今月の糖尿病ニュース

2017年10月の糖尿病ニュース

1型糖尿病と心血管疾患

おおはしクリニック 今回糖尿病と心血管疾患の関係について調べる機会があり、特に(インスリン抵抗性の関与が2型より少ないと考えられる)1型糖尿病について考えてみました。 2型に比し患者数が少ない、細小血管障害に比し大血管障害の評価が難しい(若年者ではイベントが少ない、無症候段階ではよいマーカーが少ない等)などの理由でデータは限られていますが、総説(1)からポイントを抜粋します。

1型糖尿病対非糖尿病の相対危険度(RR);心血管疾患男性(M)3.6女性(F)7.6、 虚血性心疾患M3.0 F7.6、脳血管疾患F5.9(Mデータなし)、下肢切断術85.5
血糖コントロールについて;DCCT、EDIC研究より心血管疾患に対する早期からの血糖コントロール有用性は確立している。
おおはしクリニック 肥満、インスリン抵抗性の関与;中心性肥満、2型糖尿病家族歴は心血管疾患リスクになる。脂質異常や冠動脈石灰化にも関与。血糖コントロールに伴う体重増加は心血管疾患リスク軽減の可能性。
脂質異常;血糖コントロールにより改善する。成人ではスタチンを多くの場合勧められるが、未成年では開始時期が不明。
糖尿病性腎疾患;微量アルブミン尿で全死亡RR1.8倍、心血管死RR1.9倍など(2型ではそれぞれ1.9、2.0)。顕性アルブミン尿で心血管死RR8.7~37倍(2型では1.89~5.26)。
おおまかに言うと1型糖尿病の心血管疾患リスクはアルブミン尿に反映される。

糖尿病治療強化によりアルブミン尿累積罹患率は17~25より10%に減ったが末期腎疾患ほど心血管疾患減少にはつながっていない。
GFRの低下はアルブミン尿とは独立した心血管疾患の危険因子である。高血糖はGFR低下をもたらす。 糖尿病性腎疾患の予防には血糖コントロール、治療にはACE阻害剤が重要である。
高血圧:高血糖は高血圧の一因かもしれない。高血糖は心血管疾患に対する影響は長期罹患に伴って減弱するが高血圧は予後規定因子であり続ける。
冠動脈石灰化スコア;血糖コントロールによって改善する

おおはしクリニックGFRの低下は最近の疫学調査(2)でも脳卒中罹患1型糖尿病患者の脳卒中再発または心血管疾患による死亡率増加につながることがわかりました。因みにeGFR60~89でも90以上に比しRRは有意に高値でした。アルブミン尿の寄与はありませんでした。

1型糖尿病において心血管疾患リスク減少のため早期から血糖コントロールが大事であることは確かですが、腎症そのものの影響か?腎症(重症度)は指標に過ぎないのか?腎症は血圧上昇など他のリスクファクター悪化を介して影響するのか?など活発な研究が進められています(1)。
しかし何れにせよ近年1型、2型とも糖尿病患者の心血管疾患予後改善度が非糖尿病者より大きい(絶対数は依然多いが)ことは朗報です(3)。

参考文献
  1. de Ferranti SDら:1型糖尿病と心血管疾患 AHA/ADA学術声明. Circulation 130: 1110-1130, September23 2014
  2. Hagg-Holmberg S ら:脳卒中罹患後1型糖尿病患者の予後と規定因子. Diabetes Care 40: 1394-1400, October 2017
  3. Rawshani A ら:1型および2型糖尿病における死亡率と心血管疾患. N Engl J Med 376: 1407-1418, April13 2017
2017年10月

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