今月の糖尿病ニュース

2018年5月の糖尿病ニュース

第61回日本糖尿病学会年次学術集会参加報告

今年の糖尿病学会は東京で開催されました。1997年オープン当時利便性、収容人数、建物の威容さ美しさから圧倒された東京国際フォーラムですが、年々巨大化する糖尿病学会を前にやや窮屈さを感じたのは私だけでしょうか。ともあれ丸二日間迷路のような会場をよく移動しました。以下「私の」参加報告です。

#FGM(フリースタイルリブレ)について;予想通り注目を集め、演題数は数えていませんが100を越えたのではないでしょうか。
まず精度について多くの発表がありました。主としてMARDという指標で評価され、概ね従来のCGMと同等で臨床上問題はありませんが初日および11~14日目にやや精度が落ちる可能性が指摘されています。MARDが大きい場合背景因子は何か?高低血糖域の他、被験者体質の可能性もありますが現時点では不明です。リブレは従来のSMBGを代替するもの、補完するものと国により立場は異なりますが、より患者さんが安心してかつ楽に使用できるよう研究を進めて行かねばなりません。
血糖コントロール効果もポジティブな結果が多く報告されました。糖尿病自己管理の動機付けの難しさは「見えない」ことが大きな要因といわれ、リブレによる「見える化」によるメリットが強調されました。従って自分でスキャンする回数が多いほど(血糖値と生活行動や薬剤効果との結びつきが理解され)効果が高くなるというデータも紹介されました。
Abbott社の共催セミナーは南昌江内科クリニック糖尿病臨床研究センター・前田泰孝先生が講演されました。すべての測定値をAGPと呼ばれる5本の日内変動曲線(中央値、25・75%タイル、10・90%タイル)にまとめそのパターンをクラスター分析したところ①正常範囲に収まるもの②高値が続くもの③夜間低いもの④夜間高いもの4つに分類され、③は神経障害を④は腎症を合併しやすいことがわかったそうです。リブレの指導マニュアル化も検討中だそうですが今のところ特別な方法はなく個別の療養指導を行っているそうです。

スタッフは(FGM以前CGM時代から言われていることと思いますが)炭水化物過剰、脂質過剰、食後インスリン追加打ちパターン、食事が不規則な人のパターン、薬剤効果など基本はしっかり押さえ的確なアドバイスが出来るよう努めねばなりません。やや難しい解析要因としてインスリン抗体が注目されました。前田先生の講演、インスリン療法・1型糖尿病の一般口演で症例や統計が紹介されました。 またA1cとeA1cの乖離も話題です。前田先生は貧血など確立した因子以外にGPT値(脂肪肝)の関与も示唆するデータを提示されました。 その他夜間血糖がわかる影響からか、基礎インスリンが減り追加インスリンが増えたという報告が目立ちました。1型糖尿病患者がマラソンをする際も有用で基礎インスリンを減らしすぎない、糖質を十分に摂ることがケトン体上昇予防になることが強調されました。リブレとリブレプロを比較した研究は私の調べた限りは1題のみで、抄録には2型で高血糖を知るストレスが心配な人にはプロがよいのではとありました。

#SGLT2阻害剤について; Ferrannini先生から、毎日70gのブドウ糖が排出されることから想定される体重減少と実際との乖離についてメカニズム、利尿剤と併用する際の基礎的検討(昨年SGLT2投与下における急性期・慢性期の腎Na、グルコース、乳酸、ケトン体、クレアチニンクリアランスの詳細なデータを論文化されていますが同様の検討でしょうか)や、GLP-1製剤との併用によるケトン体生成減少が心血管系保護に及ぼす影響などが問題提起されました。

#SU剤について;シンポジウムで信州大学駒津先生の講演を聴きました。低用量のSU剤は低血糖を起こしにくく血糖依存性にインスリン分泌適正化を起こすことをRRPの制御から説明し、DPP4阻害剤との併用で各々単独よりもCGM上良好な血糖コントロールが達成されることを示されました。また先月このニュースでもとりあげた論文(糖尿病の5つの分類)を紹介し日本人ではグループ2(SIDD)が多くSU剤が適するのではと述べられました。

#無自覚性低血糖;特別講演でFrier先生が認知機能障害や細小および大血管合併症との関連を述べられました。一度の低血糖の影響は1週間続くこともあるそうです。

その他専門医教育講演から以下のメッセージを受け取りました。
#カーボカウントについて;基礎カーボカウント理解させずに応用カーボカウントを紹介してはいけない! #妊娠と糖尿病について;リブレが妊婦にも適応になった、糖尿病合併妊娠は妊娠前の管理が重要で目標A1cが7%未満から6.5%未満へとより厳しくなった、妊娠糖尿病は妊娠後のフォローが大切、
#精神疾患と糖尿病;統合失調症の患者さんはメタボリック症候群の有病率が高いこと、心血管疾患による死亡率が一般の約2倍であること、平均寿命は約15年短いことより様々な研究を進め、患者啓蒙Webサイト「メタラボ」を立ち上げた。

他にもまだありますが別の機会にまとめてみようと思います。

2018年5月

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