9月の糖尿病ニュース
朝晩は涼しい風と虫の音が心地よい季節になりました。今回はこの1~2年話題になっている「糖尿病と癌の関係」についてです。経緯は昨年ヨーロッパから糖尿病治療薬ランタス使用により癌の増加が疑われるという“吟味不足”の論文が発表されたのを発端に議論が巻き起こり、昨年7~12月に日本糖尿病学会・厚生労働省から“これらの論文からだけでは、何らの結論を出すことは出来ない”“ランタスを含むいずれのインスリン製剤においても新たな安全性対策の必要はない”と指針が発表され、今年7月にアメリカ糖尿病学会と癌学会から合同コンセンサスレポートが機関紙に発表され、というものです。
そこで「9月の糖尿病ニュース」ではこのレポートの紹介と日々の臨床でどう対応していくべきか考えてみました。
レポートの内容は
- 糖尿病(おもに2型)は肝・膵・子宮内膜・結腸・直腸・乳房・膀胱癌発生リスク上昇と関連する。しかし肺がんなどとは無関連である。前立腺がんは糖尿病でリスク減少とされるがテストステロン(男性ホルモン)が低いことが原因かもしれない。乳がんはインスリン受容体を持つのでインスリンの量、受容体の量が発症・予後に関連する可能性がある。高インスリン血症は女性でテストステロンやアンドロゲンを増やし乳がん、子宮内膜癌を増やす。
- 糖尿病およびいくつかのガンの間には年齢、肥満、食事そして運動不足といった共通の危険因子が一部関係する可能性がある。
- 糖尿病とガンの背景には高インスリン血症、高血糖ならびに炎症が直接相関するメカニズムがあるかもしれない。
- 健康的な食事(肉類を減らし野菜、果物、無精製穀物、食物繊維をとる)・運動・体重コントロールは2型糖尿病ならびにいくつかのガンの予後を改善することから、あらゆる人に推奨される。少量のアルコールは糖尿病発症に無関係かむしろよいが、癌には少量であっても悪い(とくに口腔、咽喉、食道、肝、結腸、直腸、乳癌)。
- 主治医は糖尿病患者に対し、それぞれの年齢や性別に応じた適切なガン・スクリーニング検査を受けるよう強く推奨すべきである。
- メトホルミンはいくつかの癌の発生を低くし予後を改善する可能性がある。
- 癌発症リスクが明らかに高い場合には(あるいは特定の癌に対する再発リスクがある場合)、治療法をより注意深く考慮する必要がある。
以上より人種差も考慮すべきですが
| A: | 体重の管理 |
| B: | 野菜摂取の励行、嗜好が合えば玄米、全粒粉パン、全粒シリアルも勧める |
| C: | 運動の励行、厚生労働省エクササイズガイド2006などを参考にして可能であればややきつめの運動も取り入れてもらう |
| D: | 便潜血(大腸癌)検査・腹部エコー(肝臓癌・膵癌)の定期検査を行い、乳がん検診を勧める、貧血・血尿・不正性器出血に注意する、肝機能検査・膵酵素・腫瘍マーカーを定期的に測定する |
| E: | メトホルミン(メデット、メトグルコ、メルビンなど)は不利益な情報がきわめて少なく、確定ではないが有望な利益が多いので上記の癌の既往やリスクの高い人には積極的に使う、 などが現在考えられる日常の指針と考えられます。 |
2010年9月
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