今月の糖尿病ニュース

11月の糖尿病ニュース

アイスクリーム11月の糖尿病ニュースです。11月3日は京都で開かれた糖尿病学会近畿地方会に参加しました。12月に販売開始になるジャヌビアという血糖降下剤の話題がやはり多かったですが、印象に残ったのはカーボカウント法の経験発表やテキスト出版数が半年前、1年前と比べ急増していることでした。カーボカウント法とは「血糖上昇の主因は炭水化物であり食事に必要なインスリン注射の量は食事全体量ではなく炭水化物の量に比例する」という血糖コントロール法のことです。誤解のないように補足すると、炭水化物が決して悪いと言っているのではなく、それに見合うインスリンを補充しましょうというのがポイントです。皆さんの中には「お米は血糖が上がるから控えている」、とか「アトキンスダイエットという高脂肪高蛋白食を実践している」、とかいう方もおられると思いますが、「血糖があがりやすい=体に悪い」とどうもやや短絡的に捉えられがちのようで、そういえば一昔前にはやった低インスリンダイエット法でも炭水化物は悪者扱いでした。

フライドチキン

確かにご飯、パン、麺類などをたべると血糖値があがるという実感は充分に理解できますが、視点をかえて毎日の積み重ねで考えるとどうなるでしょうか?近年糖尿病患者数が急増している原因は車の普及に代表される運動不足と食事の欧米化による脂肪摂取量増大が定説になっていますが、言い換えればお米は毎日食べてもいいがフライドチキンやアイスクリームはやはりほどほどにということになります。

シリアル

最近のニュースといえば、脂肪の摂りすぎがインスリンを作る膵臓の毒になることは以前からわかっていたことですが、その理由というかメカニズムの研究がとても盛んです。なぜならどの患者さんも糖尿病との付き合いは10~20年以上になることが多く、この長い間よく働いてもらう膵臓を毒から守ることが大変重要とわかってきたからです。もちろん薬の開発にもつながるからです。例えば欧州糖尿病学会誌11月号には脂肪が小胞体(細胞の中の小器官の名前です。ミトコンドリアとともに皆さん理科の授業で習っています)内のたんぱく質の流れを悪くしてパンパンにした結果、インスリンを作る細胞を死に追いやるというレポートが、米国糖尿病学会誌10月号にはやはり脂肪がミトコンドリアの動きを悪くし形も変化させ、同様の結果を招くことが写真つきで載っていました。 さて脂肪といってもいろいろですが善玉と悪玉があります。これら2つの論文でも飽和脂肪酸が悪玉とされていますが、この飽和脂肪酸はインスリンをつくる細胞を消滅させるだけでなく、インスリンの効き目をわるくすることもわかっています。飽和脂肪酸をたくさんとる人はインスリンの効きが悪かったという報告や、同じ中性脂肪の値でも詳しく分析してみると(飽和脂肪酸は中性脂肪のひとつの構成成分です)飽和脂肪酸の含有量が多いほど危険という報告があります。飽和脂肪酸は動物性の肉類、乳製品に多く含まれています。肉は脂を落として調理する、赤身を選ぶ、牛乳、ヨーグルトなどは低脂肪のものを選ぶのもよし、またはどうしても霜降り肉や普通の乳製品のほうがおいしいと思うなら量を少なめにしたらよいと思います。反面魚油などは善玉といわれています。なお、お米は栄養価も高いし少量は摂るほうがよいと思いますがいかがでしょう。

2009年11月22日

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