前及び食後4時間以上の際インスリン調整法です。矢印方向のみでインスリン単位調節を行います。例えば食前に行う場合、炭水化物量+目標血糖への修正分+矢印の修正分によりインスリン注射量は決まります。インスリン感受性も考慮するためCF(コレクションファクター)値別になっています。
CF75以上(インスリン感受性良好):±0.5~1.5単位(矢印1段階0.5刻み)、CF50~75:±1・±1.5・±2.5単位(矢印1段階0.5~1.0刻み)、CF25~50:±1.5~3.5単位(矢印1段階1.0刻み)、CF25未満(インスリン抵抗性):±2.5~4.5単位(矢印1段階1.0刻み)
0.5単位調節になっているのが特記事項です。
フライルまたは高齢者では増量時50%減、減量時50%以上増が安全であることも追加されています。
④ 食後4時間以内は血糖トレンドに多数の因子が絡むので上記とは別のレジメを考える必要があります。食後2時間以内はREPLACE-BG研究よりトレンド矢印に基づく調整は控えるべきとされています。インスリン打ち忘れ、カーボカウント計算ミス時には、注射予定時刻からできるだけ2時間以内に食前血糖とカーボカウントから計算されるインスリン量または不足分を打ちます。低血糖時ブドウ糖補給し過ぎた場合にもトレンド矢印に基づく調整は避けます。つまりこれらの場合矢印は失敗に気づくきっかけとして有用ではあるがインスリン量決定には関与しません。その他個々の特殊な状況では主治医他医療スタッフと相談してきめます。
⑤ 食後2~4時間高血糖の場合以下のようにインスリン量調節を行います。
血糖150~250かつ矢印1~2UP:CFを用いてインスリン追加してもよいが2時間血糖に注意しその間さらなる追加はしない、
>250かつ矢印1~2UP:CFを用いてインスリン追加し1時間後まだ2UPなら同様の処置を繰り返す
⑥ 食後2~4時間低血糖予想される場合以下のようにインスリン量調節を行います。
血糖150近辺かつ↘:30分後血糖確認、
血糖150近辺かつ1~2DOWN:15分後に血糖確認、
血糖100近辺かつ↘~1DOWN:ブドウ糖15g摂取して20分後血糖確認<70かつ矢印下向きならブドウ糖15g再摂取、
血糖100近辺かつ2DOWN:ブドウ糖30gにて同様処置。
⑤⑥とも血糖>250または<70の場合、指穿刺による血糖確認をすること、⑤では残存インスリンを考慮して投与インスリンを計算上の半分にすることが一般的に推奨されています。
このほかケーススタディー8例もわかりやすく書かれています。
参考文献
- Aleppo Gら:成人糖尿病治療におけるDexcom G5 CGMシステム上血糖トレンド矢印対応への実用的アプローチ. Journal of the Endocrine Society 1: 1445-1460, December 2017
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