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糖尿病ニュース

 先月NHKためしてガッテンで放送された「○○で糖尿病が治る!」(○○は番組途中でインスリンだと明かされます)は反響が予想されたので私もしっかり見ました。治るとは寛解の意味かとは思いましたがわかりやすい説明は患者さんたちに好評でした。もとになったデータは紹介されませんでしたが、2008年Lancet誌に発表されたWengらの論文もその一つだと思われます。以下その概要です。

 初めて2型糖尿病と診断された平均51才、平均HbA1c9.5~9.8%の中国人患者300数十名を3群に分けインスリンポンプまたは強化療法、経口血糖降下剤により4~9日で血糖値を食前110、食後(2時間)144mg/dl未満にコントロールし(達成率はインスリン使用95~97%、経口剤使用83%)、到達後2週間で薬剤は中止、食事運動療法のみとし、1年後にも食前126以下、食後198以下を保っていたものを寛解と呼びそれぞれ45~51%、27%だったというものです。他の研究でも寛解率はせいぜい26ヶ月後で69%でした。

 次に興味のある点、寛解したひとのβ細胞は完全復活したかどうか? Diabetes Care 8月号の上記研究続報によると、インスリン抵抗性に打ち勝ってインスリン分泌する能力を指標にした場合、耐糖能正常者レベルまで復活した人はごく一部で平均すると境界型糖尿病の人レベルまでだったようです。またHOMA指数、糖負荷後のインスリン反応をもとに分析するとインスリン治療で一番回復するのはインスリン感受性であり、とくにインスリン中止直後はほぼ正常レベルにもどるようです。しかしインスリン分泌力は60%程度の回復に留まりました。

 やや期待はずれの結果ですがもし同じ初診患者でも境界型糖尿病やHbA1c6.1~8台程度のより軽症者にこのインスリン短期治療を行ったらどうなるか 初診で機会を逃した場合何年目までなら適応あるか? 低血糖・体重増加がなければ短期治療にこだわらず長期継続したらより優れた効果がでるか?いずれも日常臨床上大きな問題で今後の課題です。
UKPDS研究によると糖尿病歴の長いA1cの高い人にはインスリン療法といえども効果は年々低下することが証明されていますがAlvarsson らが2003年Diabetes Care誌に発表した成績からはA1c7.3レベルで病歴が2年以内の人ならインスリン治療継続中グルカゴンテストによるインスリン分泌反応は1年目より2年経過時のほうが良好だったことより、患者の背景、インスリン治療の質・期間に左右される可能性もあると思われます。

 もうひとつ難しい問題ですが血糖降下作用(糖毒性解除)以外の何がインスリン療法の特徴か?NFκB抑制による抗炎症効果、遊離脂肪酸抑制による脂肪毒性解除(インスリン分泌および感受性改善・脂肪肝改善効果)、脂質異常症改善効果、血管内皮機能改善効果などが挙げられています。

2011年11月

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