今月の糖尿病ニュース

10月の糖尿病ニュース

糖尿病ニュース

 内科においても日常診療で突然の片足の発赤、腫れ、熱感、痛みの訴えに出会うことは稀ではありませんが、もし患者さんが糖尿病歴15年以上で神経障害の強い人なら、忘れてはならないのがシャルコー神経障害性骨関節症(シャルコーフット)です。1883年シャルコーが発表以降有名な割に科学的な治療法が確立していないため六カ国18名の専門家部隊(タスクフォース)が今年1月パリに集まり、6月に学会報告、9月に合意声明(コンセンサスリポート)をDiabetes Care誌上に発表しているので紹介致します。

 定義;糖尿病を主とする知覚・運動・自律神経障害をベースに、骨代謝障害などが絡まりときに軽微な外傷などがきっかけになりおこる急性限局性炎症で骨破壊、亜脱臼、脱臼、変形(頻度が高いのは足底がロッキングチェア様になるもの)に至るもの。 急性期の痛みや不快感を特徴とするものの知覚正常者で想定されるものより弱い。

 分類;急性(活動性)と慢性(非活動性)に分類できるが区別に明確な基準はない

糖尿病ニュース

 臨床的意義;足潰瘍から足切断に至る原因としてのみならず死亡率を1.5~3倍以上に引き上げる。早期発見早期治療が重要で予後の鍵である。Wukichらは診断治療が発症後1カ月以内と2カ月以降では骨折・変形など合併症の頻度に4倍以上の差(14%vs67%)がでると報告している。

 病因;他の知覚神経に比し比較的機能が残存した神経因性血管反射による血流増加を介して骨吸収がおこる 痛みが弱いため繰り返しおこる骨折からTNFα・インターロイキン1βが持続的に放出され、NFκBを活性化するRANKLを増加させ最終的に破骨細胞を刺激する。(RANKLはグルココルチコイド・PTH・脂質異常症・活性酸素・AGEによっても増加し、性ホルモン・カルシトニン・CGRP・レプチン・IAPP(アミリン)によって抑制される。RANKLを中和するOPGを加えても亢進した破骨細胞活性は完全に抑制されないのでRANKL以外の破骨細胞活性化因子が想定される。) 神経末端より放出されるCGRPは神経障害のため減少するが、結果としてRANKL活性増加(先述)のみならず関節包維持不能になり脱臼しやすくなるといわれる。 その他骨密度減少(ビタミンD不足による二次性副甲状腺機能亢進症から、1型ではインスリン・IAPP不足から)、骨髄炎の波及(足潰瘍、感染、術後)、 血行再建術後状態も関与する。

 診断;初期(ステージ0)にはX線写真で異常のみられないことがあり早期診断にはMRIが有用。PET/SPECT CTは骨髄炎との鑑別に有用。限局性の皮膚温上昇、脈の増強も大事な症候。蜂窩織炎、深部静脈血栓症、痛風と鑑別を要す。

おおはしクリニック

治療;早期の免荷(キャスティング)が最重要で2~11ヶ月ときに2年以上行う。薬剤はビスフォスフォネート(治療期間の短縮が期待される)カルシトニンが使われるがまだ十分なデータはない。抗RANKL(DENUSOMAB)、抗TNFα剤治療も試みられている。無効の場合手術が行われる。

以上が要旨ですがリスクの高い患者さんを抽出して該当症状があればすぐ受診してもらえるよう啓蒙が重要と思われました。

2011年10月

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