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2015年1月の糖尿病ニュース

2型糖尿病の高血糖マネージメント2015年版:患者中心アプローチ
ADA(アメリカ糖尿病学会)/ EASD(ヨーロッパ糖尿病学会)見解更新

新年あけましておめでとうございます。
2型糖尿病の高血糖マネージメントが2012年以来更新されました(1)。今回は新しいデータを加えた部分改訂となりました。私の印象に残った点を書きます。
血糖コントロール目標はHbA1c7%を標準の上個別化していく点は変化ありませんが、患者さんの療養姿勢と療養環境はあらかじめ決まったものではなく修正可能なものとし、(例えばこの人はやる気がないのでゆるいコントロールでよい、などとせず)、医療チームは教育に力を入れ金銭的に可能な範囲で支援すべきことが明記されました。

経口血糖降下剤についてはSGLT2阻害剤が新規に記載されました。脱水や感染に注意する点、腎機能低下者に効果が少ない点等は既によく論じられているので省略しますが、インスリン自己分泌能に無関係に適応があることが強調され、肥満症例におけるインスリン単位減量効果も挙げられています。非肥満症例投与における注意点は特に触れられていません。尿中カルシウム増加による骨折リスクへの影響、LDL上昇の可能性については今後の検討課題としています。

ピオグリタゾン(アクトス)に関しては、膀胱がんへの関心はおおかた沈静化しつつあるとしています。 DPP4阻害剤については、膵炎、膵がん、心不全既往者への投与は依然注意を要するとしています。また血管浮腫、じんましんの他「免疫を介する皮膚への影響」の記載が追加されています。
メトホルミンについては投与禁忌になる腎機能レベルはeGFR30と提案されています。
SU剤はメトホルミン禁忌になる腎機能低下者へは低血糖リスクの点から使わない方が賢明でDPP4阻害剤への変更を勧めています。

多剤併用療法について、一剤の効果限界を考えればHbA1c9%以上の場合最初から行うのも理論的には間違っていないが、月単位でコントロールしても遅すぎるというエビデンスがないので通院がきちんとできるなら一剤一剤追加する方法も遜色ないとしています。
注射製剤は基礎インスリンまたはGLP-1アナログを第一選択としていますが、基礎インスリンから開始する場合単独でHbA1cが目標に到達しなければ、従来からの定番である食前速効型インスリン以外にGLP-1アナログ追加が同等の位置付けとなりました。体重増加や低血糖の少ない利点も評価されています。
一方混合型インスリン製剤の存在価値は利便性におかれているようです。

食後高血糖についてはHbA1cが目標に到達している限りさらにコントロールすべきか否か明記されていませんが、αグルコシダーゼ阻害剤に心血管疾患抑制効果がある可能性を記載しています。少し話が逸れますが昨年9月このニュースでも紹介した血管内皮機能検査において、αグルコシダーゼ阻害剤は内皮機能を改善したという報告が多数見られます(2)(3)。

最後に1型の一病型、または1.5型ともいわれるLADA潜在性自己免疫性成人型糖尿病(=SPIDDM緩徐進行型インスリン依存性糖尿病)についてです。発症早期は経口剤で治療できることも稀でないものの通常の2型糖尿病に比しインスリン分泌能が速く低下し、最終的に多くはインスリン強化療法になると言われています。進行を遅らすのに選択すべき、または避けるべき薬剤名はとくにあげられていませんが、最近の文献(4)で運動療法が1型糖尿病においてインスリン分泌保持効果を期待されており興味深いです。

参考文献
  1. Inzucchi SEら: Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2015: A Patient-Centered Approach Update to a Position Statement of the American Diabetes Association and the European Association for the study of Diabetes. Diabetes Care 38: 140-149, January 2015
  2. Nakamura Kら: DPP4阻害剤とαグルコシダーゼ阻害剤は2型糖尿病患者の内皮機能を同等に改善する, EDGE study. Cardiovascular Diabetology 13: 110, 2014
  3. Standl Eら: アカルボースの心血管疾患を減少させる潜在能力の立場で. Cardiovascular Diabetology 13: 81, 2014
  4. Norendran Pら: 新規発症1型糖尿病患者において運動療法のベータ細胞保持効果を試験する時期が来た. Diabetologia 58: 10-18, January 2015
2015年1月

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