今月の糖尿病ニュース

11月の糖尿病ニュース

おおはしクリニック11月の糖尿病ニュース

 今年は紅葉が本当に鮮やかです。
  最初のニュースはこれまでも何度か取り上げた低炭水化物食の話題です。日本糖尿病学会「食品交換表」編集委員会委員長を務められる杏林大学の石田 均教授がある講演会で、食品交換表はカーボカウントの考え方(炭水化物の量に従ってインスリン量を調節すること)をとりいれて次回改訂準備中であること、低炭水化物食はメタボと異なった機序で動脈硬化を促進する(New England Journal of Medicine 2009などに詳細)ので絶対反対の立場であること、を明かされました。どんな交換表ができるかとても楽しみになりました。
 しかし最近の国立国際医療研究センター、国立がん研究センターの研究 によると白米のとりすぎには注意が必要です。見合った運動量の確保や玄米を取り入れることなどが提案されています。

おおはしクリニック11月の糖尿病ニュースもうひとつは日ごろぶつかる難問にヒントを与えてくれる論文(Diabetes Care 10月号p2266-70)を紹介します。メタボリック症候群の患者さんは早期に体重減量や運動・食事療法に取り組めば薬なしで済む反面、糖尿病に進展したり動脈硬化などの合併症が進んだりやや手遅れになると5種類以上の薬が処方されることが珍しくありません。従って一つでも処方を減らすことが要求されます。たとえば中性脂肪とコレステロールが両方とも高い糖尿病患者さんを治療する場合、中性脂肪の薬(F薬とします)とコレステロールの薬(S薬とします)は、両方使わずどちらかを選ぶことが実情です。F薬とS薬の比較検討は今までもいくつか行われていますが、この論文ではメタボの人を境界型糖尿病が合併しているか否か、さらに合併した場合空腹時に高いタイプか食後に高いタイプかに分けて、タイプ別にどちらの薬がより有効または安全か述べています。たとえばF薬の特性は境界型糖尿病の人の血糖値を下げることがあげられ3ヶ月治療後に空腹時血糖は6mg/dl、 糖負荷試験2時間血糖は12mg/dl、HbA1cは0.7%、HOMA指数は2.0改善していました。一方S薬には境界型糖尿病の合併有無に関係なく血栓形成に関与するPAI-I、超悪玉コレステロールである酸化LDLを下げる特性がみられました。個々の数字でなく、結局心臓や脳の病気を減らすことが重要という意見もありますが、糖尿病になる可能性の高い人などには無視できない数字ではないでしょうか。ちなみに境界型糖尿病や軽症糖尿病の糖尿病合併症抑制に対する効果がS薬はもちろんのことF薬でも実証されています(Field試験)。またこの論文著者は食後高血糖型にはF薬を、食前高血糖型にはS薬を提案しています。

おおはしクリニック11月の糖尿病ニュース

他の医師とも意見を交換しながら一人一人に合ったチーム医療を心がけたいと思います。

2010年11月


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