今月の糖尿病ニュース

2012年10月の糖尿病ニュース

10月14日おおはしクリニックチームとして初めてウォークラリーに参加しました。 スタッフ2名を含む7名で大阪鶴見緑地内4kmのコース上クイズやゲームをしながらのんびり歩き楽しい時間を過ごしました。

おおはしクリニック

今月はEle Ferranini先生(ヨーロッパ糖尿病学会2005~2008会長)のお話を聞く機会がありました。血糖(HbA1c)コントロールについて日頃臨床の場で感じていることがわかりやすいスライドで説明されたので再現してみます。おおはしクリニック

赤線で示すのがよく陥りがちなHbA1cの経過です。一旦は良好な血糖値に到達するものの2~3年後には不良となり薬を追加するも修正がつい手遅れになり後手が繰り返され最終的にβ細胞不全(インスリン分泌不全)になるというものです。緑線がモデルケースですが、最初にHbA1c(NGSP)5.5~6.0%まで落とし上昇傾向になればすぐに薬の追加などで調整していくというものです。ちなみに悪化時経過観察は三ヶ月程度が妥当とのことです。罹患年数、年齢、合併症、社会的状況などを考慮するのは当然ですが「より早期に徹底的に」です。また薬剤の種類が飛躍的に増えた現在、すべての組み合わせにおいて臨床試験を組むのは不可能(数百の組み合わせになる!)なため、個々の適性に応じて組み合わせは決める必要があると述べられました。もうひとつ東邦大学教授弘世貴久先生のお話を聞く機会もありましたが、やはり上記リアルワールド糖尿病治療の現状を反映してか、インスリンにしても経口血糖降下剤にしても目標に到達しても将来の変化に対応できる両方向性をもつシンプルなレジメがよいと強調されていました。 例えばインスリンを中止してSU剤に変更するとインスリン再開は一から出直しになりますが、インスリンは減量(混合製剤の場合回数減)にとどめグリニドを代用するようなレジメは変化に対応し易いというわけです。

おおはしクリニックそこで今回は当クリニック新患、薬剤未使用患者さんの中からHbA1c(JDS)高値(8.3~15.3)のためインスリンから治療開始した人の経過を調べ、諸事情でSU剤から開始した人と比較してみました。

インスリン治療グループのうち半数以上が平均6.7ヶ月でインスリン離脱、経口剤に変更(SU剤2名、メトホルミン2名、アクトス+メトホルミン1名、DPP4阻害剤+メトホルミン1名)となっています。インスリングループでHbA1c5.8未満(優)に達する人が多く、開始6ヶ月後からはSU剤グループよりHbA1cが低い傾向でした(統計的には有意差なし)。 SU剤治療はインスリン治療に匹敵するコントロールを達成するには他2剤の血糖降下剤併用が必要いう報告(1)があり(今回対象の患者さんは0か1剤併用のみ)、またSU剤グループにも大変良好な経過をとる人もいるためどちらがいいか一概には言えません。またインスリン治療を選択した患者さんはもともとモチベーションがあった可能性、社会的背景が違う可能性もあります。しかし今回インスリン治療の方がむしろBMIの増加は少なく、低血糖の頻度も(データはありませんが持続型インスリン13名、混合製剤1名という背景から)大差ないと考えられ、とくにインスリンを勧めるのに躊躇する理由は見当たりませんでした。インスリンと同時に始める自己血糖測定の有用性も見逃せません。

今後の検討事項としてインスリンを卒業した人の再悪化防止が重要と考えられます。

おおはしクリニック

    参考文献
  1. Lingvay Iら: 新規発症2型糖尿病患者にインスリン治療と経口血糖降下剤3種混合治療とどちらがよいか? Diabetes Care 32: 1789-1795, 2009

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