今月の糖尿病ニュース

2017年12月の糖尿病ニュース

糖尿病臨床の転換点:CGM(持続血糖測定)

おおはしクリニック当クリニック診療において今年最大の出来事と言えばCGM導入です。今月のDiabetes Care誌CGM特集(1)~(4)のタイトルにはbeyond HbA1c (HbA1cを越えて)という表現が使われていますが、確かにHbA1cが良好な例にもCGMでは驚くような結果を見ることがあります。
私たちの使用しているリブレはIs (intermittently scanned) CGM、またはi(intermittently  viewed)CGMと呼ばれており、既存のリアルタイムCGMより劣る点として8時間に一回はスキャンが必要な点、アラームがない点、優れた点としてSMBGを併用して補正をする作業が不要な点が挙げられています。今後臨床研究などにCGMデータを採用する機会が多くなると予想されるため統一見解確立が急務としています(1)~(4)。そこからの要約です。

臨床適応

インスリン強化療法中でA1cが目標に届かず低血糖のある人が一番の適応だが、非インスリン治療2型にも有効と報告がある。

指 標

目標血糖範囲内時間の割合Time in range (%):A1cより患者間比較しやすい。 PRO(患者自身の訴え 1型糖尿病臨牀評価項目のひとつ)と比例する。 rangeの設定が厳しすぎないよう注意を要する。

低血糖:以下3つのレベルに分類する。
レベル1;血糖値54~69mg/dl 放置すると無自覚性低血糖の原因となりレベル2、3の低血糖リスクが高まる
レベル2;53 mg/dl以下 
レベル3;血糖レベルと無関係に人の助けを要する場合  
(50 mg/dl未満が長時間続くと痙攣・昏睡・死にも繋がるので、人の助けが不要でも49 mg/dl以下を同様の扱いにすべきとCryer PEは今月のDiabetes Careで述べている)
低血糖のレベル1、2の%、時間表示を表示する。
低血糖イベントを15分以上血糖値53以下が続くものと定義し、70以上になった時点で終了とする。2時間以上続くものは遷延性低血糖とする。
高血糖:レベル1;180~250mg/dl
レベル2;251~mg/dl
血糖変動指標:CV  SD IQR MAGE MODD CONGA
血糖変動はCVが主要項目であり36%未満なら安定と考える。

CGMに期待されること

高血糖、低血糖の状態把握
血液検査によるA1c(通常A1c)とCGMの平均血糖から推定されるA1c(eA1c)と比較することにより通常A1cの個人差がわかる。
血糖変動と低血糖が合併症に及ぼす影響解明。
薬剤効果
(長期間の高血糖(高HbA1c)有害作用は確立しているが)短期間の高血糖有害性データ蓄積
低血糖補正タイミング、低血糖レベル1~2の許容時間解明
血糖変動が生活の質に及ぼす影響

注意点

レポートは睡眠時(24→6)、活動時(6→24)、全日にわける。
データが多すぎて混乱する可能性があり助言支援がより重要になる。
スタッフ側からみれば労力が従来以上にいる。
(臨床現場で指導ポイント例;インスリンは高血糖予防より抑える方が多く必要→高血糖になってからでは対処しにくい、低血糖をおこすと12時間インスリン感受性減etc)
CGMからeA1cが計算されるが14日中10日、または70%以上データが取得されていれば有効。
CGMの有効性は装着時間に比例する。 
患者はデータ解釈と対応方法につきトレーニングを受けるべきである。
CGMの精度はMARD(mean absolute relative difference)が指標となり10%以下が目安。
今後小児、妊婦、腎不全、高齢者の目標を設定する必要。

参考文献
  1. Riddle MCら:HbA1cを越えてCGMと血糖測定の成熟-研究と臨床判断の転換点. Diabetes Care 40: 1611-1613, December 2017
  2. Petrie JRら:CGMシステムの臨床的価値と利便性を改善する:問題点と推奨点 EASD/ADA糖尿病テクノロジー作業部会共同声明. Diabetes Care 40: 1614-1622, December 2017
  3. Agiostratidou Gら:HbA1cを越えて臨床的意義をもつ1型糖尿病治療評価基準を標準化する:ADCE、AADE、ADA、内分泌学会、国際JDRF、LM/HBH公益財団、小児内分泌学会、T1D Exchange合意報告. Diabetes Care 40: 1622-1630, December 2017
  4. Danne Tら: CGM使用上の国際合意. Diabetes Care 40: 1631-1640, December 2017
2017年12月

>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ