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2017年9月の糖尿病ニュース

SGLT2阻害剤による糖の動き変化

おおはしクリニック
SGLT2阻害剤は心不全、糖尿病性腎症、脂肪肝などへの効果から心臓内科、腎臓内科、消化器内科でも注目を集めていますが、糖の動きについて最近の知見です。

SGLT2阻害剤は当初よりインスリンの働き(分泌能と抵抗性)と無関係に血糖値を下げるため、高血糖が理由で(糖毒性と呼ばれます)他剤無効な場合にも血糖値を下げ他剤の効果を回復させることが期待されています。 実際最近SGLT2阻害剤とDPP4阻害剤を合剤にしたメリットとして糖毒性解除が一因に挙げられています。

おおはしクリニック今回糖尿病前段階でSGLT2阻害剤を投与し糖毒性解除が見られるかどうか検討が行われました。空腹時血糖100~125mg/dlのIFG(空腹時血糖障害)と100mg/dl未満のNGT(正常耐糖能)被検者にエンパグリフロリジン(Emp) 25mgを14日間投与し投与前、投与後2日目、14日目に血糖・尿糖測定、および高血糖クランプ法を用いてインスリン分泌 / インスリン抵抗性インデックスによりβ細胞機能を評価しました(1)。

空腹時血糖値はIFGで110から103mg/dlに低下しましたが、NGTでは95から94 mg/dlとほぼ不変でした。IFGではインスリン分泌増加が見られβ細胞機能が向上しました。インスリン感受性は変化しませんでした。NGTではすべて変化見られませんでした。

Emp投与2日目から尿糖は1日あたりIFGで50g、NGTで45g排出されました。 Emp投与下においてNGT尿糖出現域値(血糖値)は40mg/dl未満で、最大腎糖再吸収能TmGを下回ることが知られていますが(2)、今回も同様の結果でした。
おおはしクリニック興味深いのはNGTで尿糖が45gも排出されたにも関わらず血糖が下がらなかったことです。内因性糖産生の関与が想定されますが今回は測定されていません。グルカゴン値は不変でした。因みに2型糖尿病については内因性糖産生が増加すること、血中グルカゴン濃度上昇がわかっています(3)。もちろん尿糖排出量が内因性糖産生量を上回るため血糖値は下がります。
まだ不明な点もあるなか、腎尿細管における内因性糖産生の調節にSGLT2による糖再吸収が関与している(4)という報告がありました。

参考文献
  1. Abudul-Ghani Mら: エンパグリフロジンによる腎Na-糖共輸送阻害は空腹時血糖障害被検者において空腹時血糖を下げβ細胞機能を改善する. Diabetes 66: 2495-2502, September 2017
  2. DeFronzo RA ら:健康人および2型糖尿病患者においてダパグリフロジンに応答する腎糖再吸収の特徴. Diabetes Care 36: 3169-3176, October 2013
  3. Merovci Aら: ダパグリフロジンは筋インスリン感受性を改善するが内因性糖産生を増加させる. J Clin Invest 124: 509-514, 2014
  4. Sasaki Mら:腎近位尿細管における糖新生のインスリンと糖による二元的調節. Diabetes 66: 2339-2350, September 2017
2017年9月

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