今月の糖尿病ニュース

2014年8月の糖尿病ニュース

時間がない人の効果的な運動療法

おおはしクリニック今年の夏は蒸し暑い日が多く、運動療法に苦労する人が例年以上に多かったと思います。 9月になればまた運動の季節ですが、時間が取れないと悩む人も少なくないでしょう。

日本糖尿病学会編・著「糖尿病治療ガイド2014-2015」では

  1. 有酸素運動とレジスタント運動両方必要である
  2. 有酸素運動強度は最大酸素摂取量50%前後、または心拍数100~120/分(50歳以上は100以内)
  3. 運動の負荷量は、歩行運動では1回15~30分、1日2回、1万歩、消費エネルギーは160~240kcal
  4. 運動の頻度は、できれば毎日、少なくとも週3回
  5. 運動の実施は、食後1時間ごろが望ましいとされているが、可能な時間のいつでもよい

これに対してアメリカ糖尿病学会編「実地臨牀推奨事項(clinical practice recommendations)」ではレジスタンス運動について最低週2回はすることなど具体的数字が挙げられるとともに、有酸素運動に関しては高強度の運動を半分の時間で済ますバリエーションが記載されています。(このニュースシリーズでも2012年7月、2010年12月に取り上げました)

この高強度短時間という概念は日本糖尿病協会発行「さかえ」にも2014年1月から「インターバル速歩のすすめ」という連載として大変詳しく説明されていますが、今回は通常運動療法と高強度短時間運動療法の血糖改善効果を比較した文献を読んでみました。

一般的に高強度運動は効果が期待できるものの疲労が強く継続困難とされるため、1~3分間の高強度運動に同じ時間の休息(低強度運動)を挟むことにより克服した方法がインターバル法です。(1)では平均年令48才、7名のIGTまたはIFG、および2名の2型糖尿病を対象に3種のプロトコール(消費カロリーは同等);ES=最大酸素摂取量90%(HR約140~150 RPEボルグスケールで約18~19)の非常にきつい歩行運動1分間に、1分間休息を挟んだインターバル法6セットを毎食前に、CES=ESの歩行運動を一部レジスタンス運動に置き換えたもの、CONT=最大酸素摂取量60%(HR約110 RPE約13)の中強度歩行運動を夕食前30分間、を施行、持続血糖測定器を用い比較検討しました。

おおはしクリニック結果です。食後3時間の平均血糖値は運動前に比しESでは朝食後18mg/dl、夕食後9mg/dl 下がりましたが、CONTでは有意な変化が見られませんでした。24時間平均血糖値は運動翌日でもESで約11mg/dl下がり、CONTと効果に差はありませんでした。CESとESの効果は同等でしたが自覚的な消耗度はCESで大きくなりました。 また(2)は平均約60才、経口血糖降下剤内服にてHbA1c6代後半の2型糖尿病患者を対象に運動強度70%と50%の差でインターバル歩行の効果をみた研究ですが、少なくとも体組成、身体能力への効果でインターバル歩行が優っていました。

以上より考えられる臨床へのフィードバックは 若い境界型または軽症2型糖尿病では、通勤帰りできるだけ早く歩いたり時々小走りしたりして帰宅してもらう、電車通勤でない人は室内筋トレも可、夕食後血糖下げようと運動するなら食前のゆっくり歩行は無効かもしれない(ゆっくり歩くなら食後がよいかも)、運動は一日おきでもオフ日に効果はのこる、高齢者でも自分なりにきつめの運動する価値がある、等でしょう。

時間がない人の効果的な運動療法は?→インターバル速歩は有用な手段と思われます。 持続的に休息なしにジョッギング、ランニングを行えばさらに効率がよいかもしれませんが効果とリスクについて検討が必要です。

参考文献
  1. Francois MEら: 食前の小運動(エクササイズ スナック):インスリン抵抗性のある人における新しい血糖改善法. Diabetologia 57: 1437-1445, 2014
  2. Karstoft Kら: 2型糖尿病患者において自由生活下インターバル歩行訓練が血糖コントロール、体組成、身体能力に及ぼす効果. Diabetes Care 36: 228-236, 2013
2014年8月

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