今月の糖尿病ニュース

2015年11月の糖尿病ニュース

朝食を抜くと昼食、夕食後の血糖があがる

朝食を食べると昼食後の血糖が上がりにくい現象はセカンドミール現象と呼ばれ、朝食を抜くと血中の遊離脂肪酸が増えてインスリン抵抗性を生じるからと言われています(1)。
広義には低GI食、不溶性食物繊維等による次の食後血糖抑制効果の差も意味するようですが、今回御紹介する(2)は食事内容ではなく朝食事をするか否かの検討です。

おおはしクリニック
目的;2型糖尿病患者において朝食有無別に詳細な昼食・夕食後の血糖変動を調べる。 被験者;22人(男12女10)、平均年齢56.9才、HbA1c7.7%、BMI28.2、糖尿病歴8.4年 12名メトホルミン内服10名内服なし
食事;朝昼夕食すべて700kcal(54%炭水化物20%脂質26%タンパク質7%食物繊維)に統一朝食抜きの日は2食(1400kcal/日)のみ
測定;血糖、インスリン、Cペプチド、intactGLP-1、FFA(遊離脂肪酸)、グルカゴン/ 食前および食後15,30,60,90,120,150,180分
結果;朝-昼-夕食後最高血糖値(朝食有vs無)218-192-236 vs 124-269-294、同インスリン41-49-39 vs 11-37-34、同intactGLP-1 16-18-16 vs 6-14-14、同FFA 231-281-351 vs 630-382-421、同グルカゴン 130-125-133 vs 103-137-144、朝-昼-夕食後FFA値0~180分積算値(朝食有vs無)6242-55860-67777 vs 117791-78830-87808

以上の結果より朝食を抜くと昼食後・夕食後血糖値、FFA値、グルカゴン値の増加とインスリン、intactGLP-1値の低下をみとめました。
セカンドミール現象はインスリン抵抗性から説明されることが多いと思いますがこの論文ではインスリン分泌にも焦点を当て、朝食摂取、またはブドウ糖への露出がβ細胞に記憶されインスリン分泌が増強すると考察しています。さらに夕食まで、つまり予想より長時間この効果が続いたことにも注目しています。本年Science誌にオートファジーがインスリン分泌亢進につながること、絶食下でマクロオートファジーは抑制され代わりに初期インスリン分泌顆粒のライソゾーム変性が誘導されることが報告され引用されていますが、他にGLP-1、グルカゴン、さらに体内時計の関与も考えられています。

おおはしクリニック日常臨床へのフィードバックは朝食後の高血糖をどうするか、朝食内容による差はどうかという点です。
The Journal of Nutrition 145(3), P452, 2015に載ったParkらが12名の2型糖尿病患者に500kcalの高蛋白(35%)または高炭水化物(65%)の朝食を7日間続けてもらい朝食後昼食後の血糖、インスリン等を調べた結果を要約で読むと朝食後血糖と昼食後インスリン分泌では高蛋白食に軍配が上がり、8時間積算血糖とグルカゴンは高炭水化物食で少なかったということです。
セカンドミール現象はインスリン治療者での検討があるかわかりませんが、例えば2型糖尿病で昼食夕食後の血糖が高い持続型インスリン治療者において昼夜食事前に2回超速効インスリンを追加するかわりに、朝食をしっかりとってもらい朝食後血糖を下げる治療(超速効1回、GLP-1、運動、αグルコシダーゼ阻害剤など)を行ったら効果あるかなど、いろいろ患者さんによって利点、注意点が出てくるのではないかと思われます。おおはしクリニック

参考文献
  1. Jovanovic Aら:2型糖尿病におけるセカンドミール現象. Diabetes Care 32: 1199–1201, July 2009
  2. Jakubowicz Pら: 2型糖尿病患者において昼まで絶食すると昼食および夕食後高血糖を誘発しインスリン分泌反応が阻害される:ランダム化臨床試験. Diabetes Care 38: 1820-1826, October 2015
2015年11月

>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ