今月の糖尿病ニュース

3月の糖尿病ニュース

 3月19日午後、東日本大震災被災地への黙祷に引き続き、1型糖尿病の勉強会・交流会DM VOXが大阪森ノ宮で開かれました。カーボカウント、インスリンポンプ、連続血糖測定などが年々実用的になっている一方で、今回1型糖尿病の予防・進行抑制、膵移植・再生医療についてあまり大きな話題は出ませんでした。

おおはしクリニック

 そんな中海外ではどうかというとアメリカ糖尿病学会誌Diabetesは2011年1~3月号巻頭に1型糖尿病の予防・治癒に向けてのメッセージを載せています。なんでも今年は抗原特異的免疫療法GAD-alum、非特異的免疫修飾療法Anti-CD3など内因性インスリン分泌保持を目的とした進行抑制(3次予防)薬の大規模な重要治験結果が発表される年にあたるそうです。1型糖尿病の自然経過は個人差が大きいものの平均すると発症後最初の12~18ヶ月に年間30∼40%の割で直線的にインスリン分泌が低下することがわかってきていて、インスリン分泌は試験食摂食時の血中Cペプチドの総和で評価することも標準化されているとのことです。また治療は発症3~6ヶ月の早期に開始しなければなりません。今後の研究発展はこれらの治験に有望な結果が出たうえでかつさらに治験患者さんを集め、企業が予算を節約できる方法を考えることが鍵と述べられています。患者さんは偽薬に当たる可能性があれば当然躊躇するため、(自然経過がわかった今)偽薬を用いない試験をするべきで製薬会社も費用が半分ですむのでメリットは大きいと言っています。また最初の3ヶ月で効果の見られない薬は、過去の例からその後効果が出る確率は極めて低いので、試験中止にすることも現実的としています。

おおはしクリニック

 1型糖尿病は発症しやすい遺伝子をもつ人が、まだ十分解明されていない環境因子が引き金になって膵島炎がおこり自己抗体出現の後、食直後のインスリン分泌低下による境界型糖尿病から糖尿病へ進行します。したがって先にのべた3次予防の他、1型糖尿病患者の子供などハイリスク者にDHA投与やカゼイン除去を試みる環境因子をターゲットにした1次予防、インスリン分泌低下の始まる前にインスリンを経口投与して免疫寛容を目指す2次予防がすでに試験中であり、さらに抗IL-1・抗TNF・GCSFやおなじみのGLP-1関連薬も今後治療薬として考えられているそうです。その他、β細胞の移植に伴う免疫の問題解決、β細胞以外からインスリン分泌する細胞の作製、β細胞機能と量の保持法確立などが今後の課題です。

 

 

 

 

 

 

2011年3月

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