今月の糖尿病ニュース

2016年11月の糖尿病ニュース

身体活動・運動と糖尿病: アメリカ糖尿病学会見解

月間糖尿病ライフさかえ2016年12月号の編集後記に「運動療法の考え方も大分変ってきました・・なかなか浸透しないようです・・レジスタンス運動の有用性を再確認ください」 とありました。今回改定された上記ガイドライン(1)を読むとレジスタンス運動はもちろんのこと柔軟運動・バランス運動および坐位時間短縮効果にも言及し、また個人背景により個別対応可能な内容になっています。そこで要点をまとめてみました。


身体活動とは;エネルギー消費を増やすすべての動き
運動とは;計画、構成された身体活動

運動の種類;有酸素運動、レジスタンス運動、柔軟運動、バランス運動。太極拳やヨガは有酸素運動以外の組み合わせ運動
運動と身体活動の効果;詳細略(過去のニュース等ご参照ください) 

1型糖尿病において有酸素運動の目的は心肺機能向上、インスリン抵抗性解除、脂質レベルと内皮機能の改善だが(血糖コントロール改善効果の記載なし)、有酸素運動の一つ高強度インターバルトレーニング(HIIT)は血糖コントロールを悪化させずに実施できる。1型糖尿病においてレジスタンス運動を有酸素運動の前に行うと低血糖の確率が低くなる。
高齢糖尿病患者で問題になる関節拘縮は柔軟運動で、転倒はレジスタンス運動、バランス運動で改善される。例えば太極拳の集団運動は転倒を28~29%減少させる。
坐位時間短縮の効果と推奨;長時間の坐位は中~高強度の身体活動関与と殆ど無関係に死亡率、罹患率を上昇させる。2型糖尿病または境界型においては血糖コントロール悪化やメタボリック症候群悪化に関連する。20~30分に1回は5分以下の立位、低強度歩行、身体活動が推奨される。

身体活動と2型糖尿病

インスリン作用向上目的;ほとんど動かない人では週400kcalでも有効だが、通常週150分以上の身体活動が推奨される。有酸素運動とレジスタンス運動併用が理想。
若年者では週3回以上、レジスタンス運動を含めて最低1日60分の中~高強度の身体活動が推奨される。

身体活動と1型糖尿病

身体活動とスポーツについて;
18才未満では運動習慣のある人でA1cが低く、週3回以上1回1時間以上、有酸素運動レジスタンス運動両方がよいかもしれない。成人1型では死亡率低下が認められる。血糖コントロールに適した運動の種類、タイミング、強度、長さに関しては十分なデータがない。

身体活動時における食事とインスリンの調節;
空腹時など基礎インスリン下状態では30~60分の運動時は炭水化物10~15g、食後など追加インスリン併存下では1時間あたり炭水化物30~60g補給が必要。追加インスリンを減量する場合、注射後90分以内に開始する運動30分間なら運動強度に応じ25~75%(軽~強)、60分間なら50~75%(軽~中)。基礎インスリンを減量するなら20%の減量。
CGM(持続血糖測定)/CSII(持続皮下インスリン注入)と運動; CSIIは運動中基礎インスリン注入速度調節が可能。しかしインスリン吸収が早まる可能性があり、またコンタクトスポーツには向かない。CGMは低血糖回避に有用だが血糖変動の時間差などが問題になり普通の指先穿刺法を併用する必要。

高強度インターバルトレーニング;
臨床的に安定し少なくとも中等度の運動を定期的にしている人が対象で最初は監視下が望ましい。進行した糖尿病では安全性が未確認。時速9.6キロで25分間走れる人は週75分で通常の有酸素運動150分と同等効果が得られる可能性。

レジスタンス運動;
15回繰り返し可能な運動(徐々に6~8回しか繰り返せない強度へ)を1~3セット(徐々に増)で8~10種類。連日ではない週2~3日(増可)。
高血糖回避;高強度運動は高血糖を招くリスクがあり低強度運動を挟むと軽減される。1型糖尿病ではレジスタンス運動と有酸素運動両方する場合前者を先にしたほうが血糖は安定する。

万歩計とインターネット;
行動変容に用いる。万歩計の目標設定は可能なレベルから。インターネットを利用したプログラムも有用かもしれないが今後の検討が必要。

参考文献
  1. Colberg SRら: 身体活動・運動と糖尿病:アメリカ糖尿病学会見解. Diabetes Care 39: 2065-2079, November 2016
2016年11月

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