今月の糖尿病ニュース

2015年5月の糖尿病ニュース

第58回糖尿病学会年次学術集会参加報告

おおはしクリニック今月は看護師長、音喜多が担当致します。
第58回糖尿病学会年次学術集会が5月21日(木)~24日(日)下関・関門地区で開催され参加しました。患者さんと医療スタッフの関わりによるヒューマニティー溢れる領域で新たな糖尿病の夜明けを迎えようと糖尿病学の進化と深化(サイエンスとヒューマニティーの融合)というテーマで開催されました。

第一の目標は、当クリニックでも透析予防指導を強化するにあたり各施設の取り組みの情報収集でした。看護師としては特に、患者さんが思い悩んでいる日常生活全般(血圧、体重、禁煙、フットケア、運動療法、歯周病など)の問題に対して中心となり、医師、管理栄養士とともにチーム体制を築きたいと思います。6月の糖尿病教室では腎症自己管理のポイントについてお話する予定です。

おおはしクリニック今回の学会は会場間が離れていて予定を組むのが大変でしたが、関門海峡を行き来し集めた情報をいくつか紹介します。

まず運動療法のポスター発表「糖尿病の新しい運動療法、~スクワットによる臨床効果~」です。日本船舶工具が作成した「ドクターバネ、バネのお医者さん」を用いるのですが、バネの不安定性で深層筋が鍛えられ、朝昼夕に①腰を落とす運動②内股歩行③外股歩行を各5分ずつ行い、HbA1c6ヵ月で平均0.41%の有意な低下、筋力・ADL改善によりロコモ、フレイルに効果がみられたそうです。また認知症内服薬アリセプトが中止できた82歳症例も紹介されました。クリニックでも購入し皆さんにぜひ活用してもらいたいです。 学会発表する条件付きで50台無料進呈の予定ともいわれていました。

もう一つポスターで、運動を継続する手段として卓上カレンダーを活用する発表がありました。
目標、種類、程度、時間を書き込みそれに関して○、×をつけます。受診日に持参して継続度、A1c、BMI、脂質、自覚症状の評価も加えます。継続意欲がわき6ヵ月後A1cが10.5から8.5%に有意に低下したという内容でした。しかし中には「運動する事で食欲が増した」「コーンを野菜だと思って食べた」という事例もあり繰り返し栄養指導を行う必要性も示されました。

口演では日本糖尿病協会「自己管理ノート」の新たな活用法の提案発表がありました。精神科通院や肥満の方では食事、運動の実行度が上がらず血糖悪化、体重増加の指導に苦慮することが多いため、そのような症例に自己学習ツールとして用いた報告です。5か月後85%が継続、体重73.6→72.3kg、A1c7.1→6.8%と効果が認められました。自己学習ツールとして自己管理を高める可能性が示唆された内容でした。手軽に持ち運べ、自他共にじっくり振り返る事が出来て、実行度が高いと表情が明るくなり継続出来てよい結果が出たとの発表でした。当院でも日記のように日々の行動がわかるようにぎっしりと血糖値も併せて記入している方もいますが、SMBG以外でも新たな活用として紹介して行きたいと思います。

展示会場ではインスリン注射法についてマネキン模型を用いてエコーゼリーの有用性が示されました。インスリン注射は同じ場所に打つ事で繊維が増えてインスリンが吸収されないことがあるため、できる限り場所を変えて打つことが重要です。インスリンリポハイパートロフィーとといわれ今までは患者さんにただ触って確認してもらっていましたが、今後会場での方法を実践したいと思いました。
21G採血針、シャーペンの芯とインスリン針(現在32G4mm)を対比させた新しい見本も見つけクリニックに持って来てもらうことになりました。いかに今の針がストレート構造でさらに電解研磨をし、コーティングして十分な内腔を確保し、薬液もスムーズに入るか認識頂けます。針の先端を5面カットし穿刺抵抗が従来品から23%軽減し、痛みを減らす新技術の針はインスリン療法の先端恐怖症の方に見てもらいたいです。

おおはしクリニックランチョンセミナーは当クリニックでも紹介しているはくばく(大麦)の講演を聴きました。糖尿用治療に役立つ大麦食の最新エビデンス~GI試験や抗メタボ試験の結果解析~ 病院給食における麦ご飯の提供事例 ~CGMで得られた知見をもとに~というタイトルです。済生会横浜の病院では糖尿病患者の病院給食として麦ご飯を提供し、大麦を5割麦ご飯と白米のご飯で1日のCGMで変化を見ると5割麦ご飯が1日の血糖変動が緩やかになり白米ご飯を食べた場合とは大きく異なりピークも変動幅も抑えられ何より「低血糖をおこしにくい」と強調されました。また3割麦ご飯でも腹囲、内臓脂肪が有意に減少との報告があり日々の食物繊維を意識して摂取するには長期的に3割麦ご飯を推奨されていました。また大麦は水溶性食物のβグルカンがぎっしりと詰っているので、精製してもたっぷり食物繊維が含まれ、腸の元気の根源ではないでしょうか?患者さんからよくどこに置いているの?即買いたい!との要望も増えているので近所で取り扱う店をさがしています。

おおはしクリニック会場が広範囲で迷ったり宿泊先小倉を門司港と間違えたり珍道中でしたが、客船で行われたイブニングシンポジウム、その後のイルカショーなど例年にない企画と風光明媚なロケーションのおかげで気になりませんでした。忙しい中お休みを頂き有り難うございました。 ☆去年約束しました通り4月の加賀温泉郷マラソンで2011年東京マラソン以来の5時間切りを果しました。

追記;院長大橋は23日出席しました。SGLT2阻害剤の腎臓学的アプローチ、DPP4阻害剤のインクレチン以外への効果、当クリニックでも実施中のCVRR(心電図検査時施行)・FMD検査の他施設での知見、肝臓学会との合同企画「第2回肝臓と糖尿病・代謝研究会」のキーノートレクチャー;PNPLA3遺伝子変異(インスリン抵抗性と無関係の脂肪肝、20~50%の脂肪肝患者がもつ)など盛りだくさんでした。またあらためて報告予定です。

2015年5月

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