5月の糖尿病ニュース
日本糖尿病学会年次学術集会in札幌市
今年の日本糖尿病学会年次学術集会は札幌市で5月19日から21日まで開かれました。私は土曜日全日出席し、日曜日は一度訪れてみたかった歴史ある北海道大学の広大なキャンバスを歩いてバーベキューの煙の中濃いピンクの桜と新緑を満喫しました。数年前台風で大きな被害を受けたというポプラ並木ですがそれでも高く長くノスタルジックでした。
今回の目玉は一昨年暮れ登場したインクレチン関連薬について全国からの臨床報告だと期待していましたがもう少し時間が必要かなという印象でした。しかしカーボカウント法のシンポジウムは、それだけでも遥々北海道まで行った価値がありました。意外にシンポジウムが開かれることが少なく、満員になって議論が白熱するなどさらにめずらしい食事療法の分野にあって今回の盛況は、輸入されてまだ5年たらずのこの新しい考え方が(複雑な和食中心の)日本でも今後普及していくものと感じさせました。糖尿病の食事指導は従来から食品交換表に基づいて行われていますが、栄養素を過不足なくとり(単位数すなわちカロリー数できまる)体重をコントロールするには十分であっても(炭水化物量と相関の高い)血糖値の微妙なコントロールにはやや実用的でない面がありました。以前何度かこのニュースで取り上げたのは、炭水化物量によってインスリン単位調節をおこなう「応用」カーボカウント法ですが、次回改訂食品交換表に導入される予定の「基礎」カーボカウント法は、各食品または献立ごとに炭水化物のグラム数を計算して過不足(最低一日150g、おおよそ一食当たり指示カロリー÷20 g)なく3食バランス良く配分して血糖を安定させる方法で、血糖が気になる人すべてが対象になります。炭水化物量をコントロールするのが目的ですから、当然菓子類もかなりの比重をしめるのでどう扱うか質疑応答があり、付録扱いにせずメインに昇格させるかどうか“検討”されることになりました。患者さんのエンパワーメント(主体性をもってコントロールにつとめる)を重視するグループからはモチベーションを高めるために間食やアルコールなどの嗜好品をもっとわかりやすく記載すべきという意見、一方管理栄養士からは決して積極的に勧めるものではないので慎重にという意見が出ました。またグライセミックインデックスは調理法で大きく変わるので参考程度に、1500・1800ルールは個人差が大きく使わない、1カーボを10gか15gとするかは本質的な問題でなく(カーボという単位はなくてもよい)、用語を統一すべき、という提案もありました。
では基礎カーボカウント法を用いた栄養指導は具体的にどうなるのでしょうか?例えば今まで「表1から3単位」は「表1、2、4、6(3、5は炭水化物を含まない)から炭水化物合わせて80(注:数字は正確ではありません)g」になるのか、阪大の研究によると標準的糖尿病食の副食には20gの炭水化物が含まれるので、「主食と嗜好品あわせて残りの60gとる」になるのか? もし真ん中の方法であれば計算は大変になるので定番メニューごとにデータベース化するとよいかもしれません。炭水化物とは食物繊維やソルビトールなどの糖アルコールも含みますが前者は5g以上の場合カウントする、後者は実際のグラム数の半分をカウントするとされています。
低炭水化物食の勧めとよく誤解されるカーボカウント法ですが、正しく理解して血糖
を安定させたい時特に便利な方法として活用していきたいものです。
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