2015年4月の糖尿病ニュース
学会参加報告:PAX ENDOCRINOLOGIA内分泌至上主義
第88回 日本内分泌学会学術総会が4月23日から25日、東京で開かれました。一見糖尿病学会に比べて地味な内分泌学会ですが、今年はテーマがとてもわかりやすく新鮮な感じがしました。ホルモン(内分泌)はすべての生命現象、疾患発症の根幹に位置し、内分泌学は内科学の王道になるべきであるというメッセージですが、同タイトル(内分泌至上主義)を冠した特別シンポジウムを聞くと具体像が浮かび上がりました。内分泌学会の特徴は多科にわたる臨床医のみならず、多種の基礎研究者が集まること(学会代表理事記)ですが今回は大学の工学研究所や理化学研究所所属“現代科学における異能たち”の講演がありました。大阪大学浅田 稔先生の「認知発達ロボティクスの挑戦」では情動・認知機能を持ったロボットを作るということは、有用なロボットを誕生させることのみならず逆に人間の情動・認知機能獲得メカニズムを知ることなのだとあらためて気付きました。近い将来情動も内分泌学で捉えうるのでしょうか。東京大学上田 泰己先生の「個体レベルのシステム生物学の実現に向けて」では体全体に無数に散らばっている(時計)細胞一個一個を個体レベル(体全体)で観察できる技術(器官透明化)が紹介されました。いわば森と木両方を見ることが出来る画期的な方法で昨年11月にCell誌に掲載されたそうです。上田先生の本は2011年発行の「NHKサイエンスZERO;時計遺伝子の正体」(NHK出版)で読んだことがありましたが今後の発展が楽しみです。
ポスターではメトホルミンの作用を腸内細菌叢の変化より検討した慶応大学グループの発表が興味深かったので調べてみると関連事項が既に論文化されていました(1)。シンポジウム「子宮内膜環境と将来のメタボリック症候群」では若い女性の痩せ願望が妊婦のエネルギー摂取不足に繋がり児が将来脂肪肝を発症するリスクが高まるという問題、 「臓器インスリン作用とその障害;血管内皮細胞のインスリンシグナルを介した糖代謝機構」では高インスリン血症がIRS2の低下調節を招きeNOSの活性低下から筋インスリン抵抗性を生ずるがプロスタグランディンPGI2、GLP-1がそれを改善すること、朝活!リアルドクター甲状腺編では甲状腺ホルモン測定上の問題点を勉強しました。うつ病の栄養学的側面、腸内細菌と脳などに関する特別シンポジウム「サイコメタボリズム」は残念ながら出席できませんでしたがフォローしていきたいと思います。
参考文献
- 1) Napolitano Aら: 2型糖尿病患者において腸に基づく新しいメトホルミン薬理学. PLoS One 9: e100778, July 2014
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