今月の糖尿病ニュース

2017年7月の糖尿病ニュース

第12回北河内糖尿病療養指導セミナー

おおはしクリニックさる7月22日に開かれた北河内糖尿病療養指導セミナーは2006年以来毎年7~8月に開催される糖尿病チーム医療をテーマにした勉強会です。看護師、健康運動指導士、薬剤師によるフットケア、口腔ケア、運動指導、服薬指導などの演題と並んで、当クリニックからは音喜多看護師長が演題「当院通院患者さんの中断に関する検討」を発表しました。 過去の研究で通院中断による合併症の進行、進行しやすい年令・職業、連絡による再診促進効果など明らかになっていますが、当クリニック独自の現状を知り対策を考えるため過去のカルテを追跡しました。以下概略です。

2009年10月に開院後診寮ペースがほぼ一定になり、かつ数年間のフォローが可能な2011年をまず無作為に選択、同年に新患として 受診した患者115名を対象とし6ヶ月以上来院のないものを中断群と定義しました(4~5ヶ月毎通院患者もおられるため。因みに代表的な研究JDOIT2では2ヶ月と区切っています)。
通院継続群は74名、通院中断群は41名で、平均年齢はそれぞれ61と64歳、男女比は29対32と26対15、糖尿病歴は6.7年と8.6年でした。
HbA1cについて初診時と最終外来受診時を比較すると、継続群は平均9.1から7.5%に、中断群は平均9.1から7.3%に低下し両群間に有意な差はみられませんでした。
中断原因は直接本人に確認できなかった為、下図に示す9項目の要因に推定分類しました。

おおはしクリニック9名はHbA1cが改善し来院しなくなった患者さんです。薬剤不要になった結果通院不要と思った人、またもともと7%未満で来院して通院継続についてモチベーションが保てなくなった人もいることでしょう。3名は一旦良くなると中断し1~2年後悪化して再来院するというパターンの患者さんです。以上計12名からは教育の徹底、中断時手紙電話などによる連絡法が課題として浮かびあがりました。

A1cが悪化した、症状が改善しないなど診療の不満が考えられるのは8名でした。処方、療養指導、説明、他科連携方法など再度検討が必要です。インスリン治療を説得したら来院しなくなったのは1例のみでしたが納得いくまでのコミュニケーションが重要と思われます。 約3分の1を占める14名は癌、脳卒中、虚血性心疾患など合併により他医療機関通院がメインとなった患者さんで糖尿病治療は転医先で行っていると思われるものです。 経済的・社会的(通院の交通手段など)の理由は3名でした。その他保険や他の患者さんへの配慮から要求に応えられなかったことに起因するものは2名、転居1名でした。
累積通院率のカプランマイヤー曲線から5年間ほぼ一定の割合約8%で通院中断が発生しましたが、 転居や他科転科では通院を継続しているとみなすと年間中断率は約5%となりました。

今後看護師、管理栄養士による療養指導に中断防止効果があるか、行動ステージ改善が中断防止に寄与するかなど検討課題で、 通院中断を減らし患者さんの予後改善につなげたいと思います。

2017年7月

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