今月の糖尿病ニュース

2012年5月の糖尿病ニュース

今年の日本糖尿病学会年次学術集会は5月17日から19日までパシフィコ横浜で開かれました。18日夜の診察終了後上京、翌日は7時半から18時15分までみっちりとハードスケジュールでした。今年から専門医は1単位30分の教育講演を5年間で20単位の履修するよう義務付けられることになりました。はじめと終わりにタイムカード式に出席をチェックされるので学生時代のようで少し抵抗がありましたがいい勉強になりました。1年あたり4単位とれば間に合う計算ですが学会に行けない年もあるので目一杯の8単位取りました。新しく知ったことのひとつ(やや遅れていますが)、糖尿病カンバーセーション・マップTMというシステムは当クリニックでも是非一度取り入れてみたいと興味を持ちました。もっとも内容的に患者さんとよく話をするというスタイルは従来モットーにしていたことではありますが。もうひとつ足潰瘍の神戸分類の話もなるほどと非常に頭がすっきりしました。フットウェアの選択が重要な胼胝下潰瘍、亀裂、水疱、シャルコーフット、ハンマートゥーをType1、皮膚潅流圧測定とアンギオゾームに基づいた血行再建術をまず行ってから切断を考える重症虚血肢をType2、早急な処置の必要な急性軟部組織感染症をType3、血行再建術とデブリードマンを同時に行うのがクリティカルな神経障害、虚血、感染がすべて関与するものをType4、の4つに分類するということです。4つの病態に分けて考えることが、後々一番予後を左右する、歩けるか歩けないかを決めることを肝に銘じねばなりません。教育講演に時間をとられたので残りはカーボカウントと腎症合併時の低蛋白食について、シンポジウムに出席しました。会場は昨年同様か以上に超満員でした。カーボカウントで重要なことは炭水化物を多く少なくではなく1日または1食ごと一定量の炭水化物をとることで、そのために食品交換表をマスターしたうえに食事メニューの炭水化物を計算する技術を習得することが強調されました。極端な低炭水化物食の弊害として動脈硬化のほか、痩せ型の糖尿病患者では血中遊離脂肪酸が上昇する機序で血糖値が上がる例が報告されました。低蛋白食は透析を5年近く遅らせることも可能だが栄養指導・評価が10回以上必要なことが強調されました。低蛋白食の効果が見られない場合は実際できていないことが多いそうです。

学会には医師のみならず糖尿病療養指導士も多数参加しますが、以下音喜多看護師長の学会報告です。シンポジウムでは糖尿病療養指導のセクションを聴講、ポスター発表、展示ホールめぐりと合わせて夕方までフルに参加して来ました。

ポスターで興味深かったのは「夕食後のフルーツはbad!果物過剰摂取が動脈硬化を進展させる可能性」というタイトルの長野県の鹿教湯病院付属豊殿診療所からの発表でした。脳梗塞の原因が果物摂取と関連あるのではないか仮設を立て、実際に果物摂取を禁止してもらって血中脂質検査や頸動脈エコーの変化を見たものです。果物中止3ヵ月後にレムナントリポ蛋白コレステロールと頚動脈IMTが揃って改善したとのことですが、脳卒中患者アンケートで果物1日5回以上摂取が87%また夕食後摂取が49%に昇る結果にも驚きました。また脂質への悪影響は夜食べることでさらに増すことも示唆されたそうです。しかし今回一番の教訓は果糖のたくさん入った食品が、主に経済性から(芋から製造可能)砂糖に変わって非常に多用されている現状を知ったことです。清涼飲料水はまだしも、めんつゆ、てんつゆ、納豆のたれなどの甘みもほとんどすべて、果糖を主成分とするブドウ糖果糖液、果糖ブドウ糖液、または異性化糖と呼ばれる糖由来のものだそうです。例えば極端な話、めんつゆにつけて天ぷらを食べると糖と油が100%吸収されなんと28倍の動脈硬化を進展させる原因となるそうです。なおアメリカでは高フルクトースコーンシロップと呼ばれています。

展示ブースでは、BDオートシールド(針刺し損傷防止機構付きペン型注入器用注射針、食経験が400年にわたる伊那食品の「寒天」に工夫を凝らした商品が目につきました。


(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社ネット引用)
もともと針カバーにより看護師の針刺し事故防止のため開発されたようですが、患者さんが自己注射する場合には視覚的に針の恐怖心が無くなるので針恐怖症の患者さんには画期的な製品であり、必要時購入してスムーズにインスリン療法が受け入れられるように配慮していきたいと思います。また抜針後自動的に金属ストッパーが作動し針カバーがロックされ針が露出しないため、青染みになる抜針時の針刺し損傷を避けられるのもよいと思いました.

寒天商品は前から勧める事ができないか?と気になっていましたが、今回多数のサンプルを頂いたのでクリニックで展示しています。スープ用寒天、ごはん代わりのつぶつぶ寒天、ゼリーの素で間食用に提供出来る寒天などたくさん種類があります。

今回のメインテーマ「DREAMS come true」糖尿病克服という夢を実現のために出来る限り色んな学会や講演に参加して最新の情報を提供出来るようにして行きたいと思います。


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