今月の糖尿病ニュース

2012年6月の糖尿病ニュース

おおはしクリニック

6月9日から11日までアメリカのフィラデルフィアで開かれた第72回ADA(アメリカ糖尿病学会)学術会議に参加しました。炎症が2型糖尿病の一因と言われる中、一般のサリチル酸系抗炎症薬の血糖値などへの効果を調べたTINSAL-T2D試験、インスリンの癌や動脈硬化に対する安全性を示し、かつインスリン治療の糖尿病発症予防効果を証明したORIGIN試験、2型糖尿病診断直後からのインスリンまたは経口剤三者組み合わせ療法を開始することにより3年半β細胞保護効果を示したDiabetes Care シンポジウム、境界型糖尿病から糖尿病への悪化は、一回でも正常耐糖能にもどすことにより減らせることを示したADA/Lancet シンポジウム、など日々の臨床に参考になる研究が盛りだくさんでした。 より早く徹底的に血糖コントロールする必要性を改めて認識しました。

おおはしクリニック

グルカゴン、減量またはメタボリック手術、メラノコルチンシステムなども興味深いテーマでしたが、Immunometabolismというタイトルが口演やポスターセッションに新設されたことが注目されました。今年日本の糖尿病学会でも大々的にシンポジウムが開かれた分野ですが、調べてみると昨年その名を冠した第一回国際会議が開かれたことや、NatureReviewImmunologyという雑誌に「Immunometabolism は歴史的に別々だった免疫学と代謝学の接点となる新分野」と紹介されたことがわかりました。肥満が免疫システムに影響し炎症を引き起こし、それが多数の疾患を引き起こすメカニズムの解明が治療法に結びつくということです。

おおはしクリニック

新薬候補の一つTAK-242は細菌毒素または飽和脂肪酸により活性化されるTLR4の阻害剤ですが筋肉組織を使った基礎実験では細菌毒素と飽和脂肪酸によって引き起こされる炎症を抑えインスリン感受性を改善したと報告されました。TLR4はImmunometabolism領域の要の一つです。今後この領域から様々な治療薬が誕生するかもしれません。また、運動や魚に含まれるEPAなどは炎症を鎮め、飽和脂肪酸はその逆の作用を持つという視点は生活習慣指導の際重要と考えられました。


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