今月の糖尿病ニュース

2014年9月の糖尿病ニュース

糖尿病クリニックにおけるFMD検査について

糖尿病の診療において、心大血管疾患、即ち心筋梗塞や脳卒中等の予防が大切な目標のひとつであることに異論はないと思います。しかし症状がない場合、どのような糖尿病患者さんに、どの検査を行うかという点についてはまだ検討の余地が残されています。 例えば冠動脈CTによる石灰化スコアは確かに疾患予測能をあげるものの、経済性・偽陽性・介入による予後改善効果証明の欠如等の理由から、スクリーニング検査としての地位は賛否両論ある為、2014年アメリカ糖尿病学会でディベート(賛;Wong ND, 否;Inzucchi S) テーマにもなっています。

糖尿病に特有な血糖状態(HbA1c、低血糖有無、糖負荷試験2時間値など)、インスリン抵抗性有無の他、家族歴、年令、性、BMI、喫煙有無、血圧、LDL、HDL、尿アルブミン、eGFRなどで絞り込んだ後、次のステップとして現在広く行われているのは頸動脈エコー、脈波検査(PWVなど)です。9月20日大阪大学の片上直人先生の御講演によると簡便性、汎用性、経済性等に加え疾患予測能(感度、特異度によるROC分析)の面でも有用性が確立しつつあるそうです。

期待される二つの検査ですが、頸動脈エコー検査は血管内・中・外膜3層構造のうち内膜の形態(器質的変化)をとらえて診断する検査です。脈波検査は血管の機能的変化もとらえる検査ですが中膜の影響を受けます。つまり内膜の機能的変化を鋭敏にとらえることは必ずしも十分でない可能性があります。

ユネックス社(www.unex.co.jp)の資料によると、
「FMDとは血流依存性血管拡張反応の略で血管内皮機能を評価する指標です。動脈硬化は血管内皮機能障害からはじまり、糖尿病などの生活習慣病のリスクはその進行を加速させます。血管内皮機能の低下は心血管イベントリスクを高め、生命予後の悪化に繋がります。

「頸動脈エコー、脈波検査は血管の硬さや詰まりの状態を捉えますが、FMDは血管内皮細胞の働きを診ています。他の検査が正常でもFMDだけ異常を呈することがあります。」
「FMDは、カフで腕を締めた後の血流増大によるずり応力により血管拡張物質である一酸化窒素(NO)が血管内皮からどれだけ放出されたかを、締める前後での上腕動脈の拡張度(%)で評価します。血管内皮機能が低下しているとNOの産生は少なくなりFMD値は低下します。正常値の目安は6%以上です。」

「薬物療法、運動療法、食事療法、禁煙などによって血管内皮機能が改善します。2週間程度で改善したという報告もあり治療効果が反映されやすい指標です。」

おおはしクリニックでも10月からFMD検査を開始します。

おおはしクリニック

FMD検査は動脈硬化管理のみならず身体機能予後の指標になる可能性も示唆されています
(北九州市立八幡病院 田中正哉先生、琉球大学 仲地耕先生)。
食事、運動、薬剤療法、禁煙の効果判定や循環器合併症管理に、聴診器のように活用できればと思います。

2014年9月

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