今月の糖尿病ニュース

2012年3月の糖尿病ニュース

2012年2月25日神戸で開かれた第10回近畿SMBGセミナーに参加してきました。
心臓病センター榊原病院・内科部長清水一紀先生の「SMBGの指導の達人になる方法」とPOCT(後述)について独立行政法人産業技術総合研究所 桑克彦先生とおおくまリハビリテーション病院検査技師 田島直人さんから講演がありました。

清水先生の講演は現在約60万人超が利用していると言われる血糖自己測定(SMBG)について効率よく測定し、必ずしも眠前は測定しなくても良い。運動をした日、運動しない日では血糖値はどのように変わるのか?運動した記録を日記のように血糖自己測定ノートに書き込んでみると、運動と血糖値の関係がみえてきて、「血糖値の単なる羅列ではなく、将来の成長のために、過去の振り返が出来るツールに変えて行く事がself-management of blood glucose(SMBG)と話されました。
違う角度から例えばドカ食いした時など?またゆっくり食事をした後など新しい発見をする為に活用する、SMBGの解析は高い所をみつけるのではなく、変動している血糖に目がいくように気づき、解釈をする事が肝要であると述べられ、また食後血糖は食事記録とセットで把握し血糖日記を勧めているそうです。
SMBGを用いた生活指導によって患者さんの自己管理が改善していく具体的な方法について解析している著書を私も読んで患者さんの役に立てる情報を得たいと思います。

最近当クリニックでSMBGを開始した人の声です。
  • 患者AさんはSMBGを頼もしい助っ人として使用、日々血糖と奮闘中「なんで家と病院で10も違うんですか?」;自己血糖測定器は毛細血管全血(栄養を配っている血液)測定であり病院の静脈血漿(栄養を配って帰ってきた血液)測定に比し、高くなる要素(毛細血管>静脈)と低くなる要素(全血<血漿)が混在しているがメーカー独自の補正機構によって同一になるようプログラムされている、しかし精度が約±10%対±5%のため最悪15%の差が生じる可能性がある事を説明しました。また同じ空腹時血糖でも早朝と午前9時で異なる、いわゆる暁現象のある可能性、空腹時間の長さによる違いも考慮すべきと思います。
  • 朝食前血糖が200以上から毎日少しずつ減って130以下になり思わず「るんるん」はしゃぐ83歳の女性患者Bさん 努力の甲斐あってやっと達した値。
  • 患者Cさんは130の数字を見た時「間違いかと思った」と喜びの声、本当に下がるか心配していた心の葛藤に第一目標に到達した事に一緒に喜びまた次の目標へと。
  • 「羊羹3本食べても140以上ならない、糖尿病が治ったんですかね?」と安堵の患者Dさん 「したらあかんのですけど、いいでしょう」間食で実験してどうなるか分析派のDさんまずは上がらない事を良かったと評価してあまり無茶な実験は程ほどにして下さい。
  • 「とにかく気をつけて食べたのに高い」また「気をつけて食べていないのに低い」と食べ物と相関しないと悩む患者Eさん その日の体調や、消化吸収でも違う事もあり、摩訶不思議な値は星占いだと思ってそういう時もあると話しました。
  • ただ漫然と低い値がと良いと思っている患者Fさんのノートには50以下の数字が散見されびっくり 無自覚性低血糖について説明しました。
  • SMBGは値に一喜一憂するのが大事とはいうものの、あまり考え過ぎず前向きにとらえてよい状態を維持する事が大事とエールを送りながら日々奮闘する毎日です。

もうひとつ2011年順天堂大学から出た報告から
  • 果物のキゥイ、グレープ、オレンジを摂取し手洗いせずに血糖を測った10人の患者さんを対象にしたデータでは元々血糖95mg/dlの人がオレンジで171、ブドウでは何と360まで上昇したそうです。手洗いをせずに、アルコールだけで消毒のあと測定しても オレンジは119、ぶどうは131と上昇しています。ひょっとしてまさか食べ物摂取後異常に高かったら影響?大ですね。
    みなさん果物に限らず、食べ物を触った後は流水でよく手洗いして測定してくださいね。アルコールで拭いても完全に取れないことも気をつけてください。

POCTとは最近病棟で普及し始めた院内血糖測定器のことで1.2μLと微量検体にもかかわらず測定範囲が通常の20~600mg/dlより広く10~900mg/dlまでの測定が可能、ヘマトクリット測定により補正機能向上、溶存酸素の影響なし、干渉物質アセト酢酸・ビリルビンなど他20種の影響を受けない、測定時間は6秒と迅速、電子カルテへのデータ転送可能、大きさは携帯電話大、などすぐれた機器です。落下防止のストラップホールもついて、シンプルで簡単な操作も売りのひとつです。検査室での生化学分析装置と同等な分析性能で高い相関性を実現しているそうです。 POCT 対応装置導入数の増加に伴い、POCTを円滑にしていく為にPOCコーディネータが誕生したそうですが私は初めて聞きました。故障時対応に応じ5年毎の更新が必要であり現在100人程いるそうです。

おおはしクリニックすでにご承知の方も多いと思いますがヘモグロビンA1Cが2012年4月1日から国際標準化を受けてNGSP値にて測定され表記されることになりました。世界的に広く使われているNGSP値がグローバル化の現代では、日常診療でも使用することになりましたが、混乱を避けるため、暫くは両値を一定期間併記して行きます。これまでの診療で表記していたJDS値はわが国のみでしたが 世界で発表する際には、NGSP値が広く使用されている為、今後世界での発表に参加出来ないことも懸念される原因になっています。
何故0.4%+するのか?ですがNGSP値=1.02×JDS値(%)+0.25%にて表記される為0.3~0.5%高値の為0.4%+する事になっています。 この説明をどのように患者さんに伝えたらよいかの会場での質問に今までは「方言の言い方だった」が今度は「標準語に変わった」と説明がわかりやすいとの回答でした。 糖尿病手帳にはJDSと NGSPの記載欄が有る為当院でも依然のJDSの測定器の為0.4を+しないといけませんが暫し混乱すると思いますので、ポスターやリーフなどで切り替えていけるように配慮して行きたいと思います。 


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