今月の糖尿病ニュース

2014年10月の糖尿病ニュース

リアルタイム(RT)CGM(持続血糖モニター)について

6月のニュースでも少しご紹介しましたが、RTCGM(パーソナルCGMとも呼ばれる)がいよいよ今年12月日本の臨牀現場に初登場の見込みとなりました。そこで今月参加した2回の勉強会の感想を中心にお伝えします。

11日に開かれた第2回大阪インスリンポンプサロン(講師 育成会寺田町こども診療所 青野繁雄先生)では世界でのインスリンポンプ(CSII)・RTCGM(RTCGMはCSIIとセットで使用が原則)使用状況と歴史、機種ごとの特徴、日本国内の展望、医療費について詳しくわかりやすく説明されました。医療費は通常のインスリン療法(MDI)に比し2~2.5倍かかるもののHbA1cが1.2%下がれば合併症減少により採算がとれるという試算があるそうです。

日本で最初のRTCGM供給元になるといわれるメドトロニック社は現在全国で医療関係者向けに講習会を開催中です。そこで18日神戸に出かけ約5時間トレーニングを受けました。
CSIIにおいて従来のプロフェッショナルCGMは記録したデータを後から分析する形のため、基礎インスリンの設定等には有用性が高いものの、食事や血糖補正にインスリンを追加したり補食したりする自己管理にはやや応用しにくかったのではないでしょうか。逆にRTCGMを使う場合、妊婦さんは別として対象選別が重要で、血糖の変動が大きく低血糖のリスクが高いなど必要性が高く、血糖自己測定を厭わず、器械の管理・使いこなしが十分でき、カーボカウントなど勉強する意欲が十分ある患者に適応があります。

RTCGMは「総合的に責任をもって管理でき、教育やトラブルへの対処ができることが必須」とされている関係上か、常勤医師が2名以上配置されている施設においてのみ保険診療が認められています。従って当面1名体制の当クリニックの役割は適応の患者さんを見つけて然るべき施設に紹介することですが、患者さんに説明する際紹介する臨床エビデンスは以下の通りです。

Guard Control試験(2006年)、JDRF試験(2008年);既存の療法(CSIIまたはMDI)にRTCGMを追加することにより、低血糖を増加させることなくHbA1c値が0.5~0.6%低下した。

Eurythmics試験(2009年);MDI+血糖自己測定(SMBG)に比しCSII+RTCGMでは低血糖を増加させることなくHbA1c値が1.1%改善した。

SWITCH試験(2012年);患者がRTCGMの使用を中止すると、CGM装着時に達成された血糖コントロールは維持されない。

RTCGM使用時注意点は、CGM測定値は血糖値ではないこと(最大10分の遅れ)、SMBGで較正を行うこと、アラートの設定を適切に行うこと、そして鍵となるのはグルコース変動率を意味する1本(毎分1.0~1.9mg/dl上昇または低下)~3本(同3.0以上)の上向き下向き矢印で表示されるトレンドです。

たとえば朝食後2時間血糖値183mg/dlの場合、通常のSMBGでは上々と考えますがRTCGMでもし上向きのトレンドがわかった場合どうするか?
テキスト(1)では、その人が1単位の速効型インスリンで50mg/dl下がる人ならば2~3単位の補正ボーラスを勧めています。

また追加インスリンガイドラインに従えば、食事前・高血糖時などボーラス投与時、下向き矢印1本ならボーラス量10%、2本なら20%減量、上向き矢印1本ならボーラス量10%、2本なら20%増量を行うことになっていますが、今年のアメリカ糖尿病学会のポスターではこの点に言及し10~20%範囲の調節ガイドラインに比し42~142%と明らかにより大きな調節が行われていること、1型より2型糖尿病患者でこの傾向がより顕著だったことからまだガイドラインに改善の余地があることを示唆しています(2)。

参考文献
  1. Edelman SVら: Taking Control Of Your Diabetes (TCOYD) 4th Edition: Education Motivation Self-Advocacy. Professional Communications, Inc. 2013
  2. Edelman SVら: RTCGM使用者はトレンド矢印に顕著なインスリン調整を行う:1型と2型糖尿病間の比較(836-P). Diabetes 63(Suppl.1) A213, June 2014
2014年10月

>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ