今月の糖尿病ニュース

2013年11月の糖尿病ニュース

食品交換表第7版と新しい米国糖尿病学会食事療法に関する見解
おおはしクリニック

「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会編著)が2002年以来の改訂、第7版が1日に発行されました。 3月のニュースでも少し触れましたが炭水化物の摂取比率について目標を固定せず50~60%と幅を持たせたのが最大の特徴です。低炭水化物食は長続きしない、長期にした場合安全性が確立していないとしながらも、少なくとも短期間では食後血糖・体重減少効果があるため、ケースバイケースで考えるべきとしています(1)。しかし体重は栄養の組成よりも摂取総カロリーで決まるとされ、低炭水化物食は総カロリー減少になりがちなことから、体重減少は低炭水化物の直接効果か総カロリー減少による間接効果か判別できないことが指摘されています(1)。食後高血糖は確かに炭水化物制限により下がりますが、日本人に多い「非肥満型」食後高血糖が果たして心血管疾患のリスクになるかどうか、「肥満型」食後高血糖は確かに心血管疾患のリスクになるものの炭水化物制限でなく肥満の是正によりコントロールするのが病態にかなった治療ではないか、という意見が出ています (1)。

最近発表された食事療法に関するアメリカ糖尿病学会の見解(ポジションステートメント) (2)では炭水化物、脂肪、蛋白質の理想的な比率は述べず、代謝状態のみならず現在の食生活、個人の嗜好を重視する立場をとっています(因みに米国では糖尿病罹患者の平均摂取比率はそれぞれ45%、36~40%、16~18%(2))。しかし血糖値を左右するのは炭水化物であることが明示され、どんな食品がどれくらい炭水化物を含むか覚える必要があること、インスリン治療者のうち特に混合製剤など単位を固定して使用する人では一定時刻に決まった炭水化物量を摂ることなどが重要としています。

食事療法の研究は多数の人に長期間同じ食事をしてもらうのが非常に困難のため確定的な事実を引き出すのは難しいことが全体を通してよくわかります(2)。従って「さらに今後の検討を要する」レベルの勧告が多いながら、日常臨床上重要と思われる点、興味ある点をあげてみます。

炭水化物を何から摂るか?;できるだけ全穀類、果物、豆、乳製品から摂る。これらは栄養的にも優れている。 全穀類とは種、ぬか、ふすま(小麦のぬか)、胚芽、胚乳を含んだもの。全穀類は全身の炎症を緩和し、死亡率や心血管疾患を減らす効果がある。穀類の少なくとも半分は全穀類から摂るべきである。レジスタントスターチまたは高アミロース食品の利点にも言及されているが、日本人の好む米は低アミロース(高アミロペクチン)である。爽健美茶にも含まれるチコリー(フルクタン)の記述もあるが血糖値への効果は賛否両論である。

果糖について:果物に含まれるような所謂遊離果糖は同カロリーの砂糖やでんぷんより血糖上昇が少ない。また摂取総カロリーの12%を越えなければ中性脂肪も上げない。二糖類やフルクトースコーンシロップに含まれる果糖と遊離果糖は区別すべきである。 人工甘味料;単純に交換使用すれば有用か。 食物繊維;目標摂取量は1000kcal摂取当たり14g。GI(グライセミックインデックス)と混同してはいけない。

おおはしクリニック

脂質;量より質が重要。一過不飽和脂肪酸オレイン酸を含むオリーブオイルは地中海型食事パターンの一部として摂ると仮定し有効と述べている。ω3脂肪酸(EPA、DHA)はサプリメントとしてではなく魚を食べて摂ることにより効果があると述べられている。植物スタノール、ステロールは腸管からのLDLコレステロール、総コレステロール吸収を下げるがカロリー過剰に注意。Enriced food(強化食品):塗る食品、乳製品、穀類・パン製品、ヨーグルト に含まれる。

タンパク質は血糖値を上昇させずにインスリン分泌促進する作用がある。 低蛋白食の糖尿病性腎症への効果は証明されていないが被験者の蛋白制限が不十分だった可能性がある。

ポールマッカートニーが日本にやって来ました。驚くのは71才にしてビートルズ回顧以上に新作発表に意欲的だったことです。若さの秘訣を教わったようで勉強になりました。

参考文献
  1. 宇都宮一典、植木浩二郎: 低炭水化物食(糖質制限食)のリスクとベネフィット. DITN 426: 9月 2013
  2. Evert ABら: 成人糖尿病治療のための食事療法勧告. Diabetes Care 36: 3821-204, November 2013
2013年11月

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