今月の糖尿病ニュース

2015年7月の糖尿病ニュース

第10回北河内糖尿病療養指導セミナー

きたる8月1日土曜日、第10回北河内糖尿病療養指導セミナーが関西医大枚方病院で開催されます。北河内地域(守口~枚方の京阪電車鉛線)の糖尿病コメディカルスタッフ(医師以外の医療職員)の研修を主目的に吉岡クリニック(当時松下記念病院)の吉岡敬治先生を代表世話人に9年前発足しました。最近は名古屋大学岡崎研太郎先生指導のもと行われるグループワークが特色になっていて、特別講演もフットケアやインスリン注射指導の話題などコメディカル向けのものが中心となっています。今回おおはしクリニックとしては初の一般演題「足のチェックシートとCVRRの関係-CVRR再考-」を音喜多看護師長が発表予定のためその内容をご紹介します。

はじめに:糖尿病性神経障害に特異的な症状や検査は存在せず、国際的コンセンサスの得られた診断基準も確立されていません。したがって神経症状と検査結果から総合的に診断する必要があります。そんな中、糖尿病神経障害を考える会の糖尿病性神経障害診断基準はアメリカ糖尿病学会のものと並んで普及しています。そして足のチェックシートはそのツールとして日常診療に用いられています。一方CVRRは心電図を用いた自律神経障害スクリーニング法であり、簡便かつ有用な検査(科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013 グレードA)です。CVRRに関する文献はすでに1973年報告があり、今回われわれが参考にした文献では持尾らが1980年台に報告したデータが見つかりました。それによると安静時60才以上では健常者平均2.8%、糖尿病患者1.7%、30~59才では健常者3.4%、糖尿病患者2.2%でした。またATR、振動覚検査等による体性神経障害患者有無別では、なし群2.4%あり群1.2%でした。さらにED有無別ではなし群2.6%、あり群1.3%でした。しかし判定基準は様々であり、深呼吸負荷が必要か否か諸説あり、さらに時間を要するため、クリニックでルーチンに実施するには位置付けを明確にする必要があります。
当クリニックでは定期検査として心電図検査実施する際、神経障害スクリーニング目的でCVRR検査を行ってきました。正常値は前勤務先で採用した正常値、負荷後3%以上とし安静時は参考程度としていました。
方法:上記CVRRデータを起立血圧変化試験(心電図検査後ルーチン)、フットケアのため定期的に行っている足のチェックシートデータと対比しました。HbA1c、網膜症など合併症程度とも同時に比較しました。

結果:安静時CVRRの正常値を3%以上と設定すると79%が異常と判定されました。2.2%以上と設定すると53%が異常と判定されました。深呼吸負荷後CVRRの正常値を3%以上と設定すると54%が異常と判定されました。120名中振動覚、アキレス腱反射ともに正常者は39名でしたがそのうち14名は負荷後CVRRが3%未満でした。一方負荷後CVRR3%以上でも69名中43名は振動覚かアキレス腱反射に異常を認めました。 起立試験の血圧変化とCVRR値と有意な相関はありませんでしたがCVRR低値の人は血圧低下が大きい傾向は見られました。 年令、罹患歴とCVRRに相関はみられませんでしたが、網膜症の重症度とCVRR間には安静、負荷ともに有意な相関がみられました。 考察;看護師の手によるCVRR検査、足のチェックシートは糖尿病臨牀において重要な情報を提供してくれることが確認されました。

名古屋場所といえば昭和40年代まだ新しかった愛知県体育館に貴ノ花、輪島、魁傑を応援しに行ったことを思い出しますが今年は盛況のうちに終わりました。

参考文献
  1. 1) 林 博史: 心拍変動の臨牀応用-生理的意義、病態評価、予後予測-. 医学書院
  2. 2) 日本自律神経学会偏: 自律神経機能検査 第4版. 文光堂
2015年7月

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