今月の糖尿病ニュース

2015年8月の糖尿病ニュース

糖尿病患者教育

おおはしクリニック今回「2型糖尿病患者における自己管理教育と支援」について米国糖尿病学会(ADA)・療養指導士学会(AADE)・栄養食事学会より共同意見表明(Position Statement)(1)が出され、日本糖尿病学会編著「糖尿病治療ガイド2014-2015」該当項目と合わせて読んでみました。

糖尿病患者教育の要点は患者に意欲を持たせること(自発的な発言を待つ)、患者の状況にあわせて個別に必要事項のみ対話をしながら行うこと、時間経過により実行率は低下するので継続して行うことです。逆にいうと教科書的知識一式を準備のできていない患者に一方的に与え、自発的ではない行動を強要してはいけないということになります。

自己管理行動を促進する心理・行動学的方法としては、患者と医療スタッフは協力して問題解決に当たる関係であること、糖尿病に対して過去に持っていた考えや気持ちを聞くこと、焦点をひとつにしぼること、具体的であること、行動変化は行きつ戻りつを繰り返すので失敗しやすい状況への対策を立てることがポイントとして挙げられています。 糖尿病自己管理は難しいが努力する甲斐はあることを話し合うこと、行動変容には2~8ヶ月の時間が必要なことを念頭に置くこと、地域社会・オンライン・他の情報源を活用することも基本事項です。

教育と支援のタイミングは①糖尿病診断時②血糖コントロール悪化時およびインスリン導入など治療法が変わった時③重症合併症やうつなど精神科的疾患合併時④主治医または担当医療チームが変わった時です。(1)では②③がなくても年1回程度フォローアップ(復習・維持目的)が必要としています。また糖尿病患者は負の感情(圧倒される、希望を無くす、無援助感など)を持ちやすく18~35%の人が持つとも言われ、管理栄養士のみならず精神保健サービス提供者(精神科医 心理士 セラピストなど)との連携も勧めています。

患者教育が医療的、心理社会的、行動的に大きな効果をもたらし人生の質を高めることが証明されているにも関わらず、米国では(日本でも?)普及率の低さが大きな問題です。例えば糖尿病新患で1年以内に教育を受けているのはわずか6.8%ということです(1)。(1)では普及に欠かせないアルゴリズム(いつ、何を、どのように)に加え、経済的に無理なく参加できる体制(健康保険の解説等)にも多くの記述があります。また最終的には総医療費の削減に繋げる狙いもあります。

おおはしクリニック(1)に登場する動機づけ面接法の原則はOpen Affinity Reflecting listening Summary、つまり開かれた質問(食事療法守れましたか?×食事療法どうでしたか?○)、受容、聞き返し(相手の言葉繰り返し)、まとめ(積極的な発言を引き出すようまとめる 「そして一方では」を使って矛盾に気づかせるなど)であると佐世保中央病院糖尿病センター長松本一成先生からも8月30日講演でお聞きする機会がありましたが、面接法により血糖コントロールや禁煙率に差が出るデータが示され重要性を痛感しました。

参考文献
  1. Powers MAら: Diabetes Self-management Education and Support in Type 2 Diabetes: A Joint Position Statement of the American Diabetes Association, the American Association of Diabetes Educators, and the Academy of Nutrition and Dietetics. Diabetes Care 38: 1372-1382, July 2015
2015年8月

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