今月の糖尿病ニュース

1月の糖尿病ニュース

おおはしクリニック・フットケア 今月の糖尿病ニュースは私看護師長、音喜多が担当致します。今回当院でも実施しているフットケアについて紹介します。

 糖尿病は複雑な病態を持ち、種々の臓器に障害のでる全身性の病気です。糖尿病性神経障害は境界型糖尿病の時点から起こり、最終的には神経がなくなってしまう病気です。
その結果感覚がないため足の炎症が放置され壊疽となります。
糖尿病で治療中の患者さんの内、足壊疽の合併率は平成9年の0.4%から14年には1.6%と増加しています。下肢切断に至る人は糖尿病患者10万人当たり5.8人、これに予備軍の分も含めると日本では年間1200本の足が切断されていることになりますが、正確には、足趾レベルまで合わせると、もっと多くの切断が行われていることになります。こうした事態に対する危機感から最近、足病変のハイリスク患者さんに重点的フットケア指導を行うことが保険診療として認められました。

私がフットケアを始めたのは目の不自由な患者さんから「足の爪を切って下さい」と頼まれたことがきっかけでした。メタボのお腹が邪魔して爪を切ることが出来ない患者さん、はたまたとんでもないびっくり症例は足の爪をむしって爪のない状態で所々血まみれになった患者さん、白癬(水虫)で肥厚爪、混濁の強い状態で、今まで感染しなかったのが不思議なくらい、「昔からや」と水虫からなるとは思ってもいなかった患者さん、陥入爪(巻き爪)で炎症を起こして、痛痛しそうに、ヒールを引きずりながら「痛いんです」と受診日まで我慢していた患者さん、友達が切断を宣告され自殺したと話され「あないなったらもう終わりやな、だから足は毎日気をつけてみてるんや」と深刻そうに話してくれる患者さん。患者さんの体から発する声に耳を傾け、耳をすますことがフットケアの第1歩と認識した出来事でした。
Yさんは、糖尿病に加え閉塞性動脈硬化症も合併した患者さんですが、最近転倒して小さな傷を作り、最初はそうたいした事はないと自己判断して少し痛いが我慢して2日程いつも通り仕事を続けて様子をみていました。足の細胞に必要な栄養や酸素が十分に行き届かず、怪我が治りにくい状態でした。いよいよ3日目、痛みもあり、赤く炎症を起こして受診されました。蜂窩織炎をおこしていたので抗生剤の点滴、インスリン治療を開始し整形外科にも診ていただき排膿処置をしていただきました。苦痛な表情で、「早く行けばよかった」と話してくれました。入院して安静にするほうが早くよくなると再三申しましたが、外来治療を望まれ毎日勤務終了後通院して点滴治療を1週間程続けました。その甲斐あり今では、傷痕もわからないくらいよくなっています。

おおはしクリニック 自律神経障害により、汗の量が減り皮膚が乾燥して、亀裂が生じやすくなります。日照りが続くと大地が乾燥してひび割れるのと同じことです。また踵の肥厚型白癬からも亀裂は生じます。かかとの乾燥がきつい場合に軽石でこすり、傷を作ることで感染して悪化の一途を辿ることにもなりかねません。保湿の必要性、清潔について、足指の間、踵、足の裏はみえにくいのでよく観察しながら洗うように指導して、未治療の白癬を認めた場合は皮膚科受診の必要性を説明し勧めています。

知覚神経障害で、痛みや熱さを感じにくくなりけがや、やけどをしても発見が遅れ
重症化する場合もあります。運動神経が障害されると、筋肉の動きが悪く、関節が拘縮して足の変形がおこり、同じ部位に圧迫が加わり胼胝を形成していきます。 
「傷を作らない」を鉄則に1日1回は足を見ましょうと声かけしています。目の不自由な患者さんや、一人暮らしでフットケアが必要な患者さんには受診毎の足チェツクを行い足病変の早期発見に努めています。

足の脈の触れ方、爪の切り方(スクエアカット)、靴の選び方も指導しています。
黄色いポスターで啓蒙活動しながら年に1回は最低足のチェツクをするようにしていますが、足のことで気になる、心配なことがある、自分で爪きりの処置ができない、などがあれば気軽に相談して下さい。
今後は爪切りのほか足浴、胼胝削りなどもできるようになるのが目標です。

おおはしクリニック
2011年1月

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