今月の糖尿病ニュース

2016年5月の糖尿病ニュース

第59回糖尿病学会年次学術集会参加報告

おおはしクリニック第59回糖尿病学会年次学術集会が5月19日(木)~21日(土)京都で開催されました。
「高齢者の糖尿病治療をどうするか」について日本老年医学会と合同シンポジウムが開かれました。会長特別企画の一つで、理事長声明でも重要性が強調されていました。残念ながら参加はできませんでしたが高齢者糖尿病の血糖コントロール目標に関してはホームページに公開されていたので読み、以下抜粋です。

患者の特徴・健康状態を3群に分け、認知機能正常かつADL正常者(カテゴリーI)の目標は概ね非高齢者と同じですが同じカテゴリーIでもインスリン・SU薬・グリニド薬治療中の人(以下ISGと略)は別に目標が設定されました。65~74才では7.5%未満、75才以上では8.0%未満です。血糖値下限が示されたことが注目され前者では6.5%、後者では7.0%です。ただし低血糖に注意すれば個別の対応も可としています。65才以前から治療中で低値の場合はそれまでの目標維持でもよいがやはり低血糖に対する注意が喚起されています。

認知症を合併する(カテゴリーII、III)群では認知症進行を抑えることのみならず、生活の質(QOL)維持および寿命を確保することも大事(抄録S-10:鈴木亮先生)ですが、低血糖は両者の意味から避けることが重要(同抄録)となり、カテゴリーIIIかつISGでは7.5~8.5%が推奨されています。
なお最終的には合同委員会により診療ガイドラインが出るそうです。

サルコペニアとは筋肉量低下、かつ筋力低下または身体能力低下で定義(抄録S-9:櫻井孝先生)され、フレイルすなわち要介護や死亡をきたしやすい状態(抄録S-10:荒木厚先生)の要因としてクローズアップされていますが、糖尿病患者では3倍なりやすい(同上櫻井先生)と言われています。またサルコペニアかつ体脂肪の多いサルコペニア肥満は、転倒や死亡率が単なるサルコペニアや肥満より悪いことが知られていますが、サルコペニアと同様インスリン抵抗性がひとつの病因に挙げられています(抄録S34:荒木厚先生)。

おおはしクリニック

サルコペニアについては一般演題も多くあり、私は1時間のセッションを聴講しましたが、今後は食事・運動療法面からの演題が増えるのではと感じました。

ちなみに糖尿病性腎症に蛋白制限をすべきか否かのディベートセッションにて、反対の理由のひとつとしてサルコペニアが挙げられていました。

そのほかリリー賞受賞演題「メタボリックシンドロームの病態形成における臓器間神経ネットワークの意義の解明」(宇野健司先生)における、脂肪肝など肝の病態が迷走神経、脳、交感神経を経て高血圧や高中性脂肪血症をもたらす機構、シンポジウム「肝と代謝制御」演題「セレノプロテインPの運動抵抗性における意義と骨格筋型受容体の同定(篁俊成先生)、若手研究奨励賞審査口演「メトホルミンの治療効果を予知する新規バイオマーカーとしてのセレノプロテインPの可能性」(金森 岳広先生)は大変興味深いお話でした。

2016年5月

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