今月の糖尿病ニュース

2013年1月の糖尿病ニュース

境界型糖尿病とHbA1c / 糖尿病神経障害性疼痛の治療

2013年新年あけましておめでとうございます。
元旦は花園ラグビー場に報徳学園の応援に行きました。

おおはしクリニック

新年最初の話題はHbA1cです。御存知のように2012年4月からNGSP(国際標準)値が臨床の現場に登場(旧来のJDS値と併記)し、今年4月1日からは特定健診にも採用されることになり、さらに2014年4月1日からはNGSP値のみに完全統一されることが決まっています。2009年3月WHO国際会議でHbA1cを診断基準に取り入れる方向になった為本格的に日本で国際標準化が推進された(1)ということです。この特集には正常、正常高値、境界型、糖尿病に相当するHbA1c値が示されていますが、WHOやアメリカ糖尿病学会(ADA)ではいわゆる予備軍としてIFG、IGT、prediabetes(前糖尿病)が定義されているのであわせてまとめてみました。

現在のところHbA1c値のみで糖代謝異常の診断はされることなく必ず血糖値の確認が必要ですが将来はどちらか一方のみで可能となれば(ADAではコストや実用性の理由からすでに単独で診断可 )異同について検討が必要です。 例えば(2)ではあるイタリア人集団中、prediabetesは75gOGTTにより42%見つかったがHbA1cを用いると38%に減ったこと、いずれの方法で診断しても一方の基準のみ満たす場合心血管疾患リスクやインスリン分泌低下・抵抗性増大は同程度だったが、両者の基準を満たす群(一致率54%)では悪化が見られたことを報告しています。ちなみに国際標準化しないと日本人で同様の調査をしても外国の成績と比較できないことになるわけです。HbA1cの人種差も将来より明らかになるかもしれません。

もうひとつの話題は慢性糖尿病性神経障害性疼痛治療についてです。 日本糖尿病学会編2012-2013糖尿病治療ガイドによるとプレガバリン(リリカ)、デュロキセチン(サインバルタ)、メキシレチン(メキシチール)、カルマバゼピン(テグレトール)、三環系抗うつ薬(トリプタノールなど)、エパルレスタット(キネダック)が推奨されていますが、アメリカではリリカ、サインバルタ、トリプタノール、ガバペンチンが挙げられ 英国医療技術機構、国際疼痛学会、欧州神経学会各ガイドラインで上位にランクされる薬剤と一致しています。またメディカルトリビューン2013年1月24日号のアンケートによると慢性疼痛に関して医師の約半数は参考にしている指針・ガイドラインが特になく他の医師とも連携せず独力で治療するとのことでした。治療のゴールも痛み、ADL、QOLの改善どれを一番重視するかも意見がわかれるそうです。以上より難しい領域のひとつと考えられますが(4)は参考になる文献です。

おおはしクリニック

試験の期間は約1カ月で、表はプラセボと比較した変化を示しますが○は好ましい効果・影響、△×は注意すべき影響です。痛み自体への効果は有意にあり、QOLの向上はなし(SF-36法で評価したため1ヶ月の変化は反映されにくい可能性が考察されている)、そして薬剤間に差はありませんでした。薬剤間の違いは睡眠の量・質各指標で顕著で日中生活機能、倦怠感めまい傾眠にも見られました。注意すべきは血糖の変化です。日常の臨床では症例ごと適した薬剤を選択する必要性が示唆されました。

    参考文献
  1. HbA1c国際標準化: 日常臨床での運用の実際と啓発の重要性. Diabetes Journal 40, No4: 175-187, 2012
  2. Bianchi Cら: 病態メカニズムと心血管系リスク: 耐糖能診断におけるHbA1cと経口糖負荷試験の違い. Diabetes Care 35: 2607-2612, 2012
  3. Bril Vら:有痛性糖尿病性神経障害治療のエビデンスに基づいたガイドライン: アメリカ神経学アカデミー他3学会からの報告. Neurology 76: 1758-1765, 2011
  4. Boyle Jら: 慢性糖尿病性神経障害患者の痛みに対するアミトリプチリン、デュロキセチン、プレガバリンのランダム化偽薬対照比較: 痛み、睡眠時ポリソノグラフィー、日中の生活機能、生活の質に対するインパクト. Diabetes Care 35: 2451-2458, 2012

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