今月の糖尿病ニュース

4月の糖尿病ニュース

東北地方の桜も咲き始めました。

さくら

 最近、ある新聞一面広告をみた複数の患者さんから、「血糖の下がり過ぎはよくないんですか?」「HbA1cは7%がベストなんですか?」と質問がありました。その広告は医師の自分が糖尿病になった体験を対談形式にしたもので私も目を通していたのですが、案の定患者さんは迷ってしまいました。アメリカで行われたACCORDという研究があり、HbA1c6.0%(日本のHbA1cに換算して5.6%)を目標にインスリン治療などを行ったグループは7.5%(同7.1%)を目標したグループより死亡率が高かったということが2008年に発表されたのですが、これを引き合いにしたものと思われます。しかしその後患者背景別に検討したところ、下げた方が良い場合と悪い場合に分けることができました。下げるとよくない患者さんとは、もともとの血糖コントロールが悪 く8.5%(同8.1%)以上、神経障害が強く、アスピリンを処方されていた患者さん、つまりはじめから動脈硬化疾患のあった人たちでした。従って多くの患者さんには従来通りまずHbA1c6.4%を目標と説明しています。

血圧

 「下がり過ぎに注意」といえば血圧も同じで、ノボ社のDITNという糖尿病ニュース新聞で埼玉医大の片山茂裕先生が(ACCORD血圧試験等の結果より)、とりあえず130/80未満を目標とするも個々の患者さんの病態に合わせて過度の低下に注意しようとメッセージを発しておられました。今一番問題になるのは130台/80台の人に薬を勧めるかどうかですが、こうした観点で興味深い論文がDiabetes Care誌2011年1月号にありました。 冠動脈疾患の合併者において、全死亡・心筋梗塞リスクと拡張期血圧値の間にJカーブ現象があること(INVEST試験)や、一般人を対象にしたFramingham Heart試験で拡張期血圧70以下の人は心血管疾患のリスクが高いことはわかっていましたが、このVADT試験(1700名以上の糖尿病・米国退役軍人を7年以上追跡調査して血糖コントロールと合併症出現の関係を調べた有名な試験)で得られた血圧データを分析した論文では、降圧剤をのんだ上での血圧を収縮期と拡張期に分け様々なパターン(両方高い、片方だけ高い、片方だけ低いなど)と心血管疾患のリスクを比較しています。

結果は;
収縮期血圧140以上はリスクが高い。
拡張期血圧70以下は同じぐらいリスクが高く60以下はさらに高い
収縮期血圧130台、拡張期血圧80以上は上記2項に当てはまらねば有意なリスク上昇はなかった
収縮期血圧が105以下でも拡張期血圧が70以上ならリスク上昇はなかった
収縮期105~129/拡張期80以上(脈圧が低い)はリスク上昇なかった

 以上より収縮期血圧130~145でも拡張期圧が70以下の場合降圧剤追加は控えた方がよいということになるわけですが、PWV検査(血管年齢検査)の問題ない人、若い人、女性では当てはまらない可能性もあるとしています。 すべての人に低ければ低いほどよい、のではないことを肝に銘じたいと思います。

 

 

 

2011年4月

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