今月の糖尿病ニュース

2013年2月の糖尿病ニュース

今月は看護師長 音喜多が担当致します。
第47回「糖尿病学の進歩」に2月15、16日の二日間三重県四日市文化会館を主会場に聴講してきました。その中から今年の目玉として日本糖尿病療養指導士(CDEJ)と地域糖尿病療養指導士(LCDE)の話題を紹介します。 CDEJは約4000名と数少ない糖尿病専門医と協力して病診連携とチーム医療構築の核になるべく期待され2000年に発足したコメディカル資格で現在日本全国に17000人が活躍しています。1992年の在宅療養指導料、2008年合併症管理料(フットケア)に続き、2012年透析予防指導管理料が創設されたのはその役割実績が認められた証しだと言えます。LCDE制度はCDEJ受験資格である看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士免許を持たなくても糖尿病の療養指導に熱心なコメディカルスタッフ、例えば健康運動指導士などにも受験資格を与えようと地域の実情に合わせてできた制度です。
 今年7月27~28日京都で第1回日本糖尿病協会療養指導学術集会が開催されることが決まりCDEJ、LCDEが一同に会し情報交換する場が得られる事になり、療養指導のコンセンサスと質の向上が期待されています。

さてCDEJ、LCDEに特に期待される分野の一つとして高齢者糖尿病が挙げられます。平成19年には890万の糖尿病患者数に対して2/3は60歳以上、1/4は75歳以上でした。今回の集会でも糖尿病を持つ高齢者を放って置かない、糖尿病を持つ高齢者医療の介護支援に強く係って行ってほしいと呼び掛けがありました。 J-EDIT研究は高齢者糖尿病の血管障害や生活機能障害リスクを明らかにする目的で全国39施設において行われた6年間の前向き追跡調査ですが、シンポジウムではそれをもとに高齢者向けのガイドラインが井藤英樹先生より提示されたので報告します。
1) HbA1c(JDS)目標値:健常高齢者:6.5%~7% 虚弱高齢者:7.5%~8.5% 
2) 脂質:健常高齢者日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患、予防ガイドライン」に従う
3) 血圧:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」に従うが収縮期血圧130mmHg以下の管理は慎重に
4) 体重:標準体重±10% 肥満例は5%の体重減少
5) 食事は魚の摂取を多くし、野菜は70gの緑黄色野菜を含め最低200gの摂取
6) 日常生活に運動を取り入れる 最低週2~3回の15分以上、5000歩の歩行

 坂根直樹先生からは我々糖尿病医療スタッフの基本的姿勢とも言える療養指導における行動変容のスキルについてお話があり、「脅かし」から「やる気を引き出す」方向性が示されました。普段から一番心がけていたことでもあり大変自信になりました。以下抄録と講演内容から。

 

医療従事者がいくら頑張って指導しても、患者さんが実行してくれなくては、良好なコントロールは得られない。例えば「食事制限するとストレスがたまる」「運動する時間がない」「膝が痛いから運動出来ない」と言い訳する患者さんを心理学では抵抗と呼ぶ。社会心理学、保険信念モデルが健康教育に用いられたが、合併症の怖さや食事や運動の治療をしっかりしないと寝たきりになるぞと医学的に脅かし、行動変容を促す考え方であるが限界がある。ちなみに1973年の糖尿病週間標語「身を正せ 必ず長寿糖尿病」、1975年「糖尿病 早く見つけて軽いうち」から転換期を迎え1990年にはエンパワーメントの概念が生まれた。1994年「糖尿病 招くも防ぐもあなたが主治医」、1998年「心地よい汗で追い出す糖尿病」などの標語が選ばれている。現在はテーラーメイドの時代である。患者の価値観や性格タイプを尊重し、エビデンスに基づいた療養指導が行われつつある。
標語も2000年では「血糖値 下げる食事にひと工夫」など選ばれている。
医師が一方的に治療を押し付けるのではなく、患者さん自身が納得して自分にあった目標が持てる。 患者さんのやる気を引き出しながら、一緒に治療に取り組むスタンスが重要である。

 市民公開講座では平岡令考氏より「運動の重要性と継続の秘訣」の講演がありました。
8年間中学、高校教諭として奉職後、現在厚生労働大臣認定健康増進施設長兼鍼灸整体院長を務められ、64才にして走り高跳び、走り幅跳びの現役選手だそうです。
しかし上には上がいて、102歳でも100m走の選手や、また嫁に息子は任せられないと70才でマラソンを始めた女性の話、100まで生きなかったら努力が足りないと負けん気の強い患者さんの話、「糖尿病にならなかったら無能な日々を送っていたと」など日々自分に挑戦し続けている患者さんの話を紹介され、まだまだ頑張りが足りない自分を照らし合わせておられました。PPK(ぴんぴんころり)が理想ですがNNK(ねんねんころり)にはならないようにと一生歩ける人生の秘訣を楽しく聴く事が出来ました。

 当クリニックでは基本的な運動指導のほか患者さんの状況に応じて最近ブームのラジオ体操、ロングブレスや家の中で出来る簡単ストレッチ、その場足踏み、ながら運動を紹介しています。興味のある方にはDVDの貸出しもしています。 またテキストのコピーを渡して実践して帰ってもらっています。フットケアも継続中です。足病変について知らなければ足をみることもなく「前の病院では、足なんか見てくれないし、説明もなかった」という患者さんに足への関心を引き出し一緒にアセスメントし、足の状態に適した手入れ、靴の選び方なども覚えてもらいます。足のマッサージや安眠のツボも好評です。今日の患者さんも足のマッサージの後「幸せな気分で帰れます」と笑顔でした。CDEJとしての仕事の一端を御紹介しましたが気楽に相談して頂けたらと願っています。

 2月24日高知龍馬マラソン(太平洋を望む海辺のコース)に参加して42.195kmなんとか完走しましたが5時間切れは今回果たせなかったので次の課題です。


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