今月の糖尿病ニュース

2016年1月の糖尿病ニュース

心臓自律神経障害

おおはしクリニック

新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。 今月30日寝屋川糖尿病ケアフォーラムにて演題「CVRR(心拍変動)の経時的変化」を音喜多師長が発表予定のため、関連事項の糖尿病性自律神経障害について調べてみました。

まず2015年欧州糖尿病学会では消化管糖尿病性神経障害についてシンポジウムが開かれました(1)。また心臓自律神経障害と糖尿病性網膜症の関係について口演がありました。CVRR法を用いていたことや、昨年7月ニュースでお伝えしたように当クリニックでも両者に関連が見られたことから興味深く拝聴(インターネット配信)しました。

おおはしクリニック

糖尿病自律神経障害については (2)が総説として有名ですが、最近の心臓自律神経障害の文献 (3)もCVRRなど診断法について詳細な解説が役に立ち、またACCORD試験における心血管死と心臓自律神経障害との関連について考察しています。

以下心臓自律神経障害について要点をまとめてみます。 まず心臓自律神経障害は症状が出る前に対策を立てること、即ち早期発見早期治療が強調されています。発見が遅れると起立性低血圧、めまい、ふらふら感、失神、易疲労感、運動時の消耗など生活の質を落とすのみならず、手術時の血圧・脈拍不安定、致死性不整脈・突然死リスク増大に繋がります。糖尿病患者の死亡率は自律神経症状が出てくると3倍にのぼるといわれています。
そのほか心臓自律神経障害患者の症状として頻拍、運動中の低血圧と高血圧、運動中の体温調節障害、夜間交感神経相対的緊張による夜間高血圧、無自覚性心筋梗塞、心筋障害、脳虚血が挙げられています。

早期発見のためにはCVRR法による心拍変動法検査が有用で、1992年その方法により1171名の糖尿病患者から1型で25.3%、2型で34.3%異常が見つかったと報告されています。高血糖以外のリスクファクターは年齢、糖尿病罹患歴、肥満、喫煙等です。 心拍変動負荷方法には深呼吸、起立、バルサルバ手技があります。主として副交感神経機能をみる方法で、交感神経機能をみる方法には起立時収縮期血圧変動、筋等尺性運動時拡張期血圧変動があります。

最近のホルター心電図を使ったタイムドメイン法、周波数ドメイン法による心拍変動法は手技が簡単で詳細な分析が可能ですが24時間かかるのが難点です。ホルターを用いる自律神経検査法には心拍動揺法もあります。 2010年第8回国際糖尿病性神経障害会議をうけて出たトロントコンセンサスパネルによる心臓自律神経障害診断基準によると疑いまたは早期の診断には上記7検査のうち1つを満たせばよく、2~3項目陽性で確実、起立性低血圧のあるものを重症としています。

おおはしクリニック

先日、関西医大健康科学センターに通院中の患者さんから、株式会社クロスウェル製自律神経機能検査「きりつ名人シリーズ」を受けたと、所見用紙を見せてもらう機会がありました。日頃より大変お世話になっている施設で採用されていることに興味を持ち同社のホームページを見たところ検査の解説と共に自律神経症例集、臨牀自律神経機能Forumなどがありました。12日間の糖尿病教育入院でCVRR法により計測される自律神経活動が回復すること、交感・副交感神経バランスL/H比変化など盛りだくさんで参考になりました。
30日のフォーラムでは血糖コントロールにより深呼吸負荷CVRRが改善傾向にむかったことを中心に発表予定です。

参考文献
  1. Azpiroz Fら:消化管の糖尿病性神経障害:病因と診断. Diabetologia Published online: 07 December 2015
  2. Vinik AIら:糖尿病性自律神経障害. Diabetes Care 26: 1553-1579, 2003
  3. Balcioglu ASら:糖尿病と心臓自律神経障害:臨床所見、心血管予後、診断と治療. World J Diabetes 6(1): 80-91, February15 2015
2016年1月

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