今月の糖尿病ニュース

2014年6月の糖尿病ニュース

第74回米国糖尿病学会年次学術集会参加報告その1
糖尿病と心不全:血糖降下剤の役割
おおはしクリニック

今月13~17日、サンフランシスコで開催された学会の報告です。今年臨床現場に登場するリアルタイム持続血糖モニター(CGM)、それに関連した人口膵に注目、インスリンとグルカゴン注入の併用、運動時の血糖調節、日本でも有名なEdelman先生による1型2型糖尿病症例別CGM使用実態調査など話題豊富でしたが、大きなテーマの為まとめは後日の宿題とし、今回は循環器関連の話題をピックアップしました。

おおはしクリニック 糖尿病患者の循環器疾患予後は改善してきているという(今後の焦点は認知症対策である)久山町研究データを先月九州大学清原先生にお聞きしたところでしたが、米国でも大血管障害、特に心筋梗塞のイベントは1993年以降劇的(-67.8%)に減少している(1)ことが、学会最終日「2013ACC/AHA脂質ガイドラインに関する討論」においてRobert H. Eckel先生から紹介されました。原因は不明なものの降圧剤や脂質治療剤スタチンが貢献しているのではと両先生は述べています。

おおはしクリニック一方、心血管合併症ハイリスク患者の血糖コントロールをいかに最適に行うかは依然重要なテーマですが、「最近の糖尿病大規模試験における心血管疾患のアウトカムシンポジウム」ではDPP4阻害剤と心不全の関連についてSAVOR-TIMI 53試験の結果が報告されました。サクサグリプチンはプラセボと比べて有意な血糖改善効果を示したものの心不全による入院の相対リスクを27%上昇させたということです。予想外の結果でメカニズムも不詳ですが、「アメリカ心臓病学会・脳卒中学会」主催のサテライトシンポジウム「糖尿病における心不全:血糖降下剤の役割」中でも紹介され、関心の高さが伺われました。

メトホルミンは一般に心不全患者には禁忌とされてきましたが、同サテライトシンポではむしろ肯定的意見が述べられました。 懸念される乳酸アシドーシスの確率は他の血糖降下剤内服下と変わらず、少なくとも安全性有効性は同等ではないか、心筋の線維化抑制効果についてなどです。因みにアメリカFDAは2006年、カナダHealthCanadaは2010年、それぞれ絶対禁忌を外し慎重投与は可能としています(2)。

日本でも心不全合併糖尿病患者の予後は不良であることが報告され、HbA1c 8.0%以下がコントロール目標として示唆されています(3)。今後血糖降下剤をどう使うか検討が進むものと思われます。

1997~1999年米国サンアントニオ留学時の恩師DeFronzo先生とお話できたこと、サンアントニオスパーズのNBA final(プロバスケットチャンピオンシップ)優勝を元同僚と祝えたことも学会ならではの事でした。

参考文献
  1. Gregg EWら: 1990-2010米国における糖尿病関連合併症の変化.
    N Engl J Med 370(16): 1514-1523, April 2014
  2. Eurich Dtら: 心不全合併糖尿病患者におけるメトホルミンの相対的な安全性と効果.
    Circ Heart Fail 6: 395-402, May 2013
  3. Kishimoto Iら: HbA1c値は心機能やBNP値とは独立して心不全入院を予測する.
    Diab Res Clin Prac 104: 257-265, May 2014
2014年6月

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