今月の糖尿病ニュース

2014年1月の糖尿病ニュース

「糖尿病腎症と慢性腎臓病」

2002年慢性腎臓病(CKD)の概念が提唱され10年以上経過しました。全国的にCKDの地域医療連携システムが構築され、当寝屋川市でも稼働が本格化しています。そこで今月はCKDと糖尿病性腎症(DN)の話題を集めました。

1,糖尿病に合併する正常アルブミン尿かつeGFR低下;いわゆるDiabetic Kidney Disease (DKD)について

おおはしクリニック

2012年6月に新しい「CKD診療ガイド2012」が日本腎臓学会から刊行され、そのCKD重症度分類をみると、従来GFRのみで分類されていたものが蛋白尿区分を加えた2次元で行われるようになりました。これは2009年に開催されたCKD Prognosis Consortiumのデータから総死亡・心血管死・末期腎不全(ESRD)・CKD進行・急性腎障害などとアルブミン尿がGFRとは独立して危険因子と判明したからです(1)。一方、糖尿病性腎症の病期は尿アルブミン(蛋白)を中心に作成されており(2)、例えば正常アルブミン尿かつGFR低下のある症例の扱いに問題がありました。このような症例は最近外国では糖尿病腎症でなくDiabetic Kidney Disease(DKD)と呼ぶそうですが (1)、病態は不明で糖尿病に糖尿病腎症と腎硬化症が併発する(1)等と考えられています。最近の研究でも、正常アルブミン尿かつGFR低下(平均eGFR41)患者8人中5人は生検組織において典型的な糖尿病性腎症のパターン(メザンギウム領域の拡大等)をとらず、 8人中3人は糸球体ではなく尿細管間質や血管病変が主であったとし、年令・高血圧・動脈硬化の関与を示唆しています(3)。

2,DN(またはDKD)の長期予後決定因子

そうなると次に知りたいのは正常アルブミン尿DKDの予後です。
尿アルブミン・GFRのみならず血尿の有無・糖尿病歴・血圧など臨床諸因子および腎生検所見を後ろ向きに腎・心血管予後と総死亡率に対比させた研究(4)によると、顕性アルブミン尿が腎予後と総死亡率に一番大きな影響を与えることがわかり、それから推測すると
正常アルブミン尿DKDの予後は比較的良好となり既報と一致するとしています。また間質線維化・尿細管萎縮所見が腎予後と総死亡率予知マーカーとなったことから生検の有用性を報告しています。なお尿細管障害のマーカーとして尿中L-FABP、尿中IV型コラーゲンが知られていますが(5)、この研究では測定されていません。
また最近の報告では尿アルブミンと独立した腎機能低下予知因子として、バゾプレッシンのsurrogate(代用)、血中Copeptinのデータも報告されています(6)。
心腎連関も話題ですが次の機会に致します。

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参考文献
  1. 羽田勝計: 慢性腎臓病(糖尿病と関連する内科疾患). 日内会誌 102: 875-881, 2013
  2. 古家大祐ら: 慢性腎臓病と各種疾患;糖尿病(慢性腎臓病:最近の進歩). 日内会誌 101: 1278-1285, 2012
  3. Ekinci EIら: アルブミン尿有無別の腎機能障害合併2型糖尿病患者の腎組織. Diabetes Care 36: 3620-3626, November 2013
  4. Shimizu Mら: 日本人2型糖尿病患者における、生検で証明された糖尿病性腎症の長期予後. Diabetes Care 36: 3655-3662, November 2013
  5. 羽田勝計: 糖尿病性腎症に関する基礎的・臨床的研究. 糖尿病 56: 713-717, 2013
  6. Velho Gら: 血漿Copeptinとアルブミン尿を呈する2型糖尿病患者の腎予後. Diabetes Care 36: 3639-3645, November 2013
2014年1月

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