今月の糖尿病ニュース

1月の糖尿病ニュース

アイスクリーム 皆さん、あけましておめでとうございます。
2010年1月の糖尿病ニュースをお届けします。今回は低血糖についてです。

 低血糖とは一般には血糖値70以下のことです。強い血糖降下剤やインスリン治療中の方におこります。なぜ低血糖が悪いか?意識がなくなって救急車で運ばれる、自動車運転中に事故が起きる、これが第一です。次に心臓への悪影響があります。血糖値が低くなりすぎると交感神経が興奮して不整脈や心筋梗塞がおきます。最近のトピックスは脳への影響です。
アメリカ糖尿病学会誌2010年1月号の巻頭言に「血糖と脳」について記事があり、原著や電子速報でも様々なニュースがありました。糖尿病患者さんにみられる脳の構造変化として海馬(記憶に重要な場所)障害、白質(脳の連絡網)の微細構造変化、灰白質(脳神経細胞)の密度低下、全体の委縮が挙げられていますが、原因が血糖値の高低だけによるものか、随伴するインスリン抵抗性、脳血流の低下、高脂血症、高血圧によるものかがまだ解明されていないというのです。MRIなど画像診断の進歩で今後研究の進歩が期待される分野ですが今回、発育期の1型糖尿病患者では低血糖が重症なほど海馬が大きくなることがわかりました。ただしその原因や意義はまだ不明です。さて少し難しい話題ですが無自覚性低血糖についてです。昨年「肥満と糖尿病」という医学雑誌11・12月号に、私が前勤務先で共同執筆した「運動中の低血糖予防とは」という論文が掲載されました。以下その要旨です。

・・・1型糖尿病、および罹患年数が長くインスリン分泌の低下したインスリン治療中の2型糖尿病患者さんに運動療法を指導する際、低血糖を防ぐことは最大のポイントとなります。低血糖は運動中および直後におこる急性低血糖と、当日夜間以降におこる遅発性低血糖に分けられます。低血糖回避の方法は大きく分けてインスリン減量法、炭水化物補給法、有酸素運動直後無酸素運動を組み合わせる方法の3つがあります。遅発性低血糖を防ぐのに必要な炭水化物補給量は運動中1時間あたり、1g/体重kgのブドウ糖が適当です。無自覚性低血糖とは低血糖を繰り返している場合、高度の神経障害がある場合、カテコラミン反応が鈍くなるため自覚症状が出にくくなり、かつ血糖がより低下しやすくなり悪循環形成により重症低血糖を招くことです。さらに運動時はもともと頻拍や発汗があることより低血糖症状に気づきにくいため、運動自体が無自覚性低血糖のリスクファクターに挙げられています。したがって24時間以内に低血糖になった場合は運動を禁じます。なお1~2週間低血糖を避けると無自覚性低血糖は改善します・・・
 
 患者さんには、運動を安全に楽しく効果的に(競技をする人なら成績を上げるために)するにはこのような注意をして頂くよう指導しますが、日頃疑問に思っていたのは低血糖を繰り返していたら脳はどうなるかということでした。「脳にも悪影響するでしょうし・・」といったこともありますが実はまだ真相は不明のようです。動物では重症低血糖による脳障害はその前に軽い低血糖を繰り返していたほうが軽いとのことですが。まとめですが血糖値80~110は優ですが、70未満は不可として診療をすすめたいと思います。

インスリン減量の割合

雑誌にのせた表です。運動時の参考にしてください。

2010年1月26日

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