今月の糖尿病ニュース

2013年12月の糖尿病ニュース

「糖尿病発症年令と血糖コントロール」
おおはしクリニック

小児期・青年期の2型糖尿病は20年程前まではほとんど見られなかったのですが最近日本ではこの年齢層糖尿病の80%を占めるそうです(1)。
今月は若い2型糖尿病患者の血糖コントロールについて考えてみます。

20~30才代の患者さんが来られると罹患年数の観点(年数が経っていないのでβ細胞不全が進行していない)から考えて、初診時は仮に著明な高血糖を認めても、インスリン治療などで糖毒性をとれば無投薬か単剤治療でいけるものとむしろ楽観的に考えがちです。
しかし若年者の境界型糖尿病(IGT)を経時的に観察すると正常に戻る者もいる一方、2型糖尿病に急速に進むケースがあり、著明なインスリン抵抗性を主徴とする通常と異なる病型(病態生理)が推測されています(1)。治療も難渋することが多くメトホルミン単独治療では無理で多剤併用、インスリン治療を要しました(2)。今月に発表された論文(3)は住民横断調査という限界はあるものの若年発症2型糖尿病が血糖コントロール困難である新たなデータを追加しました。罹患歴5年以内の患者調査で2型糖尿病発症年令が65才未満のものは65才以上のものよりA1c9%以上であるリスクが3.22倍となり、発症年令と現在のHbA1cは逆相関(例えば20才なら8.5%以上、80才なら7.0%以下)であることが示されました。罹患年数・治療法の差・肥満度・腹囲では説明つかず人種、社会経済状況で補正しても結果は変わらないことから、病態生理上の差が示唆されました。しかし若年発症者は罹患歴が短い間は心血管疾患など他の疾患合併が少ないため、高齢者より安全に血糖値を下げることは可能で予後改善効果も大きいことが期待されるため治療法の確立が急がれます。

おおはしクリニック

今年も1年お付き合いありがとうございました。来年はインクレチン関連薬に続く新薬SGLT2阻害剤が発売予定と聞きます。DPP4阻害剤を対照とした臨床試験結果が相次いで発表されています。例えばシタグリプチン(ジャヌビアまたはグラクティブ)100mgと比較して1年後、カナグリフロジン100または300mgは同等または同等以上のHbA1c低下効果があり、体重は2.4~2.9%、収縮期血圧は2.9~4.0mmHgより多く下げたと報告されています(4)。性器真菌感染症、頻尿・多尿、めまい・起立性低血圧リスク、また腎機能低下者への適応(今回eGFR55未満は試験に組み入れ不可)が制限される可能性などを考えると比較的若い肥満型の患者さんがとくに良い適応と想像され、本日のテーマからも楽しみです。

参考文献
  1. D'Adamo Eら: 若年者の2型糖尿病:疫学と病態生理. Diabetes Care 34(Suppl2): S161-S165, 2011
  2. Zeitler PらToday Study Group: 若年2型糖尿病患者の血糖コントロールを維持する臨床試験. N Engl J Med 366: 2247-2256, 2012
  3. Berkowitz SAら: 糖尿病発症年令と血糖コントロール:国民健康栄養検査調査(NHANES)2005-2010の結果. Diabetologia 56: 2593-2600, December 2013
  4. Lavalle-Gonzalez FJら: メトホルミン単剤治療中2型糖尿病患者におけるカナグリフロジンの効果・安全性、シタグリプチンとの比較、無作為試験. Diabetologia 56: 2582-2592, December 2013
2013年12月

>>糖尿病ニュースバックナンバーはこちらから

▲ ページ先頭へ